21話
森の奥。
簡易的な拠点を作って、半日ほどが過ぎた。
「……で」
セリナが腕を組む。
「始めるのよね?」
「ああ」
神代が立ち上がる。
「時間はねえ」
「……また無茶」
「いつも通りだ」
軽く言う。
「まず確認だ」
神代が手を開く。
「俺の能力は触れて削る」
「そうね」
「でも浅い」
「それもね」
「だから」
指を握る。
「深くする」
「……それが難しいんでしょ」
「だな」
簡単に言ってるけど、やってることは無茶だ。
「……ねえ」
リオが近くの木にもたれながら言う。
「それ、どうやるの?」
「分からん」
「雑すぎるでしょ」
「でも感覚はある」
あの時.確かに届いた。
「……なら再現ね」
セリナが言う。
「状況を作る」
「どうやって」
「殴り合い」
「却下」
即答。
「効率いいのに」
「死ぬわ」
「……神代」
ルシエルが袖を引く。
「……やる」
「何を」
「……相手」
「ダメだ」
即答。
「……なんで」
「加減できねえだろ」
「……できる」
「できてねえから止めてんだよ」
「……む」
少し不満そう。
でも、引き下がらない。
「……なら」
神代が少し考える。
「制限付きだ」
「……?」
「俺に触れるな」
「……え」
「遠距離で圧だけ使え」
「……できる」
「それでいい」
「……ん」
少し嬉しそうに頷く。
「じゃああたしは?」
セリナが聞く。
「横から攻撃」
「実戦形式ね」
「そうだ」
「いいわよ」
剣を軽く振る。
「加減はする」
「頼む」
「……あたしは?」
リオが手を挙げる。
「好きにしろ」
「雑!」
「情報見とけ」
「はいはい」
でも完全にサボる気はないらしい。
少し離れた場所へ移動する。
「……いくぞ」
神代が構える。
「……ん」
ルシエルも目を細める。
空気が少し重くなる。
「……始めるわよ」
セリナが踏み込む。
速い、斬撃が飛ぶ。
――受ける。
「っ……!」
重い。
でも、さっきよりは見える。
「……遅いわよ」
「言ってろ」
掴む、触れる、削る。
でも――
「……浅い」
セリナが言う。
「届いてない」
「……分かってる」
離される、距離が開く。
「……いく」
ルシエルの声。
次の瞬間、圧。
空気が沈む。
「っ……!」
体が重い。
でも――
「これだ」
神代が呟く。
あの時と似てる。
押し込まれる感覚。
奥に触れる感覚。
「……集中しろ」
自分に言い聞かせる。
触れる、表面じゃない。
その内側、さらに奥。
沈める。
押し込む。
「……っ!」
一瞬、感覚が変わる。
掴んだ、深く。
「……今!」
セリナが踏み込む。
斬撃。
――止まる。
「……え」
セリナが目を見開く。
剣が、途中で止まっている。
神代の手が、刃を掴んでいる。
「……できた」
神代が呟く。
明確に今までと違う。
「……深度、上がってる」
セリナが低く言う。
「でも」
次の瞬間、弾かれる。
「っ!」
後ろに下がる。
「……まだ不安定ね」
「分かってる」
でも――
「確実に前よりいい」
「……すごい」
ルシエルが小さく言う。
「……神代、強い」
「まだ途中だ」
「……でもすごい」
少しだけ嬉しそう。
「……ねえ」
リオが近づいてくる。
「それさ」
「なんだ」
「削るっていうより」
少し考える。
「奪ってる感じしない?」
「……は?」
「相手の力」
「一瞬だけ、自分のものにしてる」
「……」
神代が黙る。
確かにさっきの感覚。
ただ削っただけじゃない。
「……そうかもしれねえな」
「それだとしたら」
リオが笑う。
「めちゃくちゃ危ない能力だよ?」
「今さらだろ」
「それもそう」
「……もう一回」
神代が構える。
「続けるぞ」
「ええ」
「……ん」
「了解」
三人が動く。
今度は、さっきより噛み合っている。
触れる、沈める、掴む。
奪う。
まだ未完成。
でも。
「……届く」
確信がある。
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