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第13話 決死の人間突撃隊と、トカゲ村のホワイトな対応

「マモルさんを返しなさい、このトカゲの化け物どもーーーッ!!」


先ほど、人間の村の広場で起きた前代未聞の強奪拉致事件から、わずか数十分後。

夜のとばりが下りたままの深夜、リザードマンの集落の入り口には、かつてないほどの緊迫感が張り詰めていた。

人間の村の防衛隊(ガチの兵士たち)を引き連れ、決死の形相で杖を構えているのは、防衛隊の装備を身につけ一晩中徹夜で俺を捜索していたキアラちゃんだった。


兵士たちは「ひ、ひぃ……単体で軍隊を壊滅させる一騎当千のリザードマンの巣窟に本当に突入するのか……」と、全員ガタガタと震えながら冷や汗を流している。人間側からすれば、先ほどの拉致事件は完璧な国際条約破りの武力侵略テロ。街を滅ぼされる前に人質マモルを奪還しにきた、命がけの強襲作戦なのだ。


だが、そんな一触即発の空気のなか、村の入り口にぬっと現れたのは――凶悪なトカゲの戦士たちではなかった。


「おや、人間の皆様。本日は我が集落に交易の件で何か不手際でもありましたかな? 私どもは平和を愛する種族、どうか穏便に話し合いましょう。さあ、冷たい麦茶でもどうぞ」


現れたのは、眼鏡をかけたインテリ風のトカゲの村長や、腰の曲がったよぼよぼの長老トカゲたち(全員人間姿)だった。


「え……っ!? な、何よこれ、対応がめちゃくちゃ常識的でホワイトなんだけど!?」


キアラちゃんが構えていた杖をズッコケそうになりながら下ろす。

リザードマンたちは人間を恐怖させないために徹底的な社員教育(?)を敷いているため、大人たちの対応はそこらの人間の役所よりも圧倒的に丁寧で腰が低かったのだ。


だが、入り口で長老たちが「穏便な交渉」をしてくれている後ろの物陰では――俺(漆黒の大トカゲ姿)は、まさに生きた心地がしていなかった。


「ちょっとガルダ、マモルの尻尾を引っ張るんじゃないわよ! 夜泊まりの挨拶はアタシが先よ!」

「うるさいっすゼフィラ! アタシは昨夜、マモルを抱きしめたまま朝まで鱗を擦り付け合う求愛行動をしたんっすから、今さら遠慮しないっす!」


物陰に設置されたベッドの上で、ゼフィラ(風)、ガルダ(火)、デメト(土)、ネレイダ(水)の4人が、ガチのトカゲ姿のまま俺の身体を四方から引っ張り合って大ゲンカを繰り広げていた。


そして、そのすぐ横には光の聖女エルシエラまでもが、ガチの『純白の竜形リザードマン姿』のまま、長い尻尾をパタパタと悔しそうに揺らしていた。


「無念です、マモル様……。わたくしには、まだ擬態時間の『お釣りが約3時間』も残っているというのに……さっき、あなた方を追いかけるために一度擬態を解いて白竜に戻ってしまったせいで、あなた方と同じく『夜が明けて太陽が昇るまで』再変身の術式が完全にロックされてしまっています……!」


「ざまぁみろっす光の女! これで全員おそろいの等身大トカゲ姿っすね! 朝までリアル爬虫類姿のまま、みんなで平等にマモルをモフモフするっすよ!」


ガルダたちがガチのトカゲの顔のまま、嬉しそうに長い舌をチロチロと出しながら俺に詰め寄ってくる。


(1ミリも平等じゃねぇよ!! 唯一人間姿を維持できるチート枠だと思ってたエルシエラまで白竜の顔のまま迫ってくんじゃねぇよ! お前ら全員が擬態ロックされたせいで、この物陰のベッドの上が完璧に『ジュラシック・パーク(ガチのトカゲまみれ)』になってんじゃねぇかァァァアア!!!)


俺は5頭の求愛の力(トカゲパワー×5)にガッチリとホールドされ、ウロコとウロコの間に挟まれながら、声も出せずに白目を剥いていた。

その頃、入り口では長老トカゲが素で首を傾げていた。


「して、そのマモルという人間を私どもが拉致したと? はて、そんなツルツルした人間は村のどこにもおりませんが……」


「嘘をおっしゃい! さっき、確かに化け物の群れがマモルさんを担ぎ上げてこの森へ消えたわ! 隠しても無駄よ、力ずくでも――」


その時だった。物陰のベッドの上で、ガルダとゼフィラが俺の左右の腕をギチギチと引っ張り合ったせいで、俺の漆黒の巨大な尻尾が、防壁の木箱を「ドゴォォォン!!」と凄まじい音を立てて粉砕してしまった。


「ヒッ!? い、今、奥の部屋から凄まじい破壊音が……!」

人間の兵士たちが悲鳴を上げる。


キアラちゃんはハッとして、俺たちが隠れている奥の物陰をキッと睨みつけた。


「……間違いないわ。あの奥の監禁部屋(※ただのベッド)から、マモルさんの悲鳴(※トカゲたちの求愛の咆哮)が聞こえる……! 凶悪なトカゲのボスめ、マモルさんを監禁して、一体どんな恐ろしい拷問(※夜泊まりのお世話)をしているのよ……っ! 交渉は決裂です、今すぐ突撃してマモルさんを奪還します!!」


(違うんだキアラちゃん!!! 拷問じゃなくて夜間人間に戻れないトカゲヒロイン(見た目はガチトカゲ5頭)たちの嫉妬の暴走の巻き添えを食らって全身の骨がバキバキに軋んでるだけなんだよ! 軍隊を引き連れて奥に突入してきたら俺の正体が一発でバレるから、絶対にこっちに来るんじゃねぇぇぇええええ!!!)


突入を開始する人間の軍隊と、奥の物陰で繰り広げられるガチのトカゲ5頭による求愛修羅場。

手に入れた『1日2回変身能力』のクールタイムの真っ只中、人間に戻れない俺の隠密スローライフは、人間の兵士たちの正義の突撃によって、過去最大の絶対絶命の修羅場へと突入していくのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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よろしくお願いいたします!

(次回更新:本日16時20分!)

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