52話 おっさんは不便を求めている?
「あれは反則だろ……」
俺とバルドさんは隠しクエストをクリアする為、モノクルスの下へ向かった。
モノクルスはデカい一つ目が特徴の巨大なモンスターで、武器もその巨体に見合った大きな斧を装備していた。
見るからに近接戦闘が得意そうなモノクルスに対し、大盾を装備したバルドさんが前衛に立ち、俺は後方から援護する作戦だった。
しかし、モノクルスは開戦と同時に手に持った斧を投げ、直撃した俺はあっけなくHPが0にりその場に倒れた。
蘇生待機時間中もバルドさんは必死に蘇生しようと機を伺っていたが、モノクルスの猛攻を前に蘇生待機時間が終わり、俺は蘇生地点である王都へ死に戻った。
後から知ったことだが、あの時バルドさんが言いかけたモノクルスの特徴は、後衛が狙われやすいので油断しないように伝えるつもりだったらしい。
俺が死んだ後、バルドさんはすぐに戦線を離脱し王都に戻ってきた。
クエストは失敗したが、再受注できるらしいので問題はなかった。
(むしろ問題なのは――)
俺はため息を吐きながらゲームの電源を落とした。
(足引っ張ってるのは分かってるんだよ)
レベルも技量も何もかも足りていない。
明日再挑戦すると決め今日は解散したが、このままでは次もバルドさんに負担を掛けることは目に見えている。
強くなりたい――
「よし、一旦何ができるか再確認だ!」
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名前:ユキト
メインジョブ:モンスターテイマー
サブジョブ:解体屋
レベル:8
HP(体力):100
MP(魔力):100
STR(筋力):17
VIT(耐久):15
INT(知力):8
AGI(敏捷):15
LUK(幸運):20
【装備】
頭:なし
体:布の服
腕:なし
足:皮の靴
武器:パチンコ
【メインジョブスキル】
レベル1:テイム
レベル2:生態把握
【サブジョブスキル】
レベル1:解体報酬増加率アップ
レベル2:状態保存
【テイムモンスター】
ラピードラビット:レベル1
グラスメア:レベル1
「改めて見てもレベルは低いし、装備も貧弱だな」
アプリに表示されたステータスを確認し、俺は自分の問題点を紙に綴った。
(これはこだわってる場合じゃないな……)
俺はスマホを手に取り、一つのアプリをインストールした。
このアプリはAIを使った情報収集が可能で、さらにVOのアカウントと連携することでプレイヤーのデータを参照し、最適な情報を提示してくれる優れモノだ。
(あれだけ迷惑かけたんだ。何が何でも強くなってやる!)
必要な情報をアプリに打ち込むと、すぐに求めていた狩場を複数探し出してくれた。
(狩場はここでいいとして、次は――)
俺は次にモンスターテイマーの情報を集めるため、アプリにいくつかの情報を打ち込んだ。
規制や情報独占、それにテイマーが少ない事もあって情報はそれほど集まらなかったが収穫はあった。
「なるほど、テイムしたモンスターは強さやレア度によって必要経験値に差が出るのか」
ピコはレアなモンスターの為、レベルを上げる為の必要経験値がプリンよりも遥かに多い。
あれだけ一緒に戦って、まだ一つもレベルが上がっていないのはそれが理由だ。
(……うーん、やっぱ便利過ぎるんだよなぁ)
アプリを起動してからまだ30分と経っていない。
自分で調べるより圧倒的に効率がよく、使い勝手の良いアプリを前に俺は改めてAIの凄さを実感した。
だがそれと同時に、昔の不便さを知っている身からすれば、この便利さに妙な抵抗感があった。
「はぁ、こうやって時代に取り残されるおっさんができあがるわけか……」
盛大に溜息を吐いた後、チラリと時計に視線を向ける。
日付が変わってからまだそれほど時間は経っていない。
俺はアプリを閉じると、再びゲームの電源を入れた。
「昔は徹夜なんて当たり前だったんだ。一日くらいどうってことない……はずだ」
俺は再びログインするとすぐに道具屋へ向かった。
残り少ない金でアイテムを購入し準備を整えると、王都から西にある岩壁地帯に向けて駆け出した。
「お、あれが【ランドモル】の掘った穴か」
ランドモルは穴掘りが得意なモグラ型のモンスターだ。
現実のモグラと違うのは、どれだけ頑丈な岩だったとしても掘り進める強靭な爪、そして――
「この大きさ、本当に普通のモグラよりでかいんだな」
幅60cm程ある大きな穴、岩壁をものともせず掘り進められたそれは先が見えないほど長く続いていた。
俺はいくつも点在する穴の中から三つ選び、道具屋で購入した『煙玉』を投げ入れた。
数秒後、投げ入れた穴と他数カ所の穴から一気に煙が上がる。
「やっぱり別の穴に繋がってたか。さて、どこから出てくるか」
さらに数秒待っていると、突然穴から一匹のモンスターが飛び出した。
「ほんとに出てきた!情報通り煙の匂いで動けないみたいだし、これならいける!」
パチンコを構え、スタン状態のランドモルに石を叩き込む。
ランドモルが掘って出た大小さまざまな石を次々と拾ってはパチンコで打ち出し、数十発目でようやく仕留めることができた。
【武器カテゴリ『パチンコ』の熟練度が一定に達しました。射撃スキル『パワーショット』を習得しました】
「よし!威力が弱い分たんまり打ち込んだからな。熟練度稼ぎにはもってこいだ」
パワーショットを習得したことで少しだけ効率が上がり、穴から出てきたランドモルを合計六匹討伐することができた。
自分よりレベルの高いランドモルを撃破し、大量の経験値を獲得した俺のレベルは8から10に、岩陰に潜ませていたプリンのレベルも2に上がった。
「プリンはレベルが上ってもスキル習得ならず……か。やっぱりこれもレア度が関係してるのか?」
始めから二つのスキルを覚えていたピコと違い、プリンは未だにスキルを習得していない。
(とはいえ何も覚えないなんてことはないはずだし、とにかくレベルを上げて様子をみるしかないか)
周囲のランドモルを狩り尽くした俺は、次の狩場を目指して移動を始めた。
ランドモルは手順を間違えなければ、スタン状態で安全に狩れるモンスターだ。
そう、手順を間違えなければ――
俺は次の狩場へ到着し、そこでモンスターに囲まれる三人パーティに遭遇した。




