悲しい別れ
キアラは、ベリンガーにコッツウォートを出ることが出来ないと伝えに行かなければならなかった。
待ち合わせは、教会で、そこから第一所領に向かい、ベリンガーの教え子ラザフが見つけたと言うなぞの地下道を通るらしい。
窓がノックされ、見知らぬ男が入って来た。
キアラは、人を呼ぼうとした。
「ラザフです。先生から迎えに行くよう言われて来ました。」
キアラは、ホッと息をはいた。
「あの人に伝えて。私達はまだコッツウォートを出ることが出来ないから、先に行って!頃合いをみて必ず行くから。」
「なぜです?私達を見捨てるのですか!」
ラザフに強く腕を掴まれた。
「見捨てるわけない!私は、故郷に両親がいるのよ!」
ラザフの腕を振り払おうとしたが出来なかった。力は強くなるばかりだった。
「離して!」
「あなたは分かってない!事態はもっと深刻だ。」
声音が変わる。
ラザフの目が赤くなっていく。
キアラは、悲鳴をあげた。
ラザフは、感情のない平坦な声で話しかける。
「お前の両親は、すでに我が手中にある。」
「どういうこと!あなた誰!」
キアラは、驚愕の顔でラザフを見た。
「我が名は、ガスケ。キッセンベリ国王に使える魔術師。」
「キアラ!テオが…」
扉が開き、ベリンガーが駆け込んでくる。
ラザフの様子に違和感を感じた瞬間、ベリンガーは魔術でラザフの腕を攻撃した。
同時に、ベリンガーは、廊下まで飛ばされ背中を強打する。
「フィル!」
キアラは、ベリンガーに駆け寄る。
「…大丈夫だ。」
立ち上がりかけた瞬間、侍女の悲鳴が響いた。
「誰か来て!」
侍女が、人を呼びに走って行く。
ベリンガーは、侍女が走り去った方角から、キアラを見る。
キアラの後ろには、赤い目をしたラザフが剣を持ち立っていた。
「キアラ!危ない!」
キアラの真後ろにラザフがいたため、ベリンガーは魔術を使うことが出来なかった。
キアラの体から剣がつきだしていた。
キアラの口が言葉を発しようとして、血が溢れる。
剣が引き抜かれ、膝を付き、倒れ込むキアラをベリンガーが抱き止める。
「利用できない魔術師は、殺すのみ。」
ラザフが、ラザフではない声音で呟く。
辺りが騒がしくなる。
ラザフは中庭へ出ていく。
「待て!」
ベリンガーは、キアラを抱きしめたまま、叫んだ。
「…フィル」
キアラの小さな声に、ベリンガーは愛しそうに顔を撫でる。
「テオは…」
ベリンガーは、テオグラートが重症をおって王宮に運び込まれたことを伝えにきたが、伝えるのを止めた。
「…大丈夫だ。」
「テオと逃げてね。愛してると伝えて。」キアラは、囁く。
「分かった。ちゃんと伝える。」
ベリンガーは、キアラを抱きしめる。
「あなたを愛してる。」
キアラは、ベリンガーの耳元で囁き、そのまま息を引き取った。
ベリンガーは、むせび泣いた。
キアラの額に口づけすると、泣きながらラザフを追いかけるため、中庭に走り出した。




