禁術
ベリンガーは、深く息を吐き出す。
「私は、その後、西に向かった。」
ベリンガーは、第一所領の謎の地下道を通り抜けコッツウォートを出た。
ベリンガーは、コッツウォートを出るまでを話すとテオグラートを見た。
テオグラートは、頷くとキリウェル達を見た。
「私は、その後、殿下にキアラ様の死とベリンガー殿の指名手配、キリウェルの謹慎を伝えました。」
大将が呟いた。
「大将には、つらい役目をさせてしまったね。」
テオグラートは、大将を見る。
「側仕えの者達が、みんな足早に部屋を出てしまうから、教えてもらえなくて。大将を呼んだんだ。」
テオグラートは、すまなそうに話した。
テオグラートは、大将に話しを聞いた時、大泣きした。
大将の大きな体が、テオグラートの悲しい気持ちを受け止め、次へ進ませてくれたのかもしれない。
「母上が亡くなったことは、すごくつらいことだったけど、大将に、キリウェルがとても危険な状況に陥っていると聞いて、急いで父上の元へキリウェルの陳情に向かったんだ。」
キリウェルは、処刑も覚悟していた。
王子を1人で外に出すなど、前代未聞だった。
「まったく情けないことでした。」
キリウェルは、頭を下げた。
「その話しは、もう終わったでしょ。」
テオグラートとキリウェルは、その事について、お互いに謝り、これからのことを良く話し合っていた。
「先生、そのラザフって人は、何者なの?」
テオグラートは、ベリンガーに向き合った。
「私の教え子だ。だが、あの時、ラザフは、そう…、まるで違う人物だった。目が赤くなり、感情の無い顔は知っているのにまるで知らない人のようで…。」
「目の赤い魔術師なら、フレールに着く前にも出くわした。俺は至近距離であいつの顔を見たからな。」
サミーが身を乗り出すように話す。
殺されかけたことを思い出し、温厚な顔が険しくなる。
「禁術かもしれないな。キッセンベリの国王は、かなり古い魔術書を探していたらしいから、人間を動物に変えたり、人の心を乗っ取ったり、あらゆる禁術を手に入れたのかもしれない。」
ベリンガーは、深いため息を吐いた。
「先生、キリウェル達の禁術は、解除出来る?人数が多いし、もしかしたら、まだ、第三所領にも居るかもしれない。」
「あぁ、ラザフのことがあったから、禁術の解除が必要になるだろうと思って、この石をイリヤ国王の護衛代として、受け取ったのさ。だから、数は大丈夫だろう。」
ベリンガーは、少しだけ笑顔を見せた。
「だが、解除魔術を使うと、動けるまで時間がかかる。大将、どうだい体は?」
「あぁ、脱力感が凄いな。だが、だいぶ良くなった。」
大将が答えると、キリウェルが詰め寄る。
「本当に、お前を信じていいんだろうな!」
「テオグラートに誓って。」
キリウェルは、ベリンガーを睨み付けた。
テオグラートに誓ってと言われては何も言えない。
「俺達は、明後日の朝には、フレールを出発し、コッツウォートに向かう。」
あまり時間がない。
アディが、テオグラートに膝を付く。
「殿下、ご指示を。」
「うん。先生、お願い。」
ベリンガーは、頷いた。
「3グループに分けてくれ。」
キリウェルは、まだ信用ならないと、ベリンガーを睨んだまま、指示を出した。
アディとサミーは、最初のグループに入った。コッツウォートへ向けての準備などを考えて早く体力を回復したかった。
本当は、キリウェルも最初のグループに入りたかったが、大将に2番目のグループにしてくれと頼まれた。
アディやサミーは、カイやミッヒ達に、動けない間のあれこれを指示し、向かわせた。
魔術を解除した後、動かすのが大変なので、床にマットレスを敷き、すぐさま休めるように整え、8人が部屋に集まった。
8人のほかに、テオグラート、ベリンガー、大将がいる。
大将は、キリウェルにも立ち会うよう伝えた。
ベリンガーが、8人に解除魔術をかける。
黄金色の石は、ベリンガーの手から浮き、綺麗に光ると8人それぞれの前で、光輝き体を包んだ。
急にアディが膝まずく。
「くそ、大将っ!嘘つきやがったな!」
アディが苦しそうに、大将を見る。
「ビビりのお前らが、逃げ出さないようにと思ってな。」
大将が、びっくりしているテオグラートの背中を軽く叩きながら、大きな声で笑った。
「体が痛っー!」
サミーが泣き言を言う。
他の者達も、膝をつきうめき声をあげている。
「本当に大丈夫なのか!」
キリウェルが、ベリンガーに詰め寄る。
大将が間に入る。
「キリウェルの場合は、ちゃんと教えておかないとベリンガー殿を殺しかねない。だから最初ではなく、次のグループにしてもらったんだ。」
大将は、テオグラートにウィンクをして、また笑ってる。
「俺も、お前を殺しかねねぇよ!くそ痛っー。」
アディがうずくまって悶絶している。
「禁術だけあって、体にかなりの不可がかかるんだ。大将、よく耐えられたな?」
ベリンガーが感心するように大将を見る。
「大将なだけはあるだろう。」
また、大将は大笑いしている。
「僕も、この術覚えられる?」
テオグラートは、ベリンガーに尋ねる。
「簡単には、無理かな。今は、マークやロぜも使える。リメルナに行けばもっと多くの魔術師達が使えるから、安心してほしい。もちろんテオにも教えたいよ。」
ベリンガーは、先生として答えた。
次のグループまでの時間、ベリンガーは、テオグラートに、西に向かった話しを始めた。
ソファに座り、大将やキリウェル、マークやロゼも加わった。
西の情報は少ないので、非常に興味があった。




