表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3人は永遠のプリンセスらしいが、えっ、1人はプリンスで、こちらは3人の騒動に巻き込まれて大変  作者: キジ猫大魔神


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/9

第二部「疑惑の炎と見えないブレーキ」・第8章 ブレーキの正体

最初に名前が出たのは、社内ではなかった監督官庁に近い記者クラブの、窓のない小さな部屋。

誰かがこぼした「産業スパイ」という単語に、別の誰かが「それ、むしろあの会社の海外部門トップのほうだろう」と笑い飛ばした。


その笑い話が、メモに変わるまでに、さほど時間はかからなかった。


元華族。

戦後すぐに海外とつながり、長年「何か握っている」と噂されてきた男。

その名前と、「産業スパイ疑惑」というラベルは、実は昔から相性が良かった。


社内で最初にその火の粉を感じたのは、副社長だった。


「政界側から、こんな資料が回ってきました」


社外取締役が差し出した封筒の中には、古い新聞記事のコピーと、数年前の社外調査報告書の抜粋が入っていた。


海外部門トップの過去の経歴。

海外の取引先との異様に濃いパイプ。

そして、かつて別の企業でささやかれた「情報流出」の噂。


「これを、どう読めばいい?」

副社長が問う。


社外取締役は、少しだけ肩をすくめた。


「少なくとも、政界は『誰が本当に危ないのか』を、冷静に見ているということですね」


「うちの会長の娘が“スパイ”呼ばわりしている相手ではなく、彼女を唆した側を?」


「ええ。

そして、もう一つ」


社外取締役は、別の紙をテーブルに置いた。


『某外資系ファンド、当社株式の追加取得を見送り』


短い英文メールのコピーだった。


「政界長老が、ここ数年、この会社が“禿鷹外資”に呑み込まれないよう、監督官庁経由でさりげなくブレーキをかけていたそうです」


副社長は、息を飲んだ。


「その長老の義理の妹を、会長の娘が標的にした結果、そのブレーキが外れた。


そういう見方もできます」


森岡は、会議室の端でその会話を聞きながら、背中に冷たい汗がじわりとにじむのを感じていた。


海外部門トップは、政界プリンセスが「弄ってはいけない人材」だということを、本気では信じていなかったのかもしれない。


元華族という出自。

海外経験。

会長の娘よりも、本物の「お姫様」いや、「お殿様」に近いと、どこかで思っていた。


だからこそ、政界プリンセスへの嫉妬も、会長の娘への軽蔑も、同じように「つまらない感情」として処理できると思っていた。


森岡の視線の先で、専務がぼそりとつぶやいた。


「肉を削って血を断つつもりだったんだろうが…削った肉が、自分の心臓に繋がっていた、ってところですかね」


その日のうちに、社内調査委員会の議題に、ひっそりと一行が追加された。


『海外部門における情報管理体制および責任所在の明確化について』


その行が、誰を意味しているのか。

理解できない人間は、一人もいなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ