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第11話 勝ち取った夜の聖域と、ありがた迷惑な真昼の爆光

トカゲの集落の我が部屋に、トカゲ姿(等身大)のまま「お昼の浮気の分のウロコを擦り付けてあげるわ!」と突撃してきたゼフィラやガルダたち。

彼女たちからの熱烈すぎる求愛を全身に喰らうという、地獄のインターバル防衛戦を死に物狂いで耐え抜くこと3時間。


ようやくクールタイムを消化した俺は、満を持して2回目の擬態魔法を発動した。

漆黒の髪と瞳を持つ人間の姿に大復活し、トカゲの集落を脱出して人間の村へと舞い戻る。


(クソっ、全身の鱗が揉まれてボロボロだけど……耐え抜いた甲斐はあったぜ! なぜなら、ガルダたちは昼のデートで『1日1回・3時間』の変身枠をすべて使い切って集落に帰った! つまり、今夜のデートには絶対に、逆立ちしたって誰も乱入してこられないんだからな!)


世界で俺だけが使える『1日2回変身』の圧倒的な特権。

夜のとばりが下りた人間の村の広場は、今夜の『ランタン祭り』の明かりで幻想的に彩られていた。オレンジ色の温かい光が揺れるなか、待ち合わせ場所に立っていた俺の胸が、ドクンと跳ね上がった。


「あ、マモルさん! お待たせしました!」


人混みを掻き分けて駆けてきたキアラちゃんを見て、俺は本気で息を呑んだ。

いつもと違う、東方の異国から仕入れたという浴衣風の可愛いお祭り衣装。麦わら色の髪をアップに結い上げ、うなじが少し覗いている。


「……マモルさん? あの、そんなにじっと見られると、私、変ですか……?」

「い、いや! 全然変じゃない! っていうか、めちゃくちゃ可愛いよキアラちゃん!」

「ふふ、ありがとうございます。夜にまたマモルさんにお祭りデートができるなんて、本当に夢みたいです」


顔をリンゴのように赤らめて微笑むキアラちゃん。夜店を回り、焼きとうもろこしを半分こして、手を繋ぎそうな良いムードになる。

これだ。

俺が異世界に求めていたのは、トカゲの生肉でも芋虫スープでもなく、この純度100%の甘酸っぱいスローライフなんだ!


(トカゲどものいない夜が、これほど平和で美しいなんて……。神様、俺を1日2回変身にしてくれて本当にありがとう……!)


勝ち誇った俺が、幸せの絶頂で夜空を見上げた、その時だった。


――ピピッ。制限時間、残り10分。魔力が底を尽きかけています。


無慈悲にも、俺の脳内に2回目のタイムリミットを告げる電子音が鳴り響く。

(あ、やべ。2回目も3時間制限なのは変わってねぇんだった! 幸せすぎて時間を忘れてた!)


あと10分で漆黒の大トカゲに戻ってしまう。しかし、今は夜。お祭りの灯りがあるとはいえ、一歩路地裏の暗闇に逃げ込めば、トカゲに戻ってもキアラちゃんにバレずに村の外へ脱出できる。


「ご、ごめんキアラちゃん! 実は故郷の家に『厳しい門限』があるのを今思い出しちゃって! 今日はそろそろ、あっちの路地裏を通って帰らなきゃいけないんだ!」

「えっ? 門限ですか? あ、はい、それは大変ですね。名残惜しいですけど、遅くなったら危ないですから……」


勝利を確信した俺は、キアラちゃんに手を振って、暗い路地裏の影へとスマートに滑り込もうとした。


「――どこへ行くのですか、マモル様。せっかくの美しい夜ですのに、門限などという人間の都合で帰るなど勿体のうございます」


その、気品溢れる凜とした声が、路地裏の入り口で俺の行く手を阻んだ。

振り返ると、そこには周囲の空間がそこだけスポットライトを浴びているかのように輝く、神秘的な銀髪の超絶美少女が立っていた。光の聖女、エルシエラだ。


(ひえっ、エルシエラ!? なんでお前がいるんだよ! 昼間に変身して3時間フルで使ってただろ!?)


俺が白目を剥いていると、エルシエラは優雅にフッと微笑み、ルビーの瞳を輝かせた。

「マモル様、お忘れですか? わたくしは光の恩寵により、人間でいられる時間を『12時間』も持っているのです。昼に3時間ほど使ったところで、今夜のこの時間でも、まだ残り3時間くらいはお釣りがたっぷり残っております よ♡」


「(お, お前……! 2回変身はできねぇくせに、1回の持ち時間がチートすぎて実質夜の部までカバーしてやがるな! 計画性がガチすぎてホラー映画より怖いわァァァ!!)」


「な、何よあなた、また現れたのね!? マモルさんをどこに連れて行く気ですか!」

キアラちゃんが防衛隊のエリートとしての警戒心を全開にして、俺の前に立ちはだかる。


「ふふ、キアラ様。夜道は暗くて危険です。マモル様が路地裏の暗闇に消えてしまっては、お怪我をされるかもしれません。……ですから、わたくしが『親切』で、明るく照らして差し上げましょう」


エルシエラが神聖な丁寧語のまま、お淑やかに両手を天へと掲げた。


「我が内なる光の精霊よ、夜の帳をすべて退け、真昼の裁きをここに――!!」


直後、深夜の村の広場に、太陽がもう一つ昇ったかのようなデタラメすぎる大爆光が炸裂した。


ピカァァァァァァァァァァァ!!!


「ま、眩しっ!? っていうか、何これぇぇぇえええ!?」


キアラちゃんが目を押さえて絶叫する。

エルシエラの放った光の魔法のせいで、周囲1マイルの夜の闇が完全に消滅した。お祭りのランタンの明かりなんておもちゃに見えるほどの爆光が街中を昼間のように照らし出し、俺が逃げ込もうとしていた路地裏の影すらも1ミリ残らず綺麗に消し飛び、真昼の太陽の下のような明るさになってしまった。


(嘘だろ!? 影が……トカゲに戻して隠れるための路地裏の暗闇が、光の聖女のありがた迷惑すぎる親切魔法のせいで全滅しちまったァァァアア!!)


タイムリミット、残り5分。

この真昼のような爆光に晒された広場のど真ん中で、あと数分で漆黒の大トカゲに戻るなど、完全に即死(正体バレ)を意味していた。


さらに、エルシエラの放った爆光(黒の王への合図)を見て、トカゲの村で待機していたゼフィラやガルダたち4人の「ガチのトカゲ姿」の影が、村の境界線の森から「王の覇気ひかりみーっけ!」と血眼になって走ってくるのが遠くに見えた。


トカゲの再変身不可のルールをあざ笑う、光の聖女の持ち時間チート。

あと数分で変身が切れるのに、夜の闇を完全に奪われて逃げ場を失った俺は、白目を剥きながら「夜だからって油断したァァァ! 誰もライトアップなんか頼んでねぇよバカヤローッ!!」と、真昼のように輝く広場の中心で、魂の底から絶叫するのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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よろしくお願いいたします!

(次回更新:本日12時20分!)

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