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拾った娘が元魔王で、気づけば俺たちは敵になっていた  作者: 東海林


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15/30

15話

森を抜ける少し手前。


「……止まって」


ルシエルが小さく言う。

全員が足を止める。


「……ここから先」


「……ある」


「拠点か」


「……うん」


視線の先。

木々の奥に、わずかに人工物の気配。


完全に隠されている。

でも――確かにある。


「……思ったより近いわね」


セリナが呟く。


「普通に歩いてたら気づかないレベルだな」


「でしょ」


リオが頷く。


「こういうの、得意だからあの人たち」


 回収局。


 その拠点は目の前にある。




「……どうする」


神代が聞く。


「正面は論外」


セリナが即答。


「見張りもいる」


「……三方向」


ルシエルが補足する。


「……死角、少ない」


「なら――」


神代がリオを見る。


「偵察」


「了解」


軽く言って――消えた。


「……ほんと便利ね」


「だな」


「……羨ましい」


「お前も大概だろ」


「……そう?」


自覚ないの怖い。



数分後。

音もなく、リオが戻ってくる。


「ただいま」


「どうだった」


「拠点は地下」


「入口は三つ」


「正面、裏口、あと隠し通路」


「隠し通路?」


「うん」


指で地面を軽く叩く。


「昔の逃走用ルート」


「……使えるか」


「使える」


即答。


「ただし」


少しだけ真面目な顔になる。


「中も人いる」


「どのくらい」


「今見える範囲で5〜6」


「……少ないわね」


「上が出払ってる可能性ある」


「さっきの男もか」


「たぶんね」


ならチャンスだ。


「……神代」


ルシエルが袖を引く。


「……やるの?」


「やる」


迷いなく答える。


「……危ない」


「知ってる」


「……でも?」


「それでもだ」


短く言う。


「ここで動かないと、詰む」


「……ん」


小さく頷く。

納得はしてないでも、受け入れてる。


「役割決めるわよ」


セリナが前に出る。


「潜入なら、連携が命」


「だな」


「まず――」


指をさす。


「リオ、先行」


「はいよ」


「気配遮断でルート確保」


「任せて」


「神代は中衛」


「敵に接触したら対応」


「了解」


「ルシエル」


少しだけ間を置く。


「後衛」


「……ん」


「無理に前に出ないで」


「……でも」


「ダメ」


はっきり言う。


「あなたの力は切り札」


「……ん」


しぶしぶ頷く。


「最後にあたし」


剣を軽く振る。


「前衛兼カバー」


「妥当だな」


「でしょ」


「……問題は」


神代が言う。


「見つかった時だな」


「その時は」


セリナが即答する。


「撤退」


「早いな」


「当たり前よ」


真顔。


「目的は戦闘じゃない」


「情報だ」


「そういうこと」


「……ねえ」


リオが少しだけ声を落とす。


「一応言っとくけど」


「なんだ」


「中で会う可能性あるよ」


「誰に」


「さっきのやつ」


空気が止まる。


「……マジか」


「絶対じゃないけどね」


「でもあり得る」


「……最悪ね」


セリナが呟く。


「その時は」


神代が言う。


「逃げる」


「即決ね」


「勝てねえからな」


「正解」


少しの沈黙。

誰も動かない。

あと一歩で――敵の中に入る。


「……神代」


「なんだ」


「……怖い」


ルシエルが小さく言う。


「……そりゃな」


正直に答える。


「でも」


その手を取る。


「一人じゃねえ」


「……ん」


ぎゅっと握り返してくる。


「……ならいい」


その一言で、十分だった。


「……ほんと不思議」


リオがぼそっと言う。


「何が」


「そのやり方」


「気にするな」


「参考にはする」


「やめとけ」


絶対ろくなことにならない。


「……行くわよ」


セリナが小さく言う。

全員の視線が前を向く。


森の奥。見えない拠点。

そこが、境界線。


ここを越えれば――もう後戻りはできない。


「……リオ」


「うん」


「先導」


「了解」


リオが一歩踏み出す。

そして、消える。


「……神代」


「なんだ」


「……離れないで」


「分かってる」


短く答える。


一歩。また一歩。

静かに進む。


音を殺し、気配を消し。

敵の中へ。


――潜入が、始まる。

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