再戦
不定期です
酒を飲みに居酒屋に入るもの、疲れを癒すために温泉に入りにいく物、宿泊している宿に向かっているもの。様々な目的をもって日が沈んだ後も街灯に照らされながら人の流れが絶えることはない。そんななか、水姫の祭壇にて誰にも気づかれぬよう気をつけながら踊っている少女の姿があった
「こんなんじゃダメ。もう時間がないのに」
約一月後にこの場所で「ミューリア祝賀武舞祭」が開催される。この祭りは水の神ミューリアに感謝するために年に一度開かれるお祭りでる。この祭りではこの地を治める領主より神へ感謝の言葉、そして踊子による舞を披露し、「言葉と体」全てで神に感謝を贈る。また、祭りに参加した者で希望者を募り、決闘させる催しがある。神が見ている場所で武を示し、安心して天界へ還れるようにという意味がある。そして最後に、その優勝者と、踊子のなかで、最も美しい舞を見せた者が表彰される。表彰された者はそれぞれ「水貴の剣王」「水祈の舞姫」の称号を得ることができる
彼女はそこで「水祈の舞姫」の称号を得ようとしていた。その称号を得ることはとても名誉なことであり、彼女にとってはそれ他にも特別な思いがあった
「邪魔だ...」
「すいません!!...ってあなたは?」
突然、背後から声を変えられた。ここを警備している人に見つかったと思い、すぐに慌てて振り返り謝罪しながら頭をさげるが、よく見ると汚れた服にフードを深くかぶって顔を見られないようにしている。明らかに警備の人ではないと分かった。以前、他の人にも見つかり声をかけられたことを思い出した。しかし声といい、恰好といい別人であるのはすぐに分かった
「邪魔だ...お前は邪魔だ」
小声で不気味なことを呟いている。本能だろうか、指先が細かく震えだし恐怖を覚えた。その時、あの男が話していた時の記憶蘇ってきた。
これは冒険者としての忠告だ
そうだ、彼は冒険者をしていると言っていた。そして、彼との会話のなかと、最近ちらほら街で耳にするようになった者の名前
「...吸血鬼」
そう呟いたときには、目の前に鋭い爪が迫っていた。恐怖で足が動かず、避けることすら出来ない。出来ることがあるとすれば、少しでも恐怖が和らぐよう目を瞑ることだけだった
みんなが寝息をたて、やっと一人で行動できるようになるまで時間がかかってしまった。何かを察したのかテイラがなかなか眠りについてくれなかった。重くなった瞼を必死に開き、大きな欠伸をしようとも最後まで寝たふりをしている俺から目を離すことはなかった
「よくやったフィクス」
「困ったときはこの私に任せなさい!!私はいつでもあなたの傍にいますからねア・ナ・タ」
「はいはい。無駄口叩いてないでさっさと行くぞ」
音を鳴らさぬよう慎重に行動し、夜の街へと出かける。転移魔法を使用せず、空中をかけながら吸血鬼が調べていた観光地に向かう。以前、吸血鬼と遭遇した場所が街中であったこともあり目的地に向かいながらも街に目を走らせる。今回も気配探知、魔力探知、気配遮断の発動を忘れない。またフィクスも探索に加わったことで、近くにいたら見逃すということはないだろう
「それでアナタ。最初はどこに行くのかしら?」
「そのアナタっていうのやめろ気持ち悪い」
協力してくれるのは有難いが、一緒にいると煩くて仕方がない。口数が多く寝ている時いがい、明るくとても元気がいい。学校のクラスにいたら人気者、いやムードメーカーだろうか。兎に角、周りに人が集まってくる性格だろう。しかし長時間そばにいて元気よく話かけられると、元々人との交流が少なかった俺にとってはエネルギー消費が高すぎる。また、俺をからかうような口調はさらにエネルギー消費を加速させる
「最初はここから一番近い水姫の祭壇だ。その次は蒼幻の泉かな。行ったことはないけど気配遮断があれば潜りこめるだろう。今なら店がしまって入浴してる奴がいないだろうし」
会話を続けていると、視界の先に目的地が見えてきた。スキルの効果範囲にも入り、向かいながら探索してみると、中から2人の存在をとらえた。魔力をみるに一人は人間で、もう一人が吸血鬼であることが分かった
「フィクス転移魔法を使う!!捕まれ!!」
吸血鬼が人間に襲いかかる。急いでフィクスに指示をだし、転移魔法を発動する。転移して早々、吸血鬼に拳を振るい人との距離を離すことに成功した。視線を人に向けると、以前ここで踊りの練習をしていた人、ミズナの姿があった。彼女は目を瞑り、まだ俺が来たことに気づいていないようだった
「まったく、忠告したはずだぞ。とにかく無事でなによりだ」
「待たせたわね!!救世主フィクスちゃん登場!!」




