第19話 窓辺のヤンデレ密入国と、添い寝ベッドの防衛戦
キアラちゃんの防衛隊式睡眠ホールドに右腕をガッチリとホールドされ、身動きが取れなくなった俺。
――ピピッ。本日2回目の前払い変身の制限時間、残り1時間10分。
これが切れたら、俺はこの可愛い女の子のベッドの上でガチの漆黒の大トカゲへと強制送還となる。
冷や汗を流しながら、左手だけでどうにかキアラちゃんの腕のロックを外そうと必死に格闘していると、コンコン、と静まり返った部屋の窓ガラスが不気味に叩かれた。
見上げると、2階の窓の外の細い足場に、青いロングヘアを濡らした人間姿のネレイダが、ピトッと張り付いてこちらをじっと見つめていた。
(ひえっ、ネレイダ!? お前、夜が明けたから人間に戻れるようになって、変身魔法を使って人間の村にやってきやがったな!! っていうか2階の窓の外に美少女の姿で張り付くな怖いわァァァ!!)
俺が必死に左手で「入るな! あっち行け!」とジェスチャーで拒絶するが、ヤンデレ水トカゲは、キアラちゃんが換気のためにうっかり閉め忘れていた窓の隙間にスッと細い指を滑り込ませ、そのまま鍵の開いた窓を静かに開けて部屋のなかへと滑り込んできた。
ネレイダは、キアラちゃんが俺の右腕を自分の胸元にぎゅっと抱きしめて寝ているのを見て、人間姿の綺麗なルビーの瞳を、蛇のように怪しく見開いた。
「マモル……3時間経っても村に帰ってこないから心配しましたよ……。ゼフィラが『王の濃厚な匂いが人間のメスの部屋からするわ!』って鼻をヒクヒクさせて、みんなでキアラ様の家の玄関前まで追跡してきたんです……。さあ、アタシがこの泥棒猫を水路に沈めて、マモルを今すぐお助け(※拉致)しますね……♡」
(助けになってねぇよ!! 玄関の前にゼフィラやガルダたちがスタンバイしてて、部屋の中にはお前がいるとか、これもう完全に四面楚歌の包囲網じゃねぇかァァァ!!)
ネレイダが放ったガチ恋のヤンデレ覇気のせいで、部屋の温度が急激に下がったのだろう。
俺の腕を抱きしめて眠っていたキアラちゃんが、「う、うーん……冷たい気配が……トカゲの不浄な気配がします……」と、目をパチパチさせて今にも起きそうに身悶えし始めた。
(ヤバい! キアラちゃんが起きた瞬間、目の前に『マモルさんの幼馴染(※トカゲヒロイン)』の女が立ってたら、その瞬間に不法侵入とヤキモチで部屋ごと地魔法で消し炭にされる!!)
パニックの極限に達した俺は、必死にマルチタスクの隠密行動を開始した。
右腕をキアラちゃんにガッチリ掴まれたまま、自由な左手だけでベッドの横のクローゼットの扉をガラッと開け、「ネレイダ、今すぐそこに隠れろォォォ!!」と、ネレイダの頭を掴んで強引に服の山の中へと押し込んだ。
「マモルさん……? なんだか今、不穏なトカゲの這い回る音が聞こえたような……」
キアラちゃんが、うっすらと眠たげなルビーの目を開けかける。
その一瞬の刹那、俺は前世のラノベ知識のすべてを総動員し、冷や汗を滝のように流しながら、満面の爽やかなイケメン笑顔(大嘘)を浮かべてキアラちゃんの顔を覗き込んだ。
「あ、あははは! 気のせいだよキアラちゃん! 俺の……俺の心臓の鼓動がキアラちゃんの隣にいて激しすぎて、トカゲの足音みたいにドクドク響いちゃっただけだよ!」
「ま、マモルさんのハートの音……♡ 私、嬉しくてまた眠くなっちゃいました……スヤァ……」
チョロインすぎるだろキアラちゃん!!!
マモルさんの直球ストレートな愛の告白(大嘘)を喰らったキアラちゃんは、顔をリンゴのように真っ赤に染め、再び幸せそうに深い眠りへと落ちていった。助かった。助かったが、俺の心臓はどんな凶悪なトカゲの地響きを鳴らせば気が済むんだ。
――制限時間、残り1時間。
なんとかキアラちゃんを寝かしつけ、ネレイダをクローゼットに封印した俺。
しかし、その直後。キアラちゃんの部屋の入り口のトビラの隙間から、カサカサと『お詫びの手紙(メモ用紙)』が、ドアの下の隙間から滑り込まれてきた。
さらにドアの外から、人間姿のゼフィラやガルダたちの、潜める気のない大きめのヒソヒソ話がバッチリ聞こえてくる。
「ちょっとガルダ、この文章で合ってるの? 『マモル、ガルダがドアを火の魔力で丸焼きにしてブチ破るって言ってるから、人間のメスにバレる前に大人しく出てくるっす』って、アタシが今書いた通りに大人しく出てきなさいよ!」
「バッチリっすゼフィラ! 索敵能力(鼻)でマモルがこの部屋の中にいるのは確定してるんっすから、早く出てこないとアタシの炎でドアごと消し炭にするっすよ!」
(ドアの下からリアルな脅迫状を差し込んでくるんじゃねぇ!! ホラー映画のストーカーより怖いわ!! しかも丸焼きとか解体とかしたらキアラちゃんが起きて全員まとめて国家予算規模の地魔法で塵にされるだろォォォオオ!!!)
タイムリミットまで残り1時間。
部屋の中にはクローゼットに潜むヤンデレ水美少女。ドアの外には、今すぐ家を爆破しかねない一騎当千のトカゲ美少女Gメンたち。位置情報(匂い)は完全にバレている。そしてベッドには、俺の右腕をガッチリとホールドして眠るトカゲ大嫌いヒロイン。
人間に戻れるストック魔力をすべて使い切ってしまった俺の隠密看病スローライフは、人間の村のど真ん中で『四面楚歌の美少女爆破デッドゲーム』へと突入していくのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
「ちょっと面白いかも」「続きが気になる」と思ってくださったら、画面下の【ブックマークに追加】や、【評価の☆☆☆☆☆(星)】をぽちっと押して応援していただけると、執筆の物凄い励みになります!
よろしくお願いいたします!
(次回更新:本日22時20分!)




