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誓いの果て  作者: のの
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34/77

2年前 テオグラート

 ***2年前 ***


「母上!王宮に行って参ります。」

 テオグラートが、母キアラに挨拶をしに来た。


「王宮へ!なぜ!」

 キアラ妃は驚いたように、テオグラートに駆け寄る。


「母上?定例の報告会議ですよ。」

 テオグラートは、優しく話す。


「あぁ、ごめんなさい。そうだったわね。」


 最近、母上が上の空で色々なことを忘れているようだ。


「母上、どこか体調が優れないのですか?お医者様を呼びましょうか?」


「いいえ、大丈夫よ。心配させてしまったわね。」

 キアラは、優しくテオグラートの頬にキスをする。


「そういえば、キリウェル、お花をありがとう。貴方にも心配をさせていたのね。」


「いえ。我が家の花ですので、気分転換にと。」

 キリウェルは、頭をたれる。


 テオグラートは、母の頬に優しくキスする。


「行って参ります。」


「キリウェル、テオグラートを頼みます。」


 テオグラートは、キリウェルと一緒に部屋を出た。


「最近、母上はなんだか落ち着かないな。心配ごとでもあるのかな。」


「私も心配です。私には、ベリンガーが何か吹き込んでいるのではないかと。」


「先生が?」

 テオグラートは、先生に限ってそんなことは無いだろと思ったが、別の噂が耳に入っていたので、いつかは聞かなければならない事があった。

 ありえない噂で、子供としてはとても聞きづらいが、万が一王宮にまで噂が上れば、父上が動きだしかねない。

 そうなれば、母上も先生も庇いきれない。


「はぁ~。」

 テオグラートは、ため息をついた。


「テオグラート様?」


「ううん、何でもない。王宮へ急ごう。」

 キリウェルは、噂を知っているのかな?こういった話しはアディやサミーのほうが話しやすいな。大将の他にアディかサミーが来ていると良いけど。



「いない。」


「誰がですか?」

 外で待っていた大将が、不思議そうに見る。


「色恋沙汰に詳しそうな人。」

 テオグラートは、小声で呟く。


「アディやサミーなら、警護で、エメラルに行くよう 殿下 がご命令されましたよ。」


「そうだった。」


 大将が楽しそうに、かが見込んでテオグラートを覗き混む。

「殿下、どこぞの娘ですかな?」


「僕じゃないよ!」

 大将がまったく見当違いなことを言ってくる。


 とにかくテオグラートは、王宮に向かうことにした。




 王宮での会議や家族の軽いお茶会もつつがなく終わり、テオグラートは、自分の所領に戻ろうとしていた。


「テオグラート。おいで。」

 第一王子のエドモントに、声をかけられる。

 キリウェル達を待たせて、兄について行くと、兄は客を待たせる控えの間に入り、ソファに腰かけ足を組むと、ソファを軽く叩き、ここへ座るようそくされる。


「11才のお前にこんな話しはどうかと思うが、お前の母親の話しだから単刀直入に話すぞ。」

 14才年上の兄に、母親のことと言われテオグラートは緊張した。


「お前の母親が、誰かと浮気をしていると噂を聞いた。まぁ、町の女、あ~、いや、町の庶民の下世話な噂話だ。」

 兄はあたふたとしながら、話しを進める。

 エドモントは、貴族の女だけでは飽き足らず、庶民にまで手を出し始めていた。


「いいか、例え嘘の噂だとしても、王室の権威がある。父上に知れたら例え真実で無くとも相手の男は、何らかの罪を被せられ死刑にされ、お前の母親もただではすまん。早いうちに手を打て。いいな。」

 エドモントは、話しを終えると足早に部屋を出ていった。


 噂は、第三所領を出てしまっていた。


 テオグラートが部屋を出ると、リルがヴァルを従え歩いてくる。

 テオグラートは、リルの腕を掴むと控えの間に連れて行く。

 リルは、ヴァルにそこで待つよう手で制した。


 テオグラートは、ソファに座り、ソファを軽く叩く。


「なんだ。」

 リルは、不機嫌そうに立ったままだ。


「兄上、あの、あ~、…その、う~ん。」

 テオグラートは、どう話したらよいか悩んでいた。


「時間がない。早く言え。」

 リルは、腕組みをして睨んでいる。


「あ~、とても重要で、込み入った話しをしたいけど、どちらと話すべきか悩んでいて…。」


「誰と誰だ。」

 リルは呆れながら聞く。


「あ~、…男と女。」


 リルはため息をついた。

「話しにくいと言うならば、同性を選ぶだろうな。男に聞いて、女にも聞く。」


「さすが兄上!」

 なんだか吹っ切れたテオグラートは、礼を言うと急ぎ部屋を出てキリウェルを連れて歩き出した。


 リルも部屋を出る。

 ヴァルが後ろに控える。

「どちらでしたか?」


「あの様子からすれば、ベリンガーだな。まぁ、キリウェルでは、誓いを立てた主の母親には手を出さないだろうな。」


「義理堅いですな。」


 リルは、ヴァルをじっと見る。


「何でしょう?」


「何でもない。行くぞ。」

 リルも、キアラ妃の噂をヴァルから聞いていた。


 ヴァルは、相手がどちらかと思っていたが、ベリンガーなら利用できる。

 ヴァルは、リルの後ろ姿を見ながら考えを巡らせた。



 テオグラートは、第三所領に戻るとベリンガーを呼ぶよう申し付ける。

 急がなければならない。

 噂を消すためにも、一時、先生にエメラルにでも行ってもらうとか、フレールでも良いかな。

 なんとか二人をしばらく離せば、つまらない噂など消えるに決まっている。

 テオグラートは、つまらない噂程度に考えていた。


 ほどなくして、ベリンガーが現れた。


「先生、ここに座って!」

 自分の横に座るよう、ソファをポンポンと叩く。


「殿下。どうされました。課題は終わりましたか?」

 テオグラートは、魔術の取得に関する課題を言われていた。


「あ~、それはまだだよ!定例会議の報告とか仕事が忙しいって言ったでしょう。それに二人だけのときは、堅苦しい呼び方もいらないよ。」


「分かりました。テオ。」

 ベリンガーは、人懐っこいテオグラートに、思わず笑みがこぼれる。

 ベリンガーは、テオグラートの横に座る。


「先生、すごく馬鹿みたいな話しをするね。」

 テオグラートは、この話しをベリンガーに笑い飛ばして欲しかった。


「先生と母上がね、…浮気してるんじゃないかって噂がでてるの。」


 何も返答がないので、ベリンガーを見る。


「先生、違うよね?」

 テオグラートは、恐る恐る聞く。


「テオ、お前は、まだ幼いから私達のことは理解できないかも知れない。ただ、私はキアラもテオもとても愛してる。」

 ベリンガーの手が、テオグラートの頭を撫でようとしている。

 テオグラートは、身を引いた。


「もう、聞きたくない。」

 テオグラートは、下を向いて呟く。


「テオ、色々事情がある。私達の故郷、西の噂は知っているよな。」

 キアラとベリンガーは、西の出身だ。

 同国ではないが、同じ西側の情勢が大きく変わろうとしていることに、懸念を抱いていた。


「そんなこと僕が聞いたことと違う。」

 テオグラートは、声を荒げはじめた。


 ベリンガーは、テオグラートの肩をつかみ、理解を求めようと揺さぶる。

「西へ向かおうと思っている。キアラとテオも一緒に!」


 テオグラートは、驚愕の表情を浮かべる。


 テオグラートは、母から祖父母に会わせたいから、故郷であるサンゼベリア国に行こうと最近何度か言われていた。

 だが、ベリンガーの言う、西に向かうは、どう考えてもコッツウォートを捨てることだ。


「何を言っているの。僕はコッツウォートを出たくない!」


「西の果てキッセンベリからの使者が来たはずだ!西側から来た魔術師をすべて返すよう。キアラも含めて。」


「知らない。父上はそんなことは言っていなかった!」


「隠しているだけだ。キッセンベリは、返さなければ軍を出すと言っている。我々は、囚われる前にコッツウォートを出たい。」

 テオグラートは、ベリンガーが怖かった。


「離して!」

 テオグラートは、一刻も早く部屋から出たかった。



「テオグラート様!」

 キリウェルが、勢いよく扉を開けて入って来た。

 すぐさま剣を抜き、構える。


「何もしてない。話しをしていただけだ。」

 ベリンガーは、テオグラートを離した。


 テオグラートは、一目散に部屋を出ていった。


「テオグラート様!ベリンガー、お前には後から話しを聞く、そこで待っていろ!」

 キリウェルは、ベリンガーを睨んだが、テオグラートが心配で後を追いかけることにした。



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