ミューリアの秘密
不定期です
あれから数日、イリナを頼りに街の人に聞き込みを再開した。俺は変な虫がつかないようにボディガードに専念している。人とのコミュニケーションは苦手分野で、俺が話かけるとなぜか警戒されてしまうのだ。女性に話しかけようものならナンパだと勘違いされてしまうだろう。人には向き不向きがある。これはどうしようもないことだ。それに俺から女性に話しかけようとすると背後からテイラ、リコから変な視線が送られてくる...なぜ?
「あ、そういえば」
「どうしたんですか?」
「すまん、ちょっと用事というか待たしてる奴がいるから会いに行ってくるわ。みんなは聞き込みを続けてくれるか。アイリス頼んだぞ」
「お任せください」
「腕がなるわね!!ってイタ!!」
イリナが街の人に話を聞いている光景を見て、ある奴の存在を思い出した。アイリスにみんなを任せて後にする。リコが何故か肩をまわしていたのでデコピンして鎮静化させておく。力をつけたことで戦闘狂のようになっているリコ。全ての問題を力で解決させるような大人にならないよう、しっかり教育しなければ...全く誰に似たのやら
向かったのは街を少し離れた所にある森。転移魔法を使用したので移動時間など時間はかからなかった。ここなら人に見られることもないだろう。泊っている宿の部屋でも良かったのだが、途中でみんなが帰ってくることも考慮した結果だ。心を落ち着かせ一呼吸...いやため息を吐き魔法を発動する
「精霊召喚」
契約した精霊を召喚させる精霊魔術で習得できる魔法の一つ。空中に術式が展開され、その中心から現れる契約精霊フィクス。前回出てきたときは現れて早々眠りについたポンコツだが、今回はないやら不機嫌そうなご様子だった
「ぶー」
「なに怒ってるんだよ。いつものやかましい程の元気さはどうした」
「一言余計よ!!」
頭上をクルクル回っているかと思うと髪をグイグイ引っ張り不機嫌さをアピールするフィクス。割と力を入れて引っ張られているので毛根が弱い人にやったら抜けること間違いなし。イライラしてきたので親指と人差し指で首元を摘まみ拘束する
「なによ!!タクマは私の扱い雑すぎよ!!もっと優しくしなさいよ!!」
「はいはい、後で菓子でも買ってやるから」
「ホント!!いったわね!!約束よ!嘘ついちゃダメだからね!!」
お菓子という言葉で目の色を変えるフィクス。先程まで不機嫌だったのが嘘のようだ。機嫌が直るとペラペラと喋りだすので、その前に本題に入ることにする
「それよりあの精霊から話は聞けたのか」
「あの精霊?」
「水霊の巣窟っていう洞窟にいた精霊のことだ」
「あー!あの子達ね!」
思い出したフィクスは早々に話始めた。その話を聞くに、夜中に顔を隠した二人組の男がきて何か探している様子だったらしい。不思議に思いながらもイリナの時と同様、目に見えないことをいいことに水をすくい頭上から落とそうとした所、突然一人の男が赤い斬撃を飛ばしてきたという。幸い、当たることはなかったが、当たっていたら命はなかったという
精霊は物理攻撃では傷つけられない。理屈は分からないが精霊からは干渉することが可能らしく生物、物なども触れることができる。しかし、魔力が込められた攻撃は有効らしく、目には見えずとも干渉することができる。あの時怖がっていたのは、どうやらその男が原因だったらしい。その後、何事もなく男達は去っていった
「分かったのはそいつらは吸血鬼で何か探してるということか」
「なにか面倒なことになってるわね。吸血鬼が人の街に現れるなんて」
「吸血鬼のこと知ってるのか?」
「あいつらは夜の支配者って呼ばれててね、血が大好きな種族なの。特に人間の血が好きな奴らが多いわ!!ほかの生物の血も食べるけど・・・」
吸血鬼についてきくとペラペラとフィクスが教えてくれる。こいつ性格はあれだが、かなり優秀なのではないだろうか。これからは何か分からないことがあればこいつにも聞いてみることにしよう
吸血鬼。それは「夜の支配者」と呼ばれ人間に恐れらている存在。人間の血を好むものが多く、吸血鬼から見て人間は捕食対象として見られている。血は生きるためのエネルギー源であり武器としても用いる。日の光が苦手で、光にさらされると灰と化してしまうため基本、夜にしか活動しない。また、人間のように貴族、庶民のような階級が存在し、位が高い吸血鬼ほど強い力を有しているそうだ
「でも今回の目的は人間じゃないはずだ。もし人間ならこんな場所にはこないだろ」
「そうなのよねー。吸血鬼が人間の血以外に求めるものねー。うーーーん」
吸血鬼を知るフィクスでも何を探しているのか心当たりがないようだ。しかし、ここで分かったことがある。吸血鬼どもはこの街の観光スポットと呼ばれる場所を探している可能性が高い。水姫の祭壇にも吸血鬼と思われる痕跡を発見している
「夜にもう一度、回ったほうが良さそうだな。協力してくれフィクス」
「タクマが私にお願いするなんて!!これは張り切らなくちゃーー!!」
今度こそ逃がすことがないようフィクスを連れて捜索することにする。妙にやる気満々のフィクスには申し訳ないが、探索は日が沈んでからだ
「そろそろみんなの所に戻るから、還すぞ。夜になったらまた呼んでやるから」
「えーいいじゃないこのままでも」
「イリナはもう精霊を見ることが出来るからだめだ」
「なによ。同じタクマの仲間なんだからいいじゃない!!」
「お前は隠し玉だ。仲間には後でちゃんと紹介してやるから」
隠し玉という言葉に喜んでいる隙にフィクスを帰還させる。頼りになる一面を見ることができたが、俺の中でフィクスはまだ「変な奴」である。大切な仲間に変な虫がつかないようにするのも俺の役目なのだ




