宝箱の正体
迷宮は蟻の巣のようにいりくんでいて、やつから身を隠すのにはいいだろう。気配遮断も使って、より見つかりにくくなっているはずだ。俺達は適当に道を進んでいく
「はぁはぁ、ちょっと休憩...よいしょっと」
俺達は今三つの道が交差しているところにいる。ここなら敵がきても逃げられる。それに走るのが限界ってのもある。歩くのも正直つらい。ずっと休まず無我夢中で走り続けたんだ、しょうがない
少女を背中からゆっくりとおろし座らせる。そのあとに俺も腰をおろした
「そういえば名前まだ聞いてなったな。俺はタクマだ」
「私はテイラといいます。タクマ様というんですね」
「様はやめてくれ、タクマでいいよ」
「そうはいきません。奴隷が呼び捨てなんて」
「ん?奴隷って?」
「私です...これが証拠です」
そういってテイラは首に嵌めている首輪に手を触れる
「私は奴隷商人さんの馬車に乗っていたのですが、その馬車が盗賊に襲われて...」
テイラの話をまとめるとこうだ。テイラは小さな村出身で貧しかったらしい。ある時、雨が降らなくなって作物の収穫が減り仕方なく何の役にも立たないテイラを売ったそうだ。テイラ自身も二つ返事で了承したそうだ
その後、村に奴隷商人が訪ねてきて、馬車で街にむかっていた最中に盗賊に襲われたということらしい
「私以外にも奴隷がいたんですけど...」
「その奴隷たちは?」
「盗賊の方とこの迷宮の中に入っていきました。私は邪魔にしかならないと言われて、扉の前で待っていました...」
「ということは、盗賊は他にもいたってことか...」
おそらく、洞窟の中からでてきた盗賊はテイラの見張り役だったってことか...いや歩けないんだから見張る必要もない、ただのサボりだな
「さてと、そろそろ行きますかね。じゃあつかまって」
体力が回復したので先にすすむことにした。どこにむかってるのか分からないが...
テイラが俺の背中に乗ったを確かめてから歩みを進めた。ちなみに今の俺のステータスはこんな感じ
名前 タクマ・スズキ 18歳
レベル 12
種族 人族(男)
HP 600/600
MP 420/720
筋力 80
防御力 76
素早さ 64
魔力 100
魔法防御 134
〈ユニークスキル〉
・成長・全属性適正・アイテムボックス・並列思考
〈スキル〉
・火魔法level5・雷魔法level2・鑑定level6
・無詠唱・夜目・気配遮断level4
〈称号〉
・異世界人
まだMPは全回復していないが長居はしたくない。また適当に歩いて行くと下にいく階段を見つけた
「今更なんだが、迷宮ってどういう所か分かる?」
「一般的なことなら」
「そうか、何か分からないことがあったら聞くからよろしくな」
「はい!」
背中を掴んでいるテイラの手が強くなった。返事が今までで一番生き生きしていた。頼られたのがとても嬉しかったんだな
「頼りにしてるぞ」
テイラとの距離が近づいた気がして自分も嬉しく思いながら階段を降りていく
「ん?あれは何だ?」
階段を降りきり前を向くと奥に箱のようなものが薄らだが見えた。足を止めたまま目を細めていると背中のほうから声が聞こえた
「何かあったのですか?」
「薄らだけど奥に箱のようなものが見えてな」
「宝箱ですかね?迷宮には宝箱があって、中には武器やアイテムが入っているそうです」
「宝箱か、まーテンプレだな」
「テンプレ?」
「あーいや何でもないこっちの話だ」
宝箱があるところまで歩いて行く。宝箱の目の前まで行き鑑定してみる
名前 ミミック
レベル 32
種族 悪魔
HP820/820
MP120/120
筋力60
防御力80
素早さ120
魔法防御52
〈ユニークスキル〉
・偽装
〈スキル〉
・闇魔術level3
これって魔物だよな。向こうは気づいてないのか動こうとしない
俺はテイラを下に降ろしミミックに掌をむけた
「どうしたのですか?」
急に降ろされたテイラは不思議に思ったのか訪ねてきた
「偽物を排除しようと思ってな」
そう言っファイアーボールを発動し掌の前に火の玉が3つ出現した。火の玉はそのままミミックに向かって飛んでいき直撃した
【レベルが上がりました】
頭の中からそう聞こえてきた。ということはミミックを倒せたのだろう。あのまま倒れずに戦いになったらテイラを守りながら戦うことになっていただろう。そうならずに済んでよかったと思いながらテイラの元にむかう
「タクマ様は魔法が使えるのですか?」
「見えないのによく分かったね」
「耳がいいので」
音だけで魔法を発動したなんて分かるものなのか。テイラが耳がいいのは本当だろうが勘もいいのだろう。俺はテイラを背に乗せ歩みを進めた