↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
3/23

第3話 不遇を言葉でぶん殴って、逃走



 そして、三度目。

 それが今回。


 二度目の目覚めは、優しい顔をしたメイドの笑顔が私を迎えてくれた。

 今回はそれとは正反対の、邪悪をそのまま顔に貼り付けたような女が、私に色々と言っている。

 


 伯爵家の娘でさえいい環境を用意してもらえていたのに、それより爵位が上の筈の公爵家の娘が、この仕打ち。


 勿論、家庭によって事情は違う。

 例えば家が没落していれば、こういう事もあると思うけど、目の前の継母は成金みたいに、ゴッテゴテに自らを飾り付けていた。



 一応、生きるための最低保証はされていた。


 公爵家としての体裁があるからか、食事は最低限与えられていた。

 ――ものすごく固いパンと冷めたスープ、たまに傷んだ食材が混ざっていて、お腹を下したこともあったけど。


 屋根のある場所に寝かせてもらえていた。

 ――ただし、布団なんてものはなかったし、隙間風もビュービューだったけど。


 一応服は着せられていた。

 ――ただし、今着ているのと同じボロボロの服で、着替えなんて勿論なかったけど。



 ……よく耐えたよね、私が自分を自覚する前のティアリスは。

 その我慢強さを、私は心から褒める。


「本当によかったわ。“『人食いの魔族』たちの国に、生贄にやれ”という王命の矛先が、『我がウェーバー公爵家の娘』で」

「お姉さまがあちらに行くお陰で、わたしたちは王家から今までの事、全部許されるんですって。お姉さまも、生きていた意味ができてよかったですね。このままじゃあ、一生役立たずだったもの」

 

 継母がニヤリと嫌な顔で笑い、その隣で私と同年代の女の子が、ひょっこりと顔を出して言葉を続ける。

 

 彼女は、義妹のリズ。

 私とは対照的に、綺麗に着飾りお肌も髪もツヤツヤだ。

 厚遇過ぎて、ちょっと食べすぎているのかな。

 六歳児にしては頬や腕が、プニッとしすぎているような気がする。


 見目としてはぽっちゃりはマイナス要素だけど、私と二人横に並べれば、どちらが幸せな境遇で生きてきたのか・親に愛されているのかは明白だ。


「安心して? わたしが《《ここ》》で幸せになります。だからお姉さまは――どうぞ来世で幸せになって?」


 流石は継母仕込みなだけあって、『嫌な女』がこの歳で既に板につき始めている。

 貴族令嬢としては、あまりにも品位に欠けるけど、そんな事などこの子はきっと、まるで気付いていないのだろう。


「中でも魔王は酷く残忍で、角が生えていて体から黒い霧を発する、とても醜悪な男なんですって」

「もし死ぬのが怖いのであれば、今までの生活で積んだ掃除や洗濯の経験を生かして、魔族に『こび』を売ったらいいと思うわ。一秒くらいは、長く生きていられるかも」


 そんな言葉で最後まで私の不安を煽ろうとしている姿は、人として醜悪だった。


 ティアリスが持っている情報は、ひどく断片的だ。

 例えば私は、自国の名さえ知らない。


 その原因は、間違いなくこの人たちだ。

 彼女たちが、私の心を貶めるために必要な、私を絶望させるのに都合のいい情報しか、私に与えていないのだ。


 だから今もこの通り、魔王国という怖いところに送られるのだろう事は分かっても、何故そんな事になったのかは知らない。

 

 それでも、一応『情報』である事には変わりないけれど。


 ――聞き飽きちゃったよね?

 ティアリス。


 心の中で、これまでの私にそう問いかける。

 私の中で、誰かが頷いたような気がした。



 私は、二度目の人生で『淑女の鑑』と称されていた。

 でもそれは、演じた結果に過ぎない。


 私は一度目の人生で、何度か社長に「ふざけんな!」と啖呵を切った。

 私は、TPOは弁えるけど、言うべき時に我慢するような殊勝な性格は本来していない。


 つまり、何が言いたいのかというと。


「ご心配なく、お義母様、リズ。貴女方に心配されずとも、貴女方の視界の外で、わたしは勝手に幸せになりましゅから」

 

 前世で培った完璧で優雅な『淑女の微笑み』と、前々世から引き継いでいる強気で、ズバッと言い返した。



 目の前の二人が、一体何を言われたのか分からないような顔になった。


 その間に、私は「馬車を出して!」と声を上げる。

 同時にパタンと扉を閉めると、馬車はそれを合図にしたかのように、ガタガタと走り始めた。



 外から、「なっ……生意気なっ!!」という継母のヒステリックな金切り声と、「ちょっとお母様、あの顔見ましたぁ!?」というリズの焦った声が追いかけてきたけど、気にしない。

 私にはもう関係のないことだ。


 だって、来世までもう会わない相手でしょう?

 来世でも私は会いたくないけど。


「言いたい事が言えて、スッキリしたわ」


 そう言いながら、作った笑顔のまま馬車の座席に座り直した私は。



 っていうか、噛んだ……!


 遅れてやって来た羞恥心に、バッと顔を両手で覆う。



 せっかくカッコよく決めようと思ったのに!

 最後の最後で失敗したぁ!!



=====

お読みいただき、ありがとうございます!

いいね【♡】も、毎話押してくださっている読者の方々、ありがとうございます!

とても励みになっております!


もし

・まだ【★】やレビューを投稿していない

・「面白い」「続きが読みたい!」「ざまぁ楽しみ~!」「秘書なのに社長に「ふざけんなっ!」って啖呵切れるのいいね」「ポンコツ幼女可愛い」


などと思っていただけましたら、是非ページ下部の【★】から評価・応援をいただけますと、執筆の大きな励みになります!


=====

Next≫

第二章:転生幼女は魔王に交渉を持ちかけた!

 第一節:ティアリス、魔族に出会って手足プラーン(命の危機①)

  第4話 目標は「死なない!」 なのにピンチ?!


※ハートやギフトなどで応援お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。