24話
――壁が閉じる。
音が、完全に断たれる。
「……くそ」
神代が舌打ちする。
隣にはルシエル。
セリナとリオの気配は消えた。
「……神代」
「大丈夫だ」
短く言う。
でも状況は最悪だ。
「……これで二対一だ」
男が静かに言う。
「有利だな」
「……どうかな」
神代が構える。
「前よりマシだ」
「……成長したか」
「少しな」
視線が交わる。
空気が張り詰める。
「……ルシエル」
「……ん」
「下がってろ」
「……でも」
「いいから」
強く言う。
「……わかった」
しぶしぶ下がる。
でも完全には離れない。
「……来いよ」
神代が手を開く。
男が消える――速い。
でも。
「……見える!」
踏み込む。
腕を出す――掴む。
「……!」
止まる。
ほんの一瞬。
「……またそれか」
「今度は違う」
力を込める、沈める。
深く。
「……っ!」
男の動きが鈍る。
「……効いてる」
「……確かに」
男の声が低くなる。
初めて、明確に通用している。
一方――別の通路。
「……最悪」
セリナが舌打ちする。
「分断されたわね」
「……だね」
リオが苦笑する。
でも、足は止めない。
「こっち!」
リオが先導する。
迷いはない。
「……追ってきてる?」
セリナが聞く。
「……来てる」
リオが即答する。
「三……いや四」
「多いわね」
「しかも」
少しだけ間を置く。
「……強いの混ざってる」
「……最悪」
背後、足音。
近い。
「止まって戦う?」
「無理」
リオが首を振る。
「今は逃げる」
「……そうね」
一方。
「……くっ!」
神代が吹き飛ばされる。
床を転がる。
「……まだ足りないな」
男が言う。
「……だな」
立ち上がる。
息が荒いでも――さっきより戦えている。
「……神代」
ルシエルが近づく。
「来るな」
「……でも」
「まだ俺がやる」
「……っ」
止まるでも、目は離さない。
「……面倒だな」
男がルシエルを見る。
「先に消すか」
「――やめろ」
神代が割り込む。
「相手は俺だ」
「……そうだったな」
わずかに興味を失うだが、その一瞬。
「……隙」
神代が踏み込む。
掴む、沈める。
今度は、さらに深く。
「……っ!」
男の動きが止まる。
明確に。
「……今度は」
神代が低く言う。
「逃がさねえ」
一方。
「っ……!」
セリナが振り返る。
斬る、一人、倒す。
「数減らす!」
「了解!」
リオが横から入り込む。
急所を狙う。
音もなく、一人沈む。
「……やるじゃない」
「元々こっち側だからね」
「それは複雑」
「……でもさ」
リオがぽつりと言う。
「ちょっと分かってきた」
「何が」
「あいつの気持ち」
「……神代?」
「うん」
走りながら笑う。
「守る理由」
「……へえ」
セリナが少しだけ笑う。
「遅いわよ」
「今気づいた」
「それでいいのよ」
一方。
「……っ!」
神代が押し返される。
でも倒れない。
「……確実に伸びているな」
男が言う。
「……どうも」
「だが」
構える。
「ここまでだ」
「……いや」
神代が息を吐く。
「まだだ」
「……神代」
ルシエルが一歩前に出る。
「……やる」
「待て」
「……もう待たない」
目が変わる。
空気が揺れる。
「……危ねえ」
「……でも」
一歩踏み出す。
「……一緒に戦う」
「……」
神代が一瞬黙る。
そして。
「……分かった」
小さく言う。
「やるなら合わせろ」
「……ん」
二人並ぶ、初めての形。
「……ほう」
男が興味を示す。
「それが元魔王」
「……関係ない」
ルシエルが低く言う。
「……今は」
「……神代と一緒」
空気が変わる。
圧が上がる。
「……面白い」
男が構える。
「では」
「まとめて相手をしよう」
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