守らなければならない人
テオグラートは、獣道を通り第三所領へ戻る途中、うずくまる男を見つけた。
テオグラートは、馬を降り男に駆け寄った。
「大丈夫ですか?」
テオグラートは、声をかけた瞬間、衝撃が襲った。
何が起こったのか一瞬分からなかった。
気がついたら、地面に倒れていた。
じわりと顔に痛みが湧き、殴られたと分かった。
テオグラートは、立ち上がろうとしたが、今度は腹に蹴りを入れられ草むらに仰向けに転がった。
ひどい痛みで顔が歪んだ。
男が馬乗りになった。
「へぇー、これがコッツウォートの王子様のお顔か。初めて見たよ。けっこう可愛い顔してんじゃん。殺すのもったいねぇーなー。」
男は、テオグラートの頬をベロリと舐めると、体を起こした。
「くそ、もったいねぇな。売り飛ばせばけっこう高値で売れんじゃねぇ。他国の王子様なら顔なんて分からねぇだろうし。あー、くそ、ちょっと楽しんでから殺すか。」
男の顔が、テオグラートの顔に近づいた時、男が叫んだ。
「痛ってぇー!」
男の太ももに、テオグラートのナイフが刺さっていた。
テオグラートは、力いっぱい押して男の体から逃れた。
「こんのくそガキ!」
男は逆上してテオグラートに掴みかかった。
テオグラートは、剣を抜いていたが男があまりに近すぎて剣を使えなかった。
男に殴られ、また倒れ込むと男は、剣を持つテオグラートの手をおもいっきり踏みつける。
テオグラートは、痛さで剣を離してしまった。
「使えねぇーオモチャ振り回してんじゃねぇよ!くそガキ。」
男は、テオグラートを何度も殴り付ける。
ぐったりとしたテオグラートを殴るのを止め、馬乗りになったまま男は笑った。
「剣なんて、偉そうに持ちやがって!ぜんぜんダメじゃねぇか。ろくな奴に教わってねぇな。」
男は、のけぞって大笑いした。
次の瞬間、また男は叫んだ。
テオグラートは、泣きながら男の手に噛みついていた。
手を噛み千切らんばかりのテオグラートをまた殴るとぐったりとした。
男は、息を切らせながらテオグラートの首を絞める。
今度こそと思った瞬間、また男が叫び声をあげ、横に倒れこんだ。
男の左腕には、手入れのされていないボロボロの矢が刺さっていた。
「なんなんだよ、くそ!」
男が上半身をあげると頭のそばを矢が通りすぎた。
男は慌てて草むらに逃げ込み、這いつくばって森に入って行った。
テオグラートは、朦朧としていた。
遠くから、キリウェルが呼んだ気がした。
テオグラートは、自分を起こそうとする手を払い除けようともがいた。
殺されるわけにはいかない。
キリウェルが近くまで来てくれてるかも知れない。
生きて謝りたい。
キリウェルのせいではない。
勝手に1人で出た自分が悪い。
誰もキリウェルを責めないでほしい!
生きて、キリウェルを守らないと。
テオグラートは、生きて帰ろうともがいたが、力尽き気を失った。
キリウェルに抱きしめられたまま。




