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拾った娘が元魔王で、気づけば俺たちは敵になっていた  作者: 東海林


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16話

森の奥。

地面に、不自然な切れ目があった。

ただの影にしか見えない。


でも――


「……ここ」


ルシエルが小さく言う。

リオがしゃがみ込む。


「正解」


指で土を払う。

薄く覆われていた板が見える。


「よく気づいたね」


「……あるって言ってたから」


「それだけで分かるの、普通じゃないよ」


「……普通」


「どこが」


小声でのやり取り。

でも、空気は張り詰めている。



リオが板を静かに持ち上げる。

ギィ……と、わずかな音。


全員が息を止める。

――反応はない。


「……大丈夫」


リオが囁く。

中は、暗い、細い通路。

地下へ続いている。


「……行くぞ」


神代が言う。


「順番は?」


「俺、リオ、セリナ、ルシエル」


「なんであたし前じゃないのよ」


「リオの方が静かだ」


「……否定できない」


セリナが小さくため息をつく。


中に入る。

空気が変わる。


冷たい。

閉じた空間の匂い。


「……暗い」


「我慢しろ」


足音を極限まで殺す。

ゆっくりと進む。


前を行くリオが、ほとんど音を立てない。

後ろのセリナも合わせる。


問題は――


「……神代」


「なんだ」


「……踏んだ」


「何を」


「……小石」


「音は」


「……出てない」


「ならいい」


心臓に悪い。

しばらく進むと、リオが手を上げた。


停止の合図。

全員が止まる。


「……上」


小さく指を差す。

天井の隙間。


わずかに光が漏れている。


「……繋がってる」


「……人は?」


「……一人」


ルシエルが答える。


「……近い」


「……やる?」


セリナが囁く。


「……静かにいけるなら」


「任せて」


リオが前に出る。

そのまま、壁に手をかける。


音もなく、上へ。

――消える。


数秒、長い。

やけに長く感じる。


――ドサッ。


小さな音。

すぐに。


「クリア」


リオの声。上から。


「来ていいよ」


一人ずつ上がる。

神代、セリナ、ルシエル。

最後に、周囲を確認。


――室内。

石造りの通路、灯りは弱い。

そして。


「……ほんとにいるわね」


セリナが呟く。

足元に、気絶した男。


「静かにやったよ」


「十分すぎるわ」


「……ここからが本番」


リオが小さく言う。


「見張り、巡回ある」


「ルートは?」


「大体分かる」


「なら先導頼む」


「了解」


進む、ゆっくり一歩ずつ。

角に差し掛かる。


リオが手で止める。

耳を澄ます。


――足音。

近づいてくる。


「……二人」


ルシエルが囁く。


「……来る」


隠れる場所。

壁の影。


すぐに全員が身を寄せる。

息を殺す、音を消す。

――通路に、影。


「……変わりないか?」


「ああ、異常なし」


会話、普通の声。

でも、距離が近い。


すぐそこ。

心臓の音がうるさい。


「……なあ」


「なんだ」


「例の対象、本当にいるのか?」


「さあな。上が騒いでるだけだろ」


「……だといいが」


足音が、近づく。

止まる。


――すぐ横。


「……」


息を止める。

ルシエルの手が、強く握られる。


分かる。

怖い。

でも――動けない。


「……行くぞ」


「ああ」


足音が、遠ざかる。

……消えた。


「……はあ……」


セリナが小さく息を吐く。


「……心臓に悪い」


「同感」


神代も小さく答える。


「……神代」


「なんだ」


「……近い」


「仕方ねえだろ」


むしろ離れるな。


「……今の感じだと」


リオが小声で言う。


「この先が資料室」


「早いな」


「小規模拠点だからね」


「助かる」


さらに進む、扉が見える。

他と違う。


少しだけ頑丈。


「……ここ」


「鍵は?」


「任せて」


リオがしゃがむ。

針金のようなものを取り出す。


カチ、カチ、小さな音。

――カチ。


「開いた」


「早いわね……」


「プロだからね」


扉を、ゆっくり開ける。

中は――本棚。

書類、地図。


「……当たりだ」


神代が呟く。


「……すごい」


ルシエルが小さく言う。

でも、その瞬間。


「……待って」


リオが止める。


「……何だ」


「……誰かいる」


空気が、一気に張り詰める。

部屋の奥。

影。


ゆっくりと、動く。


「……見つけた」


低い声。

聞き覚えがある。


――あの男。


「……早すぎるでしょ」


セリナが小さく呟く。


「……やっぱ来たか」


神代が構える。

男が、一歩踏み出す。


「潜入か」


興味なさそうに言う。


「無駄だ」


その一言で空気が、完全に戦闘に変わる。


「……どうする」


セリナが小さく聞く。

神代は、短く答える。


「……逃げる」


即決。


「了解」


全員、同時に動く。

――その瞬間。


「遅い」


男の姿が消えた。

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