精霊の花園
不定期です
水姫の祭壇を訪れた次の日、俺達は次の人気スポットである「精霊の花園」へと足を運んだ
色とりどりの美しい花とこの町の神聖な水を利用してつくられたこの場所は訪れた者全てを魅了する。まず目にとびこんでくるのは花で創られたハート型の門。パイプのように伸びた水が花と花の間に流れ花達をクルクルと回している。飛び散った水が太陽の光を反射し輝きを放つ
「素敵ですねー」
「それはそうだが...どうやって中に入るんだ?」
見た感じ人が入る開口部が見当たらない。
「入り口はここでいいはずなんですけど」
商業ギルドで無料配布されていた「精霊の花園簡易マップ」を見ながらテイラは顔を傾ける。横目からマップを確認してみるとハート型の門のイラストに矢印が指され「出入口」としっかりと記してあった。
「ふむ、ぶん殴って開けろってことかね」
「なんでそんな乱暴な開け方なんですか!」
「いや、もしかしたら、ぼっちで足を踏み入れる人用にそういう開け方も想定されているのかなと思って」
「あ!あれ見てください!」
テイラと話していると、リコが袖をひっぱりながら門の前にたち、手を繋いでいる男女を指差した
「(電光石火で距離を詰めつつ男の腕を切断し、すぐさま回復魔法を掛ければ血を流させず、まるでオモチャの腕が取れたかのように見せ、実は本物の腕ではなく、本当にオモチャの腕に錯覚させられるかもしれない。善は急げだ。すぐに行動しよう!)」
「...タクマさん。また何か変なこと考えてませんか?」
しかしその行動はテイラのジト目によって阻止されてしまう。くっ!...こうなれば殺気を放って殺すしか...
そんなことを考えている間にカップルは門へと歩きだした。するとクルクルとまわっている花達が人をかわすように動きだし、その間を通り抜けていく
「どうやら、近づけは勝手に道を開いてくれるようですね」
「一体どんな仕組みになってんだか...」
兎に角、同じようにすれば中には入れるようだ。早速俺達もなかに入ろうとと歩き出すと、俺の右手をギュッとイリナが握ってきた。
「......」
「......」
その後、左手をテイラが優しく握ってきた。二人とも少し顔を赤らめながら俯いている。
「なによ!二人とも!恥ずかしがっちゃって!」
二人に続き、今度はリコが背中に飛び込んできた。もしかするとと思い、アイリスに視線を向けるが、特に気にした様子もなくテクテクと歩いていく。うん、いつものアイリスだ
「じゃあまぁ...行きますか!」
感情を抑えきれず、少しテンションの上がったタクマはいつもより歩くのがはやくなった。
門へ近づけば、先ほどカップルのように花達が道を開いてくれる。濡れることもなく前に前に進んでいくと背後から視線を感じた。
顔だけ振り返ると、そこには知らない一人の男が此方へと視線を向けていた。ハッとすぐに感づいたタクマはその男に向かって...ニッコリ笑った
殺気を放たれたのは言うまでもない...
中は花と水で創られた一本道だった。先程入ったカップルの姿は見えない。兎に角、歩き続けていくと突き当たりにさしあたり、左右二つの道に別れていた
「ねぇ、どっちに進む?」
「ふむ...こういう時は勘のいいテイラに頼ることにしよう」
「わっ私ですか!?」
「じゃあ...こっちで」と指を指したのは左手にある道。その方向に歩きながら気配探知で周囲の人達を観察する。その結果、人々は密集を避けているかのように、バラバラに散らばっていた。ルートが二つしかない道でこんなにバラけるものなのか、タクマは不思議に思った
「なんか迷路みたいですね」
テイラが簡易マップと見比べてそう言った。俺は簡易マップと周辺マップを比べてみると、僅かにルートがずれているように感じた
その後も、ルートが別れてはテイラの勘に従い進んでいくが周囲の光景が変わることはなく、花と水に囲まれているだけだった
確かにこれは迷路だな。他の人と接近することはあれど、遭遇することはなく、徐々に離れるような形で道が続いていた。その原因はなんなのか...それはすぐに想像できた
精霊眼で周囲を見てみると、小さな精霊達が漂っていた。水霊の巣窟にいた精霊やフィクスと異なり人の形ではなく球体であり、会話することは難しそうだ。フィクスなら会話できるかもしれんが、今回は呼ぶ必要はないだろう...ないったらない
しかし、やはりテイラの勘はすごい。先程から選ぶ道は全て精霊達が漂っているルートのみ。では精霊達がいないルートを選ぶとどうなるのか。恐らく再びハート型の門に戻されるのだろう。実際、迷路内にいた人々が入り口へと戻るよう誘導されている。
「どうやらここは、道を間違えるとさっきの入口へと戻されるみたいだ」
「何でそんなことが分かるのよ。」
「スキルで周囲の人達を観察してたからな。それで俺達は問題なく先へと歩き続けている。つまり、テイラが決めた道は合っていることになる。さすがはテイラだ」
「すごいですねテイラさん!」
イリナがテイラを称賛するなか、アイリスが「これは選んでいるというより...誘導されている?」と呟くのが聞こえた。確かに周囲にいる精霊達によって誘導されている可能性もなくはないが、そんな耳をピクピクさせて、警戒してなくてもいいのではないのかねアイリスさん。一応ここは観光スポットなのだからもっと気楽に行っても大丈夫だとは思うのだが
それからもどんどん先へと進んでいくと、再びハート型の門が現れた。みんな最初は入口に戻されたと思ったが、この門は入口のとは異なり、水の中を花達が戯れるかのように動き回っている。つまり入口にあった門の花と水が反対バージョンである
「どうやらここで迷路は終わりみたいだな」
「な、長ったですねぇ...」
かれこれ一時間は経過していると思うからな。イリナ、リコが疲れるのは仕方ないだろう。俺やテイラ、アイリスは旅の時間が長かったせいか、特に疲れを感じることはない
この先にどんな光景があるのかウキウキしながら皆で歩き始める。俺達が近づくと、ハート型を維持していた水がバチャン!と力を無くしたように一気に形を崩し地面に吸収されていく。残った花達は地に落ちることなく、クルクルと俺達を囲うように回りだした。その花ひとつひとつに精霊達が宿っているのがみえる。
「お花が私達を歓迎してくれてるみたいです!」
イリナの目がキラキラ光っている。そのあまりの嬉しそうな表情に気がついたのか花達がイリナの回りに集まっていく。
「うわー!お花が光っているのが見えます!」
お花が光る?...別に花が群がっているだけで特に光っているわけでは...もしかして...
何かを察した俺はすぐさまイリナに鑑定スキルを発動させる。
「...やっぱりかー」
「どうしたんですかタクマさん」
急に頭を抱えたタクマにテイラが話しかけてきた。
「いや嬉しいような、残念なような...」
呟きながらもイリナのステータスを確認する。
名前 イリナ 12歳
レベル 6
種族 人族(女)
HP 280/280
MP 28/28
筋力 25
防御力 38
素早さ 54
魔力 12
魔法防御 80
〈ユニークスキル〉
〈スキル〉
・料理level4・採取level2・精霊魔術level1
〈称号〉
・精霊に愛されし者
これで水霊の巣窟での悪戯が出来なくなってしまった。そして称号だが...俺もそっちのがよかったよ...




