母と子
テオグラートは、ベッドに突っ伏し部屋に籠っていた。
しつこく話を聞こうとするキリウェルに何でも無いと伝え追い出した。
部屋をノックする音と共に母の呼ぶ声がした。
返事をしなかったのに、母は勝手に入ってきてベッドに腰かけ、突っ伏しているテオグラートの頭を撫でる。
「テオ、ごめんなさい…」
キアラは、言葉が出てこなかった。
「…先生は、好きだよ。父親のように思えることもあるよ。ても、違う!」
テオグラートには、父親が遠い存在だった。国王であるがゆえの遠い存在だった。
だが、それが嫌悪になることはなかった。
認めて貰えるように領主としての勉強をして考え、国王である父親に会いに行っているのに、一番身近な母親が、父親だけでなく、自分をも裏切った。
「テオ、私はコッツウォートを出るわ…。」
キアラの言葉に、テオグラートは跳ね起きる。
「ダメ。出ていかないで!」
テオグラートは、母親に抱きつく。
「先生を追放する。そうすれば父上にも知られないし、噂も消えるよ!」
キアラは、テオグラートの頭を撫でる。
「テオ、ごめんなさいね。そう言う問題ではないの。私はあの人も、テオも守りたいの。だから私と一緒にコッツウォートを出てほしいの。」
「分からない!なんでそうなるの?」
キアラは、西側のこと、魔術師や魔術師である両親と連絡が取れないこと、ベリンガーの教え子ラザフが今来ていることを話し、テオグラートにも危険が迫るかもしれないことを伝えた。
テオグラートは、キアラに抱きついたまま聞いていた。
「テオ…。」
返事のないテオグラートに呼びかける。
テオグラートは、ゆっくり体を起こした。
「…母上。」
テオグラートは、母親の目を見て話し始めた。
「僕は、コッツウォートを離れない。母上と同じように僕を支えてくれる人達がいるし、僕には領主として守る民達がいるから。」
テオグラートは、泣きはらした目をしていたが、しっかりとキアラを見て伝えた。
キアラは、驚いていた。
さっきまで幼児のようだったテオグラートは、きっぱりと自分の意見を話し、行動しようとしていた。
領主として、気遣いを忘れぬように、キアラも再三話しをしていたが、自覚はしっかりと出来ていたようだ。
キアラは、誇らしい気持ちになったが、今は逆に説得は難しくなってしまった。
しかし、コッツウォートに置いて行きたくなかった。
「分かったわ。でも私は西側に行きたいの。まずは、私をエメラルに送ってほしい。」
キアラは、とにかくテオグラートをコッツウォートから出したかった。
「西側は危険なんでしょう!だからダメ!」
「それなら西側に行くのは、考えるわ。とにかくエメラルに送って!あなたが送ってくれるなら国王の許可も下りるわ。」
テオグラートは、渋々承諾した。
エメラルに着くまでに、母親を説得するつもりだった。
そして、キアラもまた、同じようにエメラルでテオグラートをつなぎ止めようとしていた。




