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拾った娘が元魔王で、気づけば俺たちは敵になっていた  作者: 東海林


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26話

――圧。

空気が歪む。


「……っ!」


神代が踏みとどまる。

目の前のあの男。

さっきまでとは明らかに違う気配。


「……本気かよ」


「少しだけな」


淡々とした声。

だが、その一歩で分かる。

格が違う。


「……神代」


ルシエルが隣に立つ。


「……来る」


「分かってる」


息を整える。


「合わせろ」


「……ん」


男が消える。

次の瞬間、目の前。


「……速っ!」


神代が腕を出す。

――掴む。

だが。


「甘い」


弾かれる。

そのまま衝撃。


「ぐっ……!」


壁に叩きつけられる。


「……神代!」


ルシエルが叫ぶ。

その瞬間、空気が揺れる。

圧が一気に上がる。


「……やめろ」


神代が言う。


「……でも!」


「暴走するな!」


「……っ」


止まる。

ギリギリで。

でも、感情は抑えきれていない。


「……なるほど」


男が興味を示す。


「それが力の源か」


「……違う」


ルシエルが睨む。


「……これは」


一歩踏み出す。


「……今のわたし」


「……行くぞ」


神代が立ち上がる。

血を拭う。


「次で決める」


「……ん」


頷く。

完全に呼吸が合う。


踏み込む。

二人同時に。


「……連携か」


男が迎え撃つ。

神代が前、ルシエルが後ろ。


「……そこ!」


神代が腕を出す。

掴む、沈める。

深度。


「……っ!」


男の動きが止まる。

その瞬間。


「……今」


ルシエルが手をかざす。

圧を収束させる。


暴発じゃない。

制御された力。


「……撃つ」


――解放。

見えない衝撃が叩き込まれる。


「……!」


男の体が初めて大きく揺れる。

後ろに押される。


「……効いた」


神代が呟く。


「……今の」


「……うん」


ルシエルも少し驚いている。


「……できた」


「……面白い」


男が笑う。

初めて明確に楽しそうに。


「だが――」


踏み込む、速い。

さっき以上。


「っ……!」


神代が反応する。

でも追いつかない。


ルシエルへ一直線。


「……!」


「ルシエル!」


間に合わない。

その瞬間、ルシエルが前に出る。


「……逃げない」


小さく言う。

そして手を伸ばす。


「……来い」


接触。

男の一撃。

――止まる。


「……なに」


男の声がわずかに揺れる。

ルシエルの周囲。


空間が歪んでいる。


「……これ」


息を吐く。


「……制御」


「……今だ!」


神代が踏み込む。

全力で掴む。


今までで一番深く。

沈める、核へ。


「……っ!!」


明確な手応え。

完全に捉えた。


「……これで」


神代が歯を食いしばる。


「終わりだ」


「……いや」


男が低く言う。

次の瞬間、爆発的な力。


「っ……!?」


弾き飛ばされる。

距離が開く。

床が砕ける。


「……まだかよ」


神代が息を吐く。


「……やっぱ強え」


「当然だ」


男が言う。

だが――


「だが」


わずかに息が乱れている。


「確実に届いている」


「……だろ?」


「……神代」


ルシエルが隣に来る。


「……あと少し」


「分かってる」


「……いける」


「……ああ」


目が合う。

迷いはない。


その時――遠くから音。

壁の向こう。


「……来るわよ!」


セリナの声。


「無事か!?」


「問題ねえ!」


神代が叫ぶ。


「……合流か」


男が呟く。


「なら」


構える。


「ここで終わらせる」


「望むところだ」


神代が笑う、ルシエルも並ぶ。

二人の力が重なる。


今までで一番。

――次で決まる。

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