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拾った娘が元魔王で、気づけば俺たちは敵になっていた  作者: 東海林


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18話

――衝撃。

壁が砕ける、石片が舞う。


「っ……!」


神代が踏みとどまる。

腕が痺れる、呼吸が荒い。


「……まだ立つか」


男が淡々と言う。


「しつこいな」


「時間稼ぎって言ったろ」


神代が息を吐く。

余裕はないでも、引く気もない。


「……無意味だ」


「かもな」


肩を回す。


「でも意味ある」


「……ほう」


「仲間が逃げる時間になる」


それだけでいい。


「……愚かだ」


「何とでも言え」


男が踏み込む。

速い、見えない。

でも――


「……そこ!」


勘で動く、腕を出す。

――掴む。


「……!」


わずかに、止まる。


「……当ててくるか」


「慣れてきた」


力を流す。

削る。

深く、もっと深く。


「……っ」


男の動きが鈍る。

今までで一番効いている。


「……だが」


次の瞬間、押し返される。

吹き飛ぶ。


「ぐっ……!」


床に叩きつけられる。

肺から空気が抜ける。


「……限界だな」


「……まだだ」


立ち上がる。

足が重いでも、動く。


「……理解した」


男が言う。


「お前の力」


「どうだ」


「未完成だ」


はっきり言う。


「触れている間しか成立しない」


「……そうだな」


「範囲も狭い」


「……だな」


「出力も足りない」


「……分かってる」


全部正しい、全部足りない。


「なら終わりだ」


男が構える。

次で終わる、分かる。


「……いや」


神代が息を吐く。


「まだ終わってねえ」


「……何?」


「一つだけ」


ゆっくりと手を開く。


「試してねえことがある」


「……」


男が目を細める。


「興味はある」


「だろうな」


思い出す、さっきの戦い。

触れた瞬間、削れる感覚。

でも浅いなら――


「……深くすりゃいい」


呟く。

ただ触るんじゃない。


掴む、もっと内側に相手の核に。


「……やれるか?」


自分に問いかける。

答えは出ないでも。


「やるしかねえ」


踏み込む。

正面から。


「……自殺行為だな」


「どうかな」


振り下ろされる刃。

避けない。

腕で受ける。


「っ……!」


血が滲む。

でも――掴む。


「……!」


男の目がわずかに見開く。


「……今度は」


神代が歯を食いしばる。


「離さねえ」


力を込める。

意識を集中させる。


表面じゃない。

その奥、もっと奥。

――沈める。


「……っ!」


男の動きが止まる。

明確に今までと違う。


「……深度が」


声が、わずかに揺れる。


「上がっている……?」


「……当たりだ」


神代が笑う。

腕が軋む。

でも――効いてる。


「……面白い」


男の目が変わる。

初めて、少しだけ本気の色。


「なら――」


力が跳ね上がる。


「試してやる」


「っ……!」


押し返される。

今まで以上の力、握っていられない。

弾かれる。


距離が開く。


「……はあ……はあ……」


呼吸が乱れる。

でも。


「……見えた」


手応えはあった。


「……なるほど」


男が静かに言う。


「成長するか」


「遅えけどな」


「いや」


首を振る。


「十分速い」


その評価。

でも――


「だからこそ」


構える。


「ここで潰す」


「……上等だ」


神代も構える。

体は限界でも、心は折れてない。


その時――奥から、気配。

複数。


「……増援か」


神代が呟く。


「……時間切れだな」


男が言う。


「……ちっ」


最悪だ。

一対一ですら厳しいのに。


「……選べ」


男が言う。


「ここで死ぬか」


「逃げるか」


「……」


一瞬、考える。

仲間は――もう離れてる。

なら。


「……逃げる」


即答。


「賢明だ」


「だろ」


次の瞬間。

神代が床を蹴る。


全力で、逆方向へ。

男は追わない。


「……逃がす」


ぽつりと呟く。


「次は、終わりだ」


通路を駆ける。

息が苦しい、体が重い。

でも――


「……まだ、やれる」


さっきの感覚。

深く触れる。

あれがあれば。

次は――


「……届く」


確信があった。

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