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誓いの果て  作者: のの
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開戦

 キッセンベリへの道中、慎重に進んだが戦いになることはなかった。


 途中、ベリンガーの母国グラノゼ、勇者の国サンゼベリアや近隣諸国を探ったが、まるで何十年と人々が居なかったかのような有り様だった。



 グレアムは、キッセンベリへ斥候を出した。

 危険だが、今回は、ただの斥候ではなく、魔術師を入れた規模の大きいものにした。

 場合によっては、そのまま魔術師を全て倒すよう伝えていた。


 まだ、間に合うかもしれない。


 グレアムは、急ぎ陣営を進めた。




「本当に良いの?」

 ジルは、テオグラートの横に馬をつけた。


「うん。僕が適任なんだよ。」

 テオグラートは、会議の時と同じく揺るがない返事をする。


「ティムやニーナ、もう、友達を失うのは嫌だわ。」

 ジルは悲しげに呟いた。


「僕も同じだよ。だからこの戦いを終わらせたいんだよ。リリアーナも待ってくれている。」

 テオグラートは、首から下げているリリアーナから貰ったお守りを取り出した。


「ねぇ、戦いの最中にその鎖切れない?」

 ジルは、自分の首から同じように鎖についた指輪を取り出した。


「魔術で切れないようにしてあるんだ。貸して。」

 テオグラートは、ジルのごつい指輪を見ながら不思議そうな顔を一瞬したが、すぐにテオグラートの表情が変わり集中した顔になった。

 テオグラートの指から、まるで小さなダイヤモンドがこぼれていくような光りが鎖と指輪に沿って流れていく。


「凄く綺麗ね。」

 ジルは、まだ、輝き続けている鎖と指輪を受け取る。


「これで、鎖も指輪も大丈夫だよ。大切にしないとね。国の威信にも関わりかねないし。」

 テオグラートは、にっこり笑った。


「じゃあ、僕は、グレアム王子に合流するよ。僕からもジルのこと、大切にするよう伝えるね。」

 テオグラートは、ジルに手を振り、キリウェル、テオグラートが居ない間コッツウォートを守っていたマルクス、コッツウォート初の女性騎士レイラの3人の少ない護衛をつけてグレアム王子の元へ進み始めた。


「テオグラートも気をつけるのよ!」

 ジルは、大きく手を振った。


「でも、なんでグレアム王子って分かったのかしら。」

 ジルは、不思議そうに友を見送った。




 ジルが持つ指輪は、グレアムの紋章が入った指輪だった。

 テオグラートも、自分の紋章の入った指輪をしていた。

 王族は、皆持っていたが、人に渡すなど聞いたことがなかった。

 大事な指輪を預けるのだから、ジルを大切に思ってくれていると信じることにした。

 男女のことは、テオグラートには、まだ分からないが、グレアム王子やジルは、自分より年上だし、グレアム王子については、今回初めて会って信頼も出来た。

 すべては、この戦いが終わった後の話しだ。

 今は、戦いに集中しなくてはと、テオグラートは気を引き締め、急ぎだした隊列に合わせ馬を進めた。





「来たか。」

 テオグラートは、グレアム王子の元にたどり着いた。

 馬を進め、グレアム王子と並走した。


「なるべく俺と並走するか、後ろに付け。俺には、腕の良い魔術師が着いているからな。」

 グレアムは、テオグラートにウィンクした。


「人使いが荒いですよ。私はあなたについているんですよ。」

 ハヴィが呆れて、口を挟む。





 前方には、キッセンベリの町並みと城が見える。空はさらに暗く、雲の隙間から稲光が何度も見え隠れする。


 大きな雷が、キッセンベリの外れにある小高い丘に落ちた。


 小高い丘では、大きな爆発や小さな爆発が繰り返し起きたり、光りの線が右や左に走っている。


「急げ!斥候に合流しろ!」

 グレアムが大声で叫ぶ。



 チコやワルター達が小高い丘で、戦っていた。

 魔術師達同士の戦いは、まだかなり離れているグレアム達にも、激しい戦いであることが見てとれた。




 ワルターが、剣を振るうと光りの残像が大きく広がりながら剣についていく。

 光りの残像は、敵の魔術師の1人の体を真っ二つに切り裂き、剣をかわしたと思った魔術師は、驚愕な顔のまま絶命した。


 また、雷が亀裂に向かい落ちた。

 祭壇で、魔術師の1人が高笑いした。

 その瞬間、亀裂から勢いよく炎があがった。



「おい、チコ、ワルター、下がるぞ!」

 レオが、敵の魔術師の体に、剣を深く差し込みながら叫ぶ。


「俺はまだやれるぞ!」

 チコの爆発で、魔術師が炎に巻かれて祭壇の後ろにある亀裂に落ちていく。


「グレアムが来た。後ろに合流しろ!」

 レオの怒鳴り声にチコは舌打ちした。


 チコが観念して、下がり始めるといきなり激しく地面が揺れた。


 祭壇の亀裂から、今度は勢いよく白い煙りが、吹き上げた。


 イザベラが指笛で、乗って来た馬を呼び寄せる。

 ワルター達は、馬に飛び乗り後退した。



「ミム!援護を!」

 グレアムが大声で叫ぶ。

 テオグラートも風を起こそうと前に出る。

 弓の勢いだけでは、弱すぎると判断した。


 ミムの弓隊が一斉に構える。


 しかし、今度は地響きとともに亀裂から勢いよく大きな炎が吹き上げた。


 大小の石が降り注ぐなか、ワルター達は、なんとか小高い丘を下りきり、グレアム達に合流しようとしていた。


「あれを見て!」

 テオグラートが指す先には、激しい炎が消えた亀裂から、ゆっくりと黒い鉤爪が地面に食い込むのが見えた。

 人より、少し大きな黒い塊が地面に立つ。


 黒いゼリー状のものが地面にダラダラと落ちていく。

 黒い塊が、咆哮を上げグレアム達を見た。

 赤いつり上がった大きな目が、細められグレアム達を見据え、笑ったように見えた。


 そしてその後ろの亀裂から次々と同じように黒い塊が上がって来ていた。


 大小の異形が、亀裂から生まれるように次々と這い上がって来るなか、敵の魔術師達が祭壇の前に立つ。


 魔術師達の中央には、キッセンベリの若き国王とガスケ、そしてベリンガーの教え子で、コッツウォートで爆風を巻き起こしたラザフがいた。


「陛下、我々は成功しましたぞ。この亀裂から召喚された異形どもが、陛下を狙う悪しき者共を倒し尽くしますぞ!どうかご命令を!」

 ガスケは、興奮状態の顔を若き国王に向け、手を振り上げた。


「お前達を自由にした私に従え!獣め!行け!」

 若き国王は、血走った目をぎらつかせ叫んだ。


 そうだ。これで全て終わる。


 皆殺しだ!


「私の勝ちだ!」

 若き国王は、握りこぶしを振り上げた。




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