第14話 突入のキアラと、物陰のトカゲ・カモフラージュ大作戦
「マモルさんを救い出すわよ! みんな、遅れないで!」
「は、はい、キアラ分隊長ッ……!!」
ドタバタドタバタと、粉砕された木箱の音を頼りに、通路の奥の部屋へと一歩一歩近づいてくるキアラちゃんと、腰が引けまくっている人間の兵士たちの足音。
物陰のベッドの上では、俺(漆黒の大トカゲ姿)と5頭のガチトカゲヒロインたちが、完全にパニックに陥っていた。
(終わった……! 2回目の変身魔法を使い切って魔力ゼロの俺は、今すぐ人間に戻ることは絶対にできねぇ。キアラちゃんがこの部屋のトビラを開けた瞬間、俺の正体がこの『ぬるぬるトカゲのボス』だってことが一発でバレて即死(終了)だ……!)
絶望に白目を剥く俺を他所に、突如、ゼフィラ(風)やエルシエラ(白竜)たちが、ガチのトカゲ顔をキリッと引き締めて互いに見つめ合った。
「……いけません。ここでマモル様の正体が人間にバレては、マモル様が人間の村で送ろうとしている高潔なスローライフ(※ただの逃亡)が潰えてしまいます!」
「マモルの夢を守るため、アタシたちの力を今こそ合わせるっす!」
(お前らの夜這いオークションのせいでこうなったのに、なんで急に一致団結して『王の夢を守る最高の仲間たち』みたいな少年漫画の熱い雰囲気出してんだよバカヤローーッ!!)
トビラにキアラちゃんの手がかかるまでの、残り時間はわずか数秒。
一騎当千の戦闘力を持つ5頭のトカゲたちによる、等身大サイズを活かした必死のカモフラージュ隠密作戦(?)が、超スピードで開始された。
「デメト、アレ(水)を混ぜなさい!」「分かったわぁ〜!」
デメト(土)とネレイダ(水)が、それぞれ自慢の土魔法と水魔法を最高出力で発動。一瞬にして、部屋の隅にただの『ドロドロの泥の塊(カモフラージュ用の岩)』を作り出し、その中に俺の黒トカゲの身体をガバッと強引に放り込んで、頭だけを外に出させた。
「ゼフィラ、隠しなさい!」「任せなさいよ!」
緑のウロコの尻尾を激しく揺らしたゼフィラ(風)が、風の擬態能力を応用。泥の岩から飛び出している俺の「黒いトカゲの頭」の上に、部屋に落ちていた『ただの大きな黒い布(帽子)』をフワッと被せ、風の魔力で背景の壁の模様と同化させる。
「これじゃまだ怪しいっす! 目隠しを作るっす!」
ガルダ(火)が、部屋のベッドのシーツや木箱の破片を、俺が埋まっている泥の岩の前にグッチャグチャに積み上げて必死に目隠しの壁を作っていく。
(雑だわ!!! 5大属性の一騎当千の力を合わせて作ったのが、ただの『帽子を被せられてシーツに隠された泥の岩』ってどんなチープな隠密トリックだよ!! 泥が冷たくてトカゲの体温が下がりまくるわバカヤローーッ!!)
「マモルさん!! 今助けに――って、えええええええ!?」
バァァァン!!!と、キアラちゃんが杖を構えてトビラを蹴り開けた。
突入してきたキアラちゃんと兵士たちの目に飛び込んできたのは、部屋の真ん中で「ガチのトカゲ姿のまま、お互いに掴み合ってピキピキと固まっている5頭の化け物」のシュールすぎる静止画だった。
俺は部屋の隅の、帽子を被った泥の岩のなかから、息を殺して様子を伺う。
キアラちゃんは、ベッドの上のエルシエラ(白竜)とガルダ(赤トカゲ)が、取っ組み合いの形のまま完全にフリーズしているのを見て、大混乱に陥っていた。
「な、何よこれ……!? 部屋がグチャグチャで、トカゲの化け物たちがリアルな姿のままフリーズしてる……。マモルさんの姿はないし、まさか……マモルさんを誰が食べる(※夜這いする)かで、化け物同士の本気の共食いが始まってたの……!?」
「キアラ様、お引き取りください。ここにはあなた方の探す人間などおりません」
エルシエラがガチの白竜の顔面から、丁寧な重低音ボイスを響かせてキアラちゃんを穏便に帰そうとする。
キアラちゃんは、部屋の隅にある「なぜか帽子が被せられ、シーツが雑に盛られた奇妙な泥の岩」に一瞬だけ不審そうな目を留めた。
(やべぇ、見つかる――!)と心臓が跳ね上がったが、トカゲ大嫌いなキアラちゃんの脳細胞は、目の前にある黒い塊がマモルだとは1ミリも気づかなかった。それどころか、彼女の天才的な被害妄想が、さらに最悪な方向へと加速していく。
「嘘をつけ! 部屋がこんなに荒れてるってことは……マモルさんはもう、別の監禁部屋に極秘裏に移送されたんだわ……っ!」
人間の兵士たちの後ろから、長老トカゲたちが「これこれ、人間の皆様、本当に穏便に、冷たい麦茶でも……」と盆を持って入ってきて、現場はさらにカオスに。
「化け物ども、マモルさんをどこへ隠したの!! 待っていなさいマモルさん、私は諦めない! このリザードマンの村の全集落を、防衛隊の総力を挙げてシラミ潰しに大捜索して、必ずあなたを救い出してみせます……!!」
(気づかないんかい!!! 嬉しいけどキアラちゃんの偏見が強すぎて、『マモル誘拐事件』が別の部族まで巻き込んだ国家規模の大強襲強行ミッションに発展しようとしてるじゃねぇか!! 助けに来る範囲を広げれば広げるほど、俺の正体がバレる確率が跳ね上がるから、マジで全集落をシラミ潰しに探すんじゃねぇぇぇえええ!!!)
泥の塊のなかで、黒い帽子を被ったまま俺が心の中で叫んだ魂の絶叫は、突撃を再開する人間の軍隊の怒号にかき消され、静まり返った夜のトカゲ村へと虚しく消えていくのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
「ちょっと面白いかも」「続きが気になる」と思ってくださったら、画面下の【ブックマークに追加】や、【評価の☆☆☆☆☆(星)】をぽちっと押して応援していただけると、執筆の物凄い励みになります!
よろしくお願いいたします!
(次回更新:本日17時20分!)




