【教え子からの手紙と……】
【教え子からの手紙と……】
先生、お元気ですか?
五年前、3年C組であなたの教え子だった夏楽百合です。覚えていますでしょうか?
私は今、超能力を専門的に研究している国家機関にて才能を認められ、毎日充実した日々を送っています。
私の力は、全世界に数百人しか存在しない超能力者の中でも極めて珍しいモノらしく、少しでもこの力が日本……いや、世界中の人々のお役に立てるよう、ラボの方々と日進月歩の研究に励んでおります。
これも全て先生のおかげです。先生があの時、進路指導室で私に超能力があることを見抜き、それを教えてくれたから今があるんです。
あの時先生が、この言葉を私送ってくれたことは昨日のように覚えています。
『夏楽……この成績のままでは、志望校にはどこにも受からんが、“思う念力、岩をも撤す”という言葉をお前に送ろう。それじゃあ頑張れや』
その言葉通り、私は下校途中の河原で見かけた岩に念を送ると、目からビームが発射されてその岩を突き抜け、川の水を空っぽにするかのような大爆発を起こしちゃったんです。
私にこんな才能があったなんてその時初めて知ったんです。その後、私は『念力』『テレパシー』『千里眼』等々……壊れたガシャポンの機械みたいに次々と超能力を開花。専門機関の方にスカウトされて今に至ります。
先生……何度も言いますが、全てあなたのおかげなんです。いつか私が世界の人々を救えるような存在になったら、その立派な姿を先生に見てもらいたいんです。その時はまた、今日みたいに『テレパシー』で気持ちを伝えますね!
それじゃあまた! 元気でね、先生!
突如脳に直接語りかけられた百合の恩師は、睡眠不足とストレスで幻聴が聞こえたのかと疑ったが、直後に郵送されてきた彼女からの手紙に同じような内容が書かれていたことで、それが本当に『テレパシー』なのだと確信を得た。
夏楽……お前のことはよく覚えてるぞ。
お前は俺が驚いて「心臓が止まりかけた」と言ったら、すぐさま119番して救急車を呼んじまったり、とにかく冗談が通用しないヤツだったからな……
とりあえず夏楽……お前がその超能力とやらでまだ俺の脳ミソの中を読みとってたとしたら、今から言うことをよ~~~~~~く聞くんだぞ。
「今すぐ本屋に行ってことわざ辞典を買いやがれ! 」
THE END