第22話 失われた純潔と、一騎当千の窓際ロケット
「……なるほど……この破廉恥な泥棒猫(メスの化け物)ども……マモルさんの幼馴染を自称して私の部屋にまで不法侵入して……朝からマモルさんを無理やり宙吊りにして不純異性交遊の邪教の生贄にかけていたのね……。あはは、殺す……一匹残らず、塵も残さず圧殺してあげるわ……!!」
キアラちゃんの背後から、人間としてはトップクラスの殺意を秘めた巨大な地魔法の陣がゴゴゴゴと部屋を揺らしながら展開を始める。
その凄まじい地鳴りのなか、ベッドの上で四肢と頭をトカゲ4頭(人間姿)にガッチリ掴まれて空中浮遊(車裂きの刑)にされていた俺は、迫りくる物理的な死の恐怖のなかで、それ以上に恐ろしすぎる『最悪の現実』に気づいて脳内で血涙を流していた。
(待てよ……人間に戻れたのはいいけど、今のって……前世の高校3年間も含めて、俺が18年間毎日神様に願っていた人生初の『ファーストキス』じゃねぇかァァァ!!! なんで四肢を引っ張られて空中浮遊してる車裂きの状態で、中身がガチの白竜の女に力ずくで強奪されなきゃいけねぇんだよバカヤローッ!!! 返せよ俺のピュアな青春をォォォオオ!!!)
前世も含めて18年間守り抜いた俺の純潔が、ラノベ史上最もカオスな体勢で粉砕された絶望。
しかし、俺が心の中で大号泣している間にも、キアラちゃんの怒りの地魔法は限界突破しようとしていた。
「ヤバいっすゼフィラ! あのメス、ガチの国家予算規模の嫌がらせ魔法を撃つ気っすよ!」
「これ以上騒ぎを大きくしたら、アタシたちの人間の服やお菓子が本当に全面禁止(外出禁止)になっちゃうわ! 全員、マモルを担いで即座に撤退よ!」
昨夜の暴走で長老たちに頭のウロコがハゲるまで正座で説教を喰らってきたガルダ(火)やゼフィラ(風)たちは、人間の村への出入り禁止を恐れて本気で顔を真っ青にした。
ドガァァァァァァン!!!
キアラちゃんが杖を振り下ろし、ベッドの床を爆発させて鋭い岩の棘(地魔法)を放った、まさにその瞬間だった。
「マモル、アタシたちが引っ張ります……!」
ネレイダ(水)、デメト(土)、ガルダ、ゼフィラの4人が、俺の手足を掴んだまま、一騎当千のトカゲパワー(人間姿)を全開にして、キアラちゃんの部屋の窓へ向かって一斉に大跳躍した。エルシエラも「わたくしも残業代を払ったのですから、連れて行きなさい!」と優雅にその群れに飛び込む。
(窓を開けて逃げろォォォ!!! ネレイダがせっかく鍵を開けておいてくれたんだから普通にサッシを開けて出ろよ! なんで一騎当千の怪力でサッシごと壁ごと窓枠を粉砕してロケットみたいに飛び出すんだよバカヤローッ!!)
5頭のトカゲパワーで神輿のように担がれた俺は、キアラちゃんの魔法の爆発を間一髪で回避しつつ、窓枠ごと2階の壁を力ずくでブチ破って外へと強制射出されたのだった。
ドガァァァン!!と地魔法の砂煙と、粉砕された窓枠の破片が舞い散る、キアラちゃんの私室。
砂煙が晴れたあと、完全に破壊されて外の景色が丸見えになった壁の大穴を前に、ぽつんと一人取り残されたキアラちゃんは、マモルの失われた純潔(※ディープキスの現行犯)を思い出し、怒りとジェラシーで大粒の涙を流しながら、泥にまみれた拳を白くなるほど強く握りしめた。
「マモルさん……あの破廉恥な泥棒猫(メスの化け物)ども……! 私の部屋にまで夜這いに来て、マモルさんの唇を力ずくで強奪した挙句……最後は私から隠すために、危険なリザードマンの村の周辺の森へとマモルさんを連れ去ったんだわ……っ!!」
キアラちゃんのなかで、あの5人の女たちは「人間の法律(防衛隊の検問)から逃れるために、人間の兵士すら近づかない危険なトカゲの生息地(森)にアジトを構えてマモルさんを監禁している、凶悪な誘拐犯」へと完璧に格上げ(大勘違い)された。
「絶対に許さない……。待っていなさいマモルさん。私が人間の国の最新技術の防具をフル装備して、あの森にある泥棒猫どものアジトをシラミ潰しにして、今度こそあなたを奪い返してみせます……!!」
キアラちゃんの瞳に、今度は「浮気へのガチのジェラシー」と「王子救出の義務感」が合体した、過去最大最強のヤンデレ防衛隊の炎がめらめらと燃え上がる。
一方、人間の村の外へ向けて、美少女5人に神輿のように担がれて猛スピードで激走(拉致)されている俺は、白目を剥きながら内心で血涙を流して叫んでいた。
(違うんだキアラちゃん!!! 泥棒猫のアジトじゃなくてトカゲどもの大人の事情(説教回避)のせいで俺のファーストキスと身体がボロボロになってるだけなんだよ!! あと全区画(森)をガチ重装備で捜索しに来たら、その途中で俺の正体(大トカゲ)とコイツらとの関係が確実に大爆発するから、マジで攻め込んでくるんじゃねぇぇぇええッ!!!)
無事に人間の姿を維持できた(しかも1時間延長された)はずの俺の隠密看病スローライフは、キアラちゃんの泥棒猫への宣戦布告と、それに全く動じないトカゲたちのガチ恋の執念によって、さらに混沌とした追走劇へと加速していくのだった。
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(次回更新:本日13時20分!)




