07.魔王、死す
「やる気がっ! 余のやる気がっ!」
スキルを行使しなければ雷撃をまともに食らってしまう。
やらなくてはならない。しかし、面倒くさい。
ああ、まあ、いいかな? なるようになるでしょう……。
そんな葛藤が魔王の中で起こっているかどうかはエライネには分からなかったが、グウに言われてエライネは再び雷鎚を構えた。
「いくわよっ、魔王っ! 名前は忘れたけどっ!」
「いや、我が名は――」
「どっせえええええいっ!」
エライネは吠えた。
そして、雷鎚をぶんっ、と振るった。
ドゴォオオオオオオオンっ!!!
ひときわ大きな雷撃がメイスから放出され、魔王を撃った。今度は表面ではじかれることなくその身に降り注いだ。
「ぐおおおおおっ!」
稲妻に貫かれて苦悶の咆哮をあげた魔王は、片膝をついてその場にくずおれた。
「やった! エライネ!」
グウが叫んだ。
「……この魔王ジゴクファイヤーに膝をつかせる者があろうとは! だが、ここからは余の――」
続きを言わせる隙も与えず、エライネは雷鎚の二発目を放っていた。
ドゴォオオオオオオオン!
「ぐおおおおっ!」
稲妻の追撃を受けて、魔王は思わず後ろに体をそらせ、背中から倒れ込んだ。
「さすがはエライネ! マナー無視で相手を追撃するなんてっ!」
グウはもう、エライネのマナー違反をとがめる気もなくしたようだった。
「くっ……。余はこのまま死ぬのか。だが、覚えておけ勇者と聖女よ。余はお前たちに呪いを――」
げしっ! げしっ! げしっ!
エライネは倒れた魔王の上に馬乗りになって、メイスの連打で魔王を黙らせた。
グウは何かにとりつかれたバーサーカーのようなエライネの背中を見て、恐怖すら感じていた。
「さ、グウ! 魔王にとどめを刺してっ!」
「え? 僕が?」
「魔王を倒すのは勇者の役割でしょ? 今なら気を失っているし楽勝よ?」
美しい顔にたくさんの返り血を浴びたエライネがにっこりとほほ笑んでグウを見た。
「無抵抗の相手を殺害するとか、すごく気が進まないんだけど……」
「じゃあ起き上がるまで待つ? 今のチャンスを逃したら次はないのよ」
顔を血みどろにした聖女に脅しのようにそう言われて、勇者グウ・タラ―は決断した。
「ごめんなさいっ! えいっ!」
惰性剣ロクデモナイヤーを両手で逆手に構え、グウは魔王の喉元を思い切り突いた。
こうして、魔王ジゴクファイヤーは死んだ。
グウは遠いどこかでファンファーレが聞こえたような気がした。




