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誓いの果て  作者: のの
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28/77

キャス

 テオグラート一行は、ひどい疲弊のため、フレール国に入るにあたって、なるべくひと休みしてからリリアーナを王宮に連れていきたかった。

 コッツウォートの王子が、お忍びとはいえ訪れたのであれば、国王との謁見やら、パーティーやら、お茶会やら王宮を引き回されかねない。

 アディも前回、フレールを訪れた際の目の回る忙しさを思い出して辟易していた。


 あの時は、殿下が6才と可愛かったから本当に大変だった。

 どこに行っても、キャーキャー、ワーワー、人が寄ってきて。

 まぁ、女が多くて良い思いもしたが、今は思考回路が全く機能しねぇ。

 アディは、爆睡したかったし、みんなも同じだろうと考えていた。

 しかし、フレールの伝は無い。

 リリアーナ、キャス、旅慣れているロゼとマークに頼るしかない。

 キャスと話していた大将のところに馬を寄せる。


 大将は、なぜアディが来たのか察して話し始めた。

「我々に、伝は無い。それに彼は道中のことも考慮してくれていた。俺は彼に任せることにしたよ。殿下にも許可をもらった。キリウェルは、気が進まないみたいだが、殿下に押しきられていたよ。こういう時の殿下は、嗅覚が優れているからな。俺は信じるよ。殿下を。」


 アディは、キャスのもとに行く大将の背中を見送った。





 テオグラート一行は、フレールの町並みを拍子抜けした状態で進んでいた。


 フレールの町は、西の脅威などいささかも感じさせない平穏で、華やかな町のままだった。


 王宮まで続く大きく長い道は、のどかな平地から、少しずつ小さな町が現れ、華やかな城下町に辿り着いても、大所帯の馬車が通れるほどの大きな通りを有していた。

 王都、第一所領、第二所領の分岐点から外へ小さく扇状に広がる大通りしか持たないコッツウォートとは、比べものにならない国土だった。


 行き交う人達は、薄汚れたテオグラート一行に、目を向けるも、すぐ側にキャスがいるのを見ると何事もないように通り過ぎる。

 門衛や、三回ほど、衛兵とも遭遇したが、皆、キャスに敬礼するのみで素通りでき、何より驚いたことは、キャスがいるだけでどこでも、なんでも許可されることだった。


 テオグラート一行は、キャスの屋敷に泊まらせてもらうことになったが、キャスの正体に困惑していた。


 キャスの屋敷は、郊外に建つ大きな屋敷だった。質素だが品の良い屋敷は、キャスの見た目とは真逆な印象だ。


 屋敷に入ってすぐ、風呂やら寝床の準備の指示をしてくれたおかげで、正午を過ぎる頃にはすっきりと身支度が出来た。


 テオグラートは、リリアーナを連れて王宮に向かおうとしているところへ、大声でキャスを探す男が入って来た。


「リリアーナ!」

 男はリリアーナを強く抱きしめた。

「すまなかった。助けられなかった私を許してほしい。」


「お兄様!お兄様こそ、ご無事で良かった。」

 リリアーナも強く抱きしめ、互いの無事を喜びあった。

 男はリリアーナの兄、フレール国のクラウス王子だ。


「なんだよ!部屋で謹慎させられてたんじゃないのかよ!」

 王子への発言とは思えないキャスの厳しい発言を、キリウェル達は驚愕な顔で見つめていた。


「確かに、ひどい有り様だったよ。不用意に敵がいるところへ入ってしまって。」

 クラウスは、怒ることもなく、反省を見せた。


「本当だよ!何人死んだと思ってんだ!挙げ句に妹置いて帰りやがって!こいつらに、たっぷり礼をするんだな!」

 キャスは、テオグラート達を指差して、クラウス王子を叱った。


 テオグラートは、少々居たたまれない気がして、一歩前に出て、気遣うように挨拶をした。


 クラウス王子について、実直な印象を受けたテオグラートは、フレールの今の近況や今後のことを聞く事にした。

 そしてキャスについても、彼にとても助けてもらった事、まだキャスについて何も知らないので、今さらだが紹介してほしいと伝えた。


 キャスは、フレール国で若くして近衛師団長になった男だった。

 テオグラートは、凄く驚いた。

 コッツウォートにも、当然、近衛師団はある。

 エリート部隊で、身分だけでなく、武勲も相当必要で、キャスぐらいの年齢の者が師団長になるなど有り得なかった。


 師団長ならば、なんでもありかとアディ達は納得したが、しかし、それでもこの大きな国で、キャスが師団長ってのが信じかたいアディ達だった。



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