08.その後のふたり
魔王を倒した勇者グウと仲間の聖女エライネの名声は瞬く間に王国中に広がった。
魔王を倒した証拠として、魔王ジゴクファイヤーが身に着けていたペンダントをはぎ取って冒険者ギルドにもっていった。
魔法鑑定の結果それは魔王ジゴクファイヤーが、隣の魔王である氷の女王ツンドラに贈って突き返された、紛れもない魔王当人の持ち物であるということが判明した。
「魔法による物品鑑定って、そんなことまでわかっちゃうんだね……」
エライネはちょっとげんなりした顔をしてグウを見た。
「魔王城でイチャイチャされて嫌だったんだろうな。気の毒なことをしたよ」
ギルドで魔王討伐の事実が認められた後、二人は国王に謁見して褒美を賜り、それから王都を馬車でパレードすることになった。
遠目にみれば背が高くて精悍そうに見えるグウと、黙っていれば美しい聖女そのものに見えるエライネは、王都の庶民たちから歓喜をもって迎えられた。
「おぬしたち、これからはどうするのだ? この勢いをかってあの魔王もあの魔王も、どんどんやっつけてしまうというのはどうだ」
「魔王軍が各地に派遣した小魔王を残らず狩り殺すんですか?」
グウはちょっと嫌そうな顔をして国王を見た。
それから、エライネの方を振り返った。
「どうする、エライネ?」
「私は、村に戻って聖堂の運営をして静かに暮らしたいです」
グウと一緒に、という気持ちを込めて言ったつもりだったが、それは伝わったものかどうか。
「僕も、村に戻って静かに暮らしたいですね。エライネと一緒に」
グウがそう言ったので、エライネの胸はときめいた。
「そうか、実に残念だ。おぬしらならばいずれは中魔王、大魔王も倒せるのではないかと期待してしまったが」
「ご期待に沿えずすみません。僕はただの村勇者です。本来ならばオオカミやクマから村を守るのがせいぜいでして。今回はたまたま神の恩寵を賜って、こういう経緯になりましたが」
「そうか。そちは実に謙虚な勇者であるな」
王様は感心したようにグウに言ったが、その実はあんまり働きたくないだけだということをエライネは知っていた。
王都でのパレードなどが終わると、グウとエライネは王からもらった故郷の村に向かった。
そして、エライネは元のように質素な生活に戻り、グウはぐうたらな生活に戻った。
王からもらった報奨金は、村に何か災害でもあった時に使うため王都の銀行にほぼ全額を貯金した。
そして2年後、エライネはグウからプロポーズを受けてそれを快諾した。
「私でいいの、グウ?」
「もちろん! 君は美しいし、優しいし、働き者だし、世話焼きだし、僕を怠けさせてくれるし」
「ちょっと! 家事くらいはしてもらうわよ、グウ」
そして二人は、その後これといった大きな活躍をすることもなく、平穏で幸福な人生を過ごした。
魔王ジゴクファイヤーの名はやがて忘れられ、それを倒した勇者たちの名も徐々に忘れられた。
<完>




