03.雷鎚無双は続く
ドゴォオオオオオオオン!!
エライネが雷鎚を振りかざすと、洞窟の中に稲光が走った。
自宅への侵入者に気づいた食人鬼たちが棍棒を手に走り寄ってきたところであった。
兄弟だったのか一家だったのか仲間だったのか、五体のオーガが一瞬で消し炭に変わってしまった。
「!!!!」
二度目のこととはいえ、エライネはやはり驚いてしまった。
稲妻が発動しなかった場合にはエライネを先に逃がすつもりだったのか、グウはエライネの真横に待機しつつ、いざとなれば飛び出せるように準備していたようだ。
「こ、これは。本当に稲妻の力が宿った神器だ!」
グウは興奮した様子でエライネの手を取った。
「これで時々楽に魔物と戦って報奨金をもらうだけで、僕たちは一生楽しく暮らせるね!」
「グウ……」
二人で一生楽しく暮らす、という言葉には心惹かれるものがあった。
が、エライネは雷鎚の力を確信した時点で決意していた。
「グウ! 雷神がこの武器を私たちに遣わしたのは、そこいらの雑魚を相手に楽をして稼ぐためではないと思うわ!」
「……エライネ?」
「目標は高く持ちましょう、グウ! 私たち、魔王を倒すわよっ!」
「ええーっ!?」
エライネはのしのしと洞窟を出ていきながら、雷鎚を高く掲げて叫んだ。
「打倒、魔王っ!」
「ちょっとちょっとエライネ! それはいくら何でも目標が高すぎなんじゃ……」
グウ・タラーは慌てたように後を追いかけてくる。
「早速王都に向かって、魔王討伐隊への登録を済ませるわよっ!」
「お昼も食べないまま王都まで歩くのー?」
「文句を言わないっ! 王都について登録を済ませたら、何かおいしいものを食べさせてあげるから」
働かない勇者であるグウは、常に金欠状態であった。エライネからもらったお金を使って、村で安い食材を買っている。それを聖堂でグウが調理して食べるのが二人のいつもの食事であった。
ちなみに、グウのお小遣いは聖堂の掃除などの雑用をさせることで、賃金としてエライネが与えている。
「外食かーっ! 久しぶりだなあ」
グウは一転して王都行きを快諾し、二人はオーガの洞窟を後にして歩き出した。
「ところで、聖堂のほうは留守にしてよかったの? 村に一人しかいない聖職者だけど」
「雷鎚の力が本物ならグウと旅に出ることになると思って、村長さんに断りは入れておいたの」
「そうなんだ。村長も癒しの力を使えるし、大丈夫かな」
村長というのは、引退した先代の神官であった。還俗して村長となったが、けが人や葬式などが発生したときにはエライネがやるべきことを代行してもらえるはずだった。




