23話
朝。
森は静かだった。
不気味なほどに。
「……静かすぎるわね」
セリナが小さく呟く。
「いいことじゃないの?」
リオが肩をすくめる。
「こういう時は大体、ろくなことが起きない」
「……同感」
神代も短く答える。
「……行くぞ」
全員が頷く。
再び、あの場所へ、隠し通路の入口。
「……変わりなし」
ルシエルが言う。
「……見張り、いない」
「昨日と同じね」
「いや」
神代が首を振る。
「少なすぎる」
「……罠ってこと?」
「可能性はある」
「でも」
リオがしゃがみながら板に手をかける。
「行くしかないでしょ」
「……だな」
板を開ける。
静かに、音を殺す。
中は、昨日と同じ暗闇。
「……行くよ」
リオが先に入る。
その後に神代、セリナ、ルシエルと続く。
通路。
足音を消して進む。
でも――
「……違う」
ルシエルが小さく言う。
「何が」
「……気配」
「どう違う」
「……少ない」
「……やっぱりか」
神代が呟く。
「散ってるか、隠れてるか」
「どっちも嫌ね」
上へ。
リオが先に確認する。
すぐに戻る。
「クリア」
「早いな」
「人いない」
「……いなさすぎでしょ」
セリナが眉をひそめる。
室内へ。
昨日と同じ通路。
でも――誰もいない。
「……巡回は?」
「ない」
「……完全におかしい」
「……作戦通りいく」
神代が低く言う。
「予定は変えない」
「いいの?」
リオが聞く。
「変えた方が危険だ」
「……了解」
ここから分かれる。
「リオ」
「はいよ」
「頼む」
「任された」
軽く笑って、消える。
気配が一瞬で消失。
「……相変わらずね」
セリナが呟く。
「行くぞ」
神代が進む。
資料室へ、記憶しているルート。
迷いはない。
途中。
「……誰もいない」
セリナが小さく言う。
「ここまで静かなのは異常よ」
「……でも」
ルシエルが言う。
「……いる」
「どこだ」
「……奥」
「……一人?」
「……違う」
少し間を置く。
「……強いの、一人」
それだけで分かる。
「……あいつか」
「……神代」
セリナが止める。
「予定変える?」
「いや」
首を振る。
「資料優先」
「……分かった」
資料室前、あの扉。
「……開けるぞ」
「ええ」
神代が手をかける。
ゆっくり開ける。
――中。
やはり、資料。
そして。
「……いない」
誰もいない。
「……今のうちね」
セリナが即座に動く。
「ルシエル、警戒」
「……ん」
神代は棚に向かう。
書類を掴む、開く。
「……これか」
回収対象のリスト。
名前、能力、危険度。
そして――
「……ルシエル」
その名がある。
「……なに」
「お前の情報だ」
「……見せて」
渡す。
ルシエルが目を通す。
無表情でも――
「……これ」
「ん?」
「……違う」
「何が」
「……わたしじゃない」
「……は?」
その瞬間、背後。
「当然だ」
声、振り向く。
――いた。
あの男。
静かに立っている。
「……やっぱりな」
神代が呟く。
「待っていた」
男が言う。
「来ると思っていた」
「……罠か」
「正解だ」
「……じゃあさ」
セリナが剣を構える。
「他のやつは?」
「外にいる」
「……囲まれてるってことね」
「そういうことだ」
最悪の形。
「……で」
神代が一歩前に出る。
「どうする」
「簡単だ」
男が言う。
「ここで終わり」
「断る」
即答。
その時――ドンッ!!
遠くで爆発音。
「……始まったか」
男が呟く。
「……リオ」
セリナが言う。
「予定通りね」
「いや」
神代が目を細める。
「予定より派手だ」
「……確かに」
「……分断するつもりか」
神代が言う。
「違う」
男が首を振る。
「既にされている」
「……は?」
その瞬間、床が揺れる。
――ゴゴゴ……
「……何!?」
セリナが叫ぶ。
壁が、動く。
仕切りが、降りる。
「っ……!」
神代が飛び退く。
ルシエルの手を掴む。
だが――
「……え」
視界の端、リオの姿。
通路の向こう。
「……神代!」
リオが叫ぶ。
そのまま――遮断。
壁が完全に閉じる。
「……分かれたか」
男が静かに言う。
「これで終わりだ」
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