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第21話 遅れてきた泥トカゲと、車裂きのベッドサバト

「あらぁ〜みんな、アタシ長老のお説教が長引いて遅れちゃったわぁ〜。マモルくんを引っ張って救出中なのねぇ? アタシも手伝うわねぇ〜」


――制限時間、残り2分。

俺の皮膚から漆黒のウロコが『ザザザッ』とボロ出しになり、身体が上下左右に引きちぎれそう(車裂きの刑)になっている絶望の部屋へ、ネレイダが開けておいてくれたドアから、人間姿のデメトがのんびりとおっとり入ってきた。


「(来るなァァァ! 来るんじゃねぇ!! お前が加わったら本当に俺の人間姿の肉体が4等分に粉砕されるわバカヤローッ!!)」

俺の必死の拒絶(超小声の悲鳴)も虚しく、デメトは俺の頭を両手で優しくホールドすると、一騎当千の土部族パワーで「よいしょ、おいでぇ〜」と、上へ向けてグイグイと引っ張り始めた。


頭を引っ張るデメト、左手を引っ張るネレイダ、両足を引っ張るガルダとゼフィラ、正式には右腕をガッチリ抱きしめるキアラちゃん。

5方向からの規格外の怪力に挟まれ、俺の身体はベッドの上で完全にガチの空中浮遊(宙づり)状態と化していた。四肢が引き裂かれる激痛のなか、俺の変身可能時間はついに、最後の1分を切り――。


カチャリ……。


「マモル様、お忘れですか? わたくしは12時間擬態ですので、まだ魔力がたっぷり残っているのですよ♡」


さらに開いたままのドアから、銀髪の超絶美少女姿のエルシエラまでが、優雅にぬっと部屋の中へ現れた。

俺は涙目で(エルシエラ! 頼むから今すぐコイツらの引っ張る力を止めてくれ!!)と目で訴えかける。だが、エルシエラはルビーの瞳を妖しく輝かせ、服の隙間から8割方露出しかけている俺の漆黒のウロコを見つめて、お淑やかに微笑んだ。


「あら、皆様でマモル様を拷問(車裂きの刑)にして、一体何の儀式ですか? お可哀想に、魔力が完全に空になりますね。……ですが、ご安心ください。わたくしとここで接吻(1時間残業代チャージ)を交わせば、キアラ様にバレずに人間の姿を今すぐ延長できますよ♡ さあ、お口を開けてください……♡」


(キアラちゃんのベッドの上で、人間姿のトカゲ美少女4人に四肢と頭を引っ張られて空中浮遊してるこの最悪の体勢のまま、お前とディープキスをして1時間残業しろってか!? どんな高度なアクロバティック・サバト(邪教の儀式)だよバカヤローッ!!)


迫りくるエルシエラの美しい顔。

正体が白竜ガチトカゲであるストーカー聖女からの口づけなど、大の爬虫類嫌いの俺にとってはただのホラーでしかない。しかもキアラちゃんがいつ起きるか分からないのだ。


「嫌だ! 待て! 離せエルシエラ!! 1ミリもキスなんかしたくねぇよ! 俺はトカゲに戻ってこのまま大人しく帰るから――ぶふぅッ!?」


俺は必死に顔を左右に振って全力で拒絶した。だが、四肢と頭をトカゲ4頭にガッチリと完全ロックされている俺に、逃げ場などあるはずがなかった。

エルシエラは「ふふ、お仕事(マモル様のお世話)ですから、我慢してくださいね♡」と、可憐な笑顔のまま、俺の顎を強引に指先で固定し――力ずくでその唇を俺の唇へと押し当ててきた。


んむぅゥゥゥうううッ!!!


(んんんんんーーーッ!!! 嫌がってるのに無理やり魔力を口移しでブチ込まれたァァァアアア!!!)


――制限時間、残りゼロ。システムを強制上書き。光の神聖魔力を注入し、擬態魔法の制限時間を『1時間』強制延長します。



ドカン!!!と、エルシエラの規格外の神聖魔力が俺の体内に強制チャージされ、浮き出しかけていた漆黒のウロコが時間を巻き戻すように肌の奥へ吸い込まれていく。

それと同時に、残業チャージの魔力の余剰の光が、部屋の中に「プシュゥゥゥン!」とまばゆいピンク色の妖しい光を大爆発させた。


そのあまりのまばゆい光と、濃厚すぎる魔力の気配のせいで――。


「……はっ……!? マ、マモルさん……!?」


ついに、俺の右腕を抱きしめていたキアラちゃんが、完全に目を覚ましてしまった。


ギギギ……と、部屋の中の全員が冷や汗を流しながら動きを止める。

キアラちゃんがパチパチと目を瞬かせ、ベッドの上の光景を直視した瞬間、彼女のルビーの瞳が、丸く点になった。



キアラちゃんの目に飛び込んできたのは、以下の地獄絵図だった。

自分が抱きしめているマモルの左手を青髪のネレイダが掴み、両足を赤髪ガルダ緑髪ゼフィラが引っ張り、頭を茶髪デメトが抱え、その4人に四肢を全力で引っ張られてベッドの上で空中浮遊(車裂き)にされているマモルの唇に、銀髪のエルシエラが覆い被さるように無理やりディープキスをキメて、周囲がピンク色に妖しく発光している。



「あ、あははは……気のせいだよキアラちゃん……! これは、ええっと、その……」

俺はエルシエラの唇を強引に引き剥がし、空中浮遊した体勢のまま、引きつったイケメン笑顔(大嘘)を浮かべて言い訳をしようとした。



だが、遅かった。

マモルを純粋に愛するキアラちゃんの脳細胞が、1秒で過去最悪の『限界突破大勘違い』を弾き出し――彼女の顔から、完全にハイライト(正気)が一瞬で消え去った。


「……なるほど……この破廉恥な泥棒猫(メスの化け物)ども……マモルさんの幼馴染を自称して私の部屋にまで不法侵入して……朝からマモルさんを無理やり宙吊りにして不純異性交遊の邪教の生贄サバトにかけていたのね……。あはは、殺す……一匹残らず、塵も残さず圧殺してあげるわ……!!」


キアラちゃんは彼女たちの正体がリザードマンだとは1ミリも気付いていない。だが、純潔なマモルさんを寄ってたかって弄ぶ「最悪の女の化け物(泥棒猫)たち」として、怒りのボルテージが天元突破したのだ。


(終わったァァァ!!! エルシエラの無理やりキスのおかげでトカゲバレはミリの差で回避できたけど、トカゲに戻るより1万倍気まずい『乱倫不法侵入サバトの極限現行犯』としてキアラちゃんに完全にお縄(確定)を拝まれたァァァアア!!!)


キアラちゃんの背後から、人間としてはトップクラスの殺意を秘めた巨大な地魔法の陣がゴゴゴゴと部屋を揺らしながら展開を始める。

無理やり魔力をチャージされたはずの俺の隠密看病スローライフは、キアラちゃんの限界突破したヤンデレな殺意の前に、部屋ごと物理的に消し炭にされる5秒前の、本当の意味での大崩壊へと突入していくのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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よろしくお願いいたします!

(次回更新:本日11時20分!)

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