クラウス王子
クラウス王子は、リリアーナの無事に心底ホッとしいた。
コッツウォートから戻り、国王に報告するや否や今までに受けたことの無い叱責を受け、部屋で謹慎するよう命じられた。
キャスの屋敷に来られたのは、国王の父親としての配慮で、クラウスが許された訳ではなかった。
クラウスは、不甲斐ないままでは居られなかった。
キャスを説得して、西の脅威に対抗する軍を指揮し、名誉を挽回したかった。
キャスは、長年の付き合いでクラウスが考えていることを察していた。
だが、軍を動かすのは大変な労力になるだろうと感じていた。
コッツウォートに派遣された軍の報告とクラウスの報告はすでに知れ渡っていた。
西の脅威は、盗賊討伐や国と国の戦いなどとはまったく違うものだ。
二の足を踏む者も多いだろうと考えた。
何やらフレールの人達が物思いに耽ってしまったので、テオグラートは疑問に思ったことをリリアーナに聞いてみた。
「リリアーナは、なんで師団長のキャスのことを知らなかったの?」
「良くは知らないのだけど、師団長は、私達が居住とする所は出入り禁止らしいの。お兄様が言うには大人の事情があるんですって。」
リリアーナは、小首をかしげた。
「ふ~ん、そうなんだ。」
アディとサミーは、テオグラートの「そうなんだ」が、分かっている「そうなんだ」か、リリアーナと同じ「そうなんだ」なのか、頭を悩ませ、キリウェルを見た。
キリウェルは、二人がなぜ自分を見ているのか不思議そうにしていた。
キャスは、その件については、我関せずと知らんぷりしていた。
クラウスは、自分のことで頭がいっぱいで聞いていなかった。
テオグラートは、そろそろ国王への謁見に向かいたかった。
他国に来て挨拶にも訪れない不敬はしたくなかったので、意を決してクラウス王子に国王への謁見を頼んだ。




