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拾った娘が元魔王で、気づけば俺たちは敵になっていた  作者: 東海林


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14/30

14話

翌朝。

まだ日が昇りきる前。


「……早い」


ルシエルがぼそっと言う。


「仕方ねえだろ」


神代が荷物を持ちながら返す。


「目立つ前に動く」


「……ん」


眠そうに目をこすりながらも、しっかり腕に絡みついてくる。

もう完全に定位置だ。


「……ほんとに行くのね」


セリナが外を見ながら言う。


「戻るなら今のうちよ」


「戻らねえよ」


「だと思った」


ため息。でも、止めはしない。


「じゃ、行こっか」


リオが軽く言う。

いつも通りの軽い調子。

でも――今日は少しだけ違った。


視線が、さりげなく周囲を見ている。

完全に仕事モード。



街を出るのは、意外と簡単だった。

昨日より人が少ない。


視線も減っている。


「……いない?」


セリナが呟く。


「……いる」


ルシエルが即答する。


「……遠い」


「……見張りは残してる感じか」


神代が言う。


「全員で囲む気はない、と」


「それか」


リオが肩をすくめる。


「もう逃げられないと思ってるか」


「どっちも嫌ね」


「同感」


森に入る。

空気が変わる。


静かで、少し重い。


「……こっち」


ルシエルが先を指す。


「分かるのか」


「……うん」


「便利ね」


「……普通」


どこがだよ。


しばらく歩く。会話は少ない。

でも――完全な沈黙じゃない。


「ねえ」


リオがぽつりと声をかける。


「ルシエル」


「……なに」


反応はする。

でも、距離は取っている。


「怒ってる?」


「……別に」


「嘘だ」


「……嘘じゃない」


即答。でも、声が少し硬い。


「だってさ」


リオが笑う。


「あたし、敵だったし」


「……今も」


「まあね」


否定しない。


「……じゃあ嫌い」


「知ってる」


あっさり返す。

そこで終わるかと思ったが――


「でもさ」


リオが続ける。


「完全に嫌いって感じでもないでしょ」


「……」


ルシエルが黙る。

図星か。


「……神代がいるから」


小さく言う。


「は?」


「……神代が許したから」


それだけ、シンプルな理由。


「……なるほどね」


リオが少しだけ目を細める。


「じゃあさ」


「……なに」


「神代いなかったら、あたしどうなってた?」


「……消す」


「即答かー」


苦笑いでも、嫌な感じはない。


「まあ、分かりやすくていいや」


「……」


ルシエルは何も言わない。

でも――完全に拒絶してるわけでもない。

少しだけ、距離が固定された感じ。


「……ねえ神代」


セリナが小声で話しかけてくる。


「何だ」


「うまくいくと思う?」


「何が」


「あの二人」


「さあな」


正直に答える。


「でも」


「でも?」


「今のとこは問題ねえ」


「……楽観的ね」


「現実的だ」


完全に崩れてないなら、それでいい。

その時。


「……止まって」


ルシエルが急に言う。

全員が止まる。


「……どうした」


「……いる」


視線が一点に向く。


「……前」


森の奥。

木々の隙間。


――気配。


「……数は?」


「……三」


「少ないわね」


セリナが構える。


「でも油断できない」


「だな」


神代も前に出る。


「リオ」


「任せて」


軽く言って――そのまま、消えた。


「……え」


セリナが目を見開く。


「なに今の」


「……気配遮断」


ルシエルがぼそっと言う。


「……上手い」


「マジか」


神代も少し驚く。

完全に消えた。


次の瞬間、――ドサッ。


音。


一人、倒れる。


「……はや」


セリナが呟く。

さらに、もう一人。


音もなく崩れる。

最後の一人が反応する。


「なっ――」


声を上げる前に、首元に刃。


「はい終了」


リオの声、軽い。

でも、完全に制圧してる。


「……すご」


セリナが素直に言う。


「やるでしょ?」


リオが笑う。

そのまま、男を気絶させる。


「……敵だけど」


「それは言わないで」


「事実よ」


「……神代」


ルシエルが小さく言う。


「……使える」


「評価そこかよ」


「……大事」


まあ、間違ってはいない。


「……で?」


神代が倒れた男を見る。


「どうする」


「情報取る?」


リオが聞く。


「いや」


首を振る。


「今は進む」


「了解」


あっさり納得。


再び歩き出す。

さっきまでより、少しだけ空気が変わっていた。


「……ねえ」


リオがぽつりと言う。


「ルシエル」


「……なに」


「さっきの、使えるってやつ」


「……なに」


「ちょっと嬉しかった」


「……別に」


そっけない。

でも――ほんの少しだけ、声が柔らかい。


「……変」


「お前に言われたくねえ」


「……ほんと」


また真顔。

やめろその説得力。


「……まあいいや」


リオが笑う。


「これからよろしくね」


「……わからない」


「厳し」


「……神代次第」


「重っ」


笑う。

でも、その顔は少しだけ安心していた。



森の奥。

目的地は、まだ遠い。


でも――確実に近づいている。

敵の拠点へ。危険の中心へ。

四人の距離は、まだ不安定だ。


でもほんの少しずつ――噛み合い始めていた。

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