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誓いの果て  作者: のの
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リカルドの交渉

 リメルナの国王リカルドは、鼻歌を歌いながら洞窟を進んでいた。



 リカルドが、森の奥深くへ来ることは滅多になかったが、今回は、子供達のために、王宮の裏にある森を抜けて、この洞窟に来た。


 二ヶ所ある洞窟の内、一ヶ所は、ある契約のために、年に数回は必ず訪れていたが、こちらの洞窟は、グレアムが子供の頃、家出した時以来だ。




「あー、いつ来ても辛気くせーな。」

 リカルドは、大股で岩場を軽やかに飛び移りながら洞窟を進んで行く。


「もう少し先だったか?結構、進んだけどな。」

 リカルドは、ため息をつきながら辺りを見回す。

 洞窟は入り口こそ狭かったものの、10分程で横にも縦にも大きくなり、時より上から日差しが入っていて暗い洞窟は、今や青白く

 なって見通しが良くなった。



 「おーい!誰かいねぇか!」

 リカルドが叫んだ。


「おかしいなぁ。あいつ、いねぇのか?年とってもうろくしたか?」

 リカルドは、わざと大きな声で話しながら進んで行く。


 いきなり激しい唸り声がして、リカルドは耳をふさいだ。


「おっ、居たな、久しぶりだな!」

 また激しい唸り声とともに、凄まじい鼻息もリカルドを襲った。


「覚えてないのか?リカルドだよ。」

 暗闇の中から、ギョロっとした片目がリカルドに近づいた。


「くそガキめが何しに来た?」

 低くしゃがれた大きな声が、洞窟内に響く。


「ちょっと困り事があってよ!」

 また鼻息がリカルドを襲った。


「人間の困り事なんか、知らん!」

 ギョロ目が遠ざかろうとしていた。


「待てよ、封じの石をガキが持って来ちまってよぉ、異形がわんさか出て来ちまってるんだよ。また、塞いでくんねぇか。」

 遠ざかろうとしていたギョロ目が、また近づいた。


「バカ言え、人間なんかにあの石が動かせるわけがない。」

 また、鼻息がリカルドを襲った。


 リカルドは、顎に手をやり考えた。

「なんだよ、あの石、人間じゃ動かせねのか?」


「当たりまえだ、下等動物には動かせねぇ、俺みたいなすげぇ奴か、エルフや妖精族じゃねぇと。」

 ギョロ目は、バカにしたように短く鼻息を出した。


「へぇ、…妖精族ねぇ。」

 リカルドは、鎖を胸元から引っ張り出した。


「本当だ。子供の頃、ハンナに貰ったお守りと同じものをガキ共がしてたな。」

 リカルドは、お守りを戻すとニヤリと笑い、来た道を戻り始めた。


「お、おい、そのガキ共は今どこにいる?」

 ギョロ目が慌てて声をかける。


 リカルドがニヤリと笑ったまま振り返る。


「ハンナ達に伝えな!ガキ共を異形に食われたくなけりゃ、みんなでお迎えに来な!」


 リカルドは、さも困ったように両手を上げ、お手上げのポーズをとりながら話しを続ける。

「俺の子供達も、ずっとは守りきれねぇからよ!異形ってのは、妖精族が好物なんだろう?」

 リカルドは、ニヤリと笑い軽やかに岩場を飛び移りながら戻って行く。


「…待て!このくそガキ!リカルド!」

 ギョロ目は、追いかけようとしたが、洞窟が狭くなり進めなくなると、咆哮が響き渡った。




 咆哮が追いかけてくるように響く中、リカルドは上機嫌で洞窟から出て来た。



「父上、大丈夫なのですか?」

 リメルナの第1王子ステアが、びっくりした顔でリカルドを迎えた。


「あぁ、当たり前だ。交渉成立。おい、セーラ、石拾って来たガキ共、どこにいる?」

 リメルナの女性騎士セーラは、イザベラからリカルドとステアの警護を言付かっていた。


「庭師に預けましたよ。楽しそうに一緒に働いてます。」

 セーラは、なぜ今、子供?と頭を傾げた。


「今すぐ、子供たちをグレアムに届けな。丁重にな。」

 リカルドは、楽しそうに笑うと馬に飛び乗り城に向かった。


 ステアとセーラは、顔を見合わせると慌ててリカルドの後を追った。




 *******



 ワルター達は、なんとかグレアムの元に戻れた。


「くそ!間に合わなかったぜ!」

 チコが心底悔しそうに、振り返った。


「まずは、あのちまちましたのをどうにかしてくれ。多すぎる!」

 レオが、馬を敵陣に向けながら呟いた。



「おい、坊や。お手並み拝見と行こうか?」

 ワルターが、グレアムの後ろを見た。


「嫌な使われ方だな。あんまり期待されたくねぇな!これ初心者なんだから。」

 剣を引き抜きながら、不機嫌な顔をしたキャスが現れた。


「せっかく良いもん持ってんだ、頑張りな!」

 ワルターは、馬上から楽しそうに笑った。


「ふん!」

 キャスは、嫌そうに鼻息で答えると剣を構えた。


 キャスの剣を握る手が光り始めると柄に着いている青い石に光りが吸い込まれていく。

 キャスは、そのまま剣を横に大きく振る。


 光りが長く伸び、こちらに向かう何体もの異形を一瞬にして切り裂いた。



「まぁまぁだな。初めてにしては上出来だ、坊や。」


「まぁまぁかよ!」

 キャスは、不満げにワルターを見た。


「もっと腰を落として、足を踏ん張って構えな。そのまま集中して、もう少し溜め込んでから出すんだ。」

 ワルターが、意地悪そうに笑った。


「ちっ、分かったよ!」

 キャスは、舌打ちすると、また構えた。

 今度は、ワルターの言う通りに剣を振った。



「すげぇ。」

 チコが、思わず呟いた。


 振り抜いた剣は、光りだけでなく、炎もまとい異形を切り裂き、跡形もなく消滅させた。

 先程は、切り裂き損ねた異形がいたが、今回は、地面に伏せた異形さえも炎に巻きこみ消滅させていた。



「どうだい、初めては?」

 ワルターの言葉に、キャスは振り返る。


「…最っ高!」

 キャスは、目を輝かせた。


「しかし、限度ってもんがあるからな。使い過ぎに注意だ、坊や!」



 ワルターが剣を抜くと皆、剣を抜いた。




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