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拾った娘が元魔王で、気づけば俺たちは敵になっていた  作者: 東海林


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13話

夜。

壊れたドアは、とりあえず机で塞いだ。


「応急処置すぎない?」


「文句言うな」


神代が短く返す。


「寝込み襲われるよりマシだろ」


「それはそうだけど」


セリナがため息をつく。

その隣で。


「……狭い」


ルシエルがぼそっと呟く。


「お前がくっついてるからだろ」


「……ここがいい」


「はいはい」


いつもの距離感。

ただ――今日は一人増えている。


「で?」


リオが床に座りながら言う。


「どこまで知りたいの?」


「全部だ」


神代が即答する。


「……いいね、その雑さ」


リオが笑う。

でも、その目は仕事モードに入っていた。


「まず、あたしがいた組織ね」


指を立てる。


「名前は――回収局」


「……そのまんまね」


セリナが呟く。


「でしょ」


リオが肩をすくめる。


「正式名称はもっと長いけど、みんなそう呼んでる」


「何してる組織だ」


「簡単に言うと」


少しだけ間を置く。


「危険な存在を回収・封印する」


空気が少しだけ重くなる。


「……危険な存在、ね」


セリナが目を細める。


「基準は?」


「上の判断」


「曖昧すぎるでしょ」


「そういうもんだよ」


軽く言う。


「気に入らなければ危険、でも通るし」


「……最低ね」


「同意」


リオがあっさり頷く。


「で、その中でも」


指をもう一本立てる。


「ルシエルは最優先対象」


「……やっぱりか」


神代が呟く。


「理由は?」


「元魔王だから」


シンプルすぎる答え。


「……それだけ?」


「それだけで十分でしょ」


リオが言う。


「一回世界壊しかけたやつなんて、放置しないよ普通」


「……今は違う」


ルシエルが小さく言う。


「……何もしてない」


「知ってるよ」


リオがあっさり返す。


「だから悩んでる」


「……は?」


セリナが眉をひそめる。


「任務的にはアウト」


「でも見た感じセーフ」


「そのズレがめんどい」


「……なるほどね」


納得はできる。

でも信用はできない。


「さっきの男」


神代が話を戻す。


「あいつは何だ」


「あー」


リオが少しだけ顔をしかめる。


「当たり引いたね」


「どういう意味だ」


「回収局の中でも上位」


「ランクで言うと?」


「上から三番目くらい」


「……は?」


セリナが固まる。


「じゃあ上にあと二段階いるってこと?」


「うん」


「嘘でしょ……」


顔が引きつる。


「しかも」


リオが続ける。


「あれ、たぶん本気じゃない」


「……だろうな」


神代も頷く。


「様子見って感じだったし」


「そうそう」


「最悪じゃない」


「でしょ」


軽く笑う。笑えないけど。


「……数は?」


 神代が聞く。


「追手」


「この街周辺で、今は10人前後かな」


「多いな」


「これから増えるよ」


「だろうな」


予想通りすぎる。


「……神代」


「なんだ」


「……やっぱやだ」


「知ってる」


ルシエルがぎゅっと掴む。

まあ、無理もない。


「で、ここからが本題」


リオが少しだけ前に出る。


「どう動くか」


「逃げるだけじゃ無理だな」


「うん」


「だから提案」


 にこっと笑う。


「穴を使おう」


「穴?」


セリナが首を傾げる。


「回収局にも、完璧じゃない部分がある」


「それが?」


「拠点」


短く言う。


「地方の中継拠点」


「……そこを叩くのか」


神代が言う。


「正解」


「でも無茶でしょ」


セリナが即座に反論する。


「戦力足りてないわよ」


「正面から行くならね」


リオが笑う。


「でも、潜入なら?」


「……」


セリナが黙る。


「そこに」


リオが指を立てる。


「資料がある」


「何の」


「回収対象の情報」


つまり――


「……ルシエルのこともか」


「たぶんね」


それはデカい。

敵が何を知ってるのか。


どう動くのか。

全部に関わる。


「……やる価値はあるな」


神代が呟く。


「でしょ?」


「でもリスク高すぎる」


セリナが言う。


「潜入って、バレたら終わりよ」


「バレなきゃいい」


「簡単に言うな」


「簡単じゃないよ」


リオが少しだけ真面目な顔になる。


「でも」


視線を向ける。


「今よりマシ」


「……」


否定できない。

このまま追われ続ける方が詰みだ。


「……神代」


ルシエルが小さく言う。


「……行くの?」


「どう思う」


「……怖い」


正直な言葉。


「……でも」


少しだけ間を置いて。


「……一緒ならいい」


「……そうか」


それで十分だ。


「決まりだな」


神代が言う。


「中継拠点、叩く」


「マジで?」


セリナが目を見開く。


「やるしかねえだろ」


「……はあ」


大きく息を吐く。


「ほんと無茶」


「今さらだ」


「それもそうね」


諦めたように笑う。


「じゃあ決定」


リオが楽しそうに言う。


「次の目的地は――」


一瞬、間を置いて。


「北の森の奥」


「そこに拠点がある」


「……また森か」


「好きだねえ」


「好きじゃねえよ」


即答。


「準備は?」


セリナが聞く。


「明日には出る」


「早くない?」


「遅いくらいだ」


「……まあ、そうね」


もう時間はない。


「……神代」


「なんだ」


「……手」


「またかよ」


差し出す。

ぎゅっと握られる。


「……これでいい」


「はいはい」


 もう慣れた。


「……ほんと不思議」


リオがぽつりと呟く。


「何が」


「その関係」


「ほっとけ」


「面白いじゃん」


笑う。


その顔は――最初より少しだけ、柔らかかった。


こうして次の行き先が決まった。

逃げるためじゃない。

戦うための一手。


――敵の中へ踏み込む。

危険な選択でも、それしかない。

四人は、同じ方向を見ていた。

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