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誓いの果て  作者: のの
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42/77

西へ

 ベリンガーは、まず隣国イリヤに向かった。


 コッツウォートの第一所領にあった地下道を通ったため、ベリンガーは馬を連れて出られなかったのだ。


 コッツウォートからイリヤは、非常に近い距離だ。


 だが、国交としては、あまり良好とは言えなかった。


 コッツウォートが、宝石、鉱石などの商売相手にならなかったからだ。

 イリヤの国王は、コッツウォートを、木にばかり興味を示す、保守的な国と嫌っていた。

 しかし、イリヤの国民は、コッツウォートの果実や果実酒、家具を好んで買っていた。


 イリヤの西への対応は、無いに等しかった。

 イリヤには、魔術師はいなかったので、キッセンベリから通達は来なかったし、イリヤは、小国で軍は、自国を守るためのもので、遠征なることを想定していなかった。


 イリヤの街は、コッツウォートとは対称的だ。

 店に入るには、気後れする。

 宝飾品のお店ばかりが建ち並び、ショーウィンドウの前に立つ者達がちらほら見かけられるが、イリヤに来る他国の者達は、ほとんど問屋街にいる。


 ベリンガーも、問屋街に向かう。

 その方が、怪しまれないし、知り合いも問屋街に多かった。


 ベリンガーは、旧友のいる事務所の扉を開ける。

 中に入ると2人の男達が立ちはだかる。

「てめぇに、売るもんなんかないぜ!」

 男がベリンガーに詰め寄り、にらみ会う。


 突然、詰め寄った男が吹き出した。


「久しぶりだな。フィル!」

 男は、ベリンガーの肩を軽く叩く。


「ああ、元気か?ギル。」

 ギルは、リメルナの傭兵だ。


 問屋街で買い付けをした者は、自国に帰るまでの護衛を雇う。

 自分達で自警することも出来るが、リメルナの傭兵を雇うほうが、金は高くついても、安全は確実だ。


 リメルナの傭兵は、元盗賊だけあって容赦がなかった。


 と言われているが、普段の彼らは気の良い奴らが多かった。

 ベリンガーの感じでは、盗賊ではなく、それぞれが訳あって自国を出た元騎士なのではないかと思われた。


 そんな気の良い奴、ギルと後で酒を飲む約束をして、事務所の奥に進む。



「なんだ、珍しい人がいるなぁ。店はどうした?」

 ベリンガーが、思わず声をかける。


「あぁ、お宝をキッセンベリの小僧に、買い占められねぇように、西を回るんだよ!」

 白髪が混ざった頭を掻きながら、男は、ホコリまみれの本をベリンガーに振って見せる。


「店は、しばらくフレールの小僧に見させているよ。どうせ、暇だろうし、魔術の勉強もしたいだろう。女遊びは程々にしろよと言っておいたぞ。ご先祖様が嘆く!」


「ジャイル、この後話せないか?ギルも来る。」


「あぁ、明日出るから、構わねぇよ。情報共有だな。いつもの店でな。」

 ジャイルは、手を振り事務所を後にした。


 ベリンガーは、事務所の奥にある開け放たれた扉をノックした。

 中の女性が、書類から顔を上げる。


「いらっしゃい。大変なことになっているわね。」

 女性は立ち上がり、仕事をしていたデスクを離れた。


 イリヤの女性は、他の国とは、だいぶ違っていた。

 仕事や服装、髪型、恋愛、どれも他国の男達を驚かす。

 これだけ女性が自立している国はない。

 ベリンガーが会いに来た女性も、大きめなフリルのついたブラウスに、タイトな長めのマーメイドスカート、高いヒールの靴で、ベリンガーの元にやって来て、抱きしめた。


「あなたは、顔が知られていないからまだ、動けるけど、コッツウォートから手配書が届いているわ。名前を出さないように注意して。あまり長居することもお勧めできないわね。他国も、サンゼベリア以外は、立ち寄らないことね。」


「ありがとう、エレイン。そうするつもりだ。サンゼベリアに向かいたいんだが、足が無くてね。馬を貸してもらえないだろうか?明日、出発する。」


「分かったわ。」

 エレインは、お財布から、鍵を出してベリンガーの顔の前で揺らす。


「ちゃんと寝なさい。ひどい顔してるわよ。」

 エレインは、ベリンガーの頬を軽く叩く。


「ありがとう。これからジャイルに会って情報共有したら、寝させてもらうよ。」


「父も、西を回るつもりなのよ。本のために!」

 エレインは、お手上げとばかりに両手を上げ、呆れ顔をする。

 エレインは、ジャイルの1人娘だ。


「趣味のために、お金や時間、情熱を注ぎこんでるのさ。」

 ベリンガーは諭すように話す。


「西は今、危険なのよ。自分が魔術使える訳でもないのに!魔術書なんて!」


「それでも、譲れないほど好きなのさ!分かってやってくれよ。それにキッセンベリの国王に渡るより、よっぽど良いだろう。」


「まったく、あなたを恋愛対象に見れないのは、父よりだからかしら?」


「グレアムはどうした?」


「王子様とは、進展なんて無いわ。お互い楽しんだだけ。お城にずっと閉じ込められるなんて、私には無理ね。」

 エレインは、少し寂しそうな顔を見せた。


「…そうか。君も、早めにイリヤを出たほうが良い。できれば、フレールより先ぐらいには…」

 エレインは魔術師ではないが、戦いに巻き込まれないように、出来るだけ遠くに行ってほしかった。


「分かってる。ちょうどフレールの先の東に仕事の拠点を作るつもりで物件を買ってたの。向こうが整い次第、社員の家族ごと、順次、移るつもりよ。」


「うん。良かった。護衛は?」


「王子様が、たくさんの護衛をつけてくれるそうよ。」


「愛されてるじゃないか。」


「ビジネスよ。分かってるの。…でも、少しは愛してくれていたのかな。…あの人も、なんか色々抱えているんでしょうね。私は、東で、良い男を見つけるわよ。」

 エレインは、吹っ切れたように、話しを終わらせる。


「フィル。気をつけてね。」

 最後にお互いの無事を祈って別れた。



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