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もう一人の吸血鬼

後日、街の人から得た情報を共有するための話し合いを行った。その際、街の人からもらったお菓子をつまんでいる。俺のアイテムボックスに収納すれば腐ることはないが、イリナが「みんなで食べたほうが美味しいです」という優しいお言葉をいただいたことで食べてはいるが、減っている気がしない...一体どんだけもらったんだか。しかし、流石は女性群だ。俺が食べるよりも全然手が進んでいる


みんなの情報をまとめると、吸血鬼は「水霊の巣窟」を例としたこの町の観光名所に出現することが多いことが分かった。水霊の巣窟は年に数度、夜になると月の光が自然のスポットライトとなり、頭上から滴る水滴が湖に波紋が生じ、それはまるで見えない精霊が踊りを楽しんでいるようだと言われ人々の心を掴み、夜間でも人通りの多い場所となっている


そこでこの町の観光案内も勤めている商業ギルドを訪れ人気スポットをリストアップしてもらった。それは全部で4つ


・水霊の巣窟

・水姫の祭壇

・蒼幻の泉

・精霊の花園


その中で行ったことがあるのは一ヶ所のみ。数日間滞在してはいるが、今回の一件で全てを回ることはできなかったけど、吸血鬼が現れる可能性があるいまは、仕事として訪れることができる


商業ギルドから頂いた案内地図を確認すると「水姫の祭壇」はこの町の中央にあって何度も見たことはあるが、特別綺麗とか幻想的だとか正直いって人気スポットとは考えられない


「蒼幻の泉」はこの町で一番大きな宿にある温泉のことで、地位に関係なく庶民でも入浴することができる...らしいのだが入浴するだけでも一人金貨1枚という破格な値段設定のため、この町に住んでいる人は滅多に利用しないようだ。入浴するのは収入が入ってからにしよう


精霊の花園は、この町の神聖な水を利用して人工的につくられたもので、入場料無料かつ景色が最高。この条件下でおこる現象といえば......チッ


考えるのはやめて、まずは水姫の祭壇へと向かう。水の神に踊りで感謝を送るお祭りが催された時に使われる場所。その時は観光客が多くなり町全体が賑わうらしいのだが、いまは静かなものだった。祭壇には石材でつくられた神を模した像があり、それを囲うように円卓状につくられた踊場。さらに踊場を囲うように設けられた階段状の観客席。その外側には一人用の踊場が対称的に設置されている。この世界に住んでいる人からすればここは神聖な場所なのだろう。でも、別の世界に住んでいた俺からすれば、ここはまるで本でみた人や獣が殺しあう闘技場だ。とても神に感謝を送る場所とは思えなかった


そう思いながらも口にはださず、吸血鬼の痕跡をさがすことにする。視覚的にわかる痕跡は仲間に任せるとして、俺は魔力を探ることにする。実際に戦ったこともあり、やつの魔力性質を把握していた。調べてみると幾つか分かったことがある。


まず、何席かに吸血鬼の痕跡を確認できた。魔術的な痕跡は確認できず、ただ客としてこの席に座っていたのだろうか。もしかして、吸血鬼族もまた、同じ水の神を敬っているのだろうか。まぁ俺にとってはどうでもいいことだけど...


次に、この祭壇付近の路地裏にも痕跡を確認できた。正確な位置を把握するのは難しいものの日にあたらない場所に身を隠していたのは容易に想像できる


その後も痕跡を集めていると、一人用につくられた踊場に人の気配を感じた。魔力量からしてただの人間だろうが、催しがない時に踊場にいるのは不自然すぎる。念のため確認しておくことにしよう


気配遮断を使って一気に距離をつめて踊場に足を踏み入れるとそこには一人の少女がいた。見た目からして15歳程度だろうか。髪は蒼く顔は少し幼さを残しているものの、育つところはちゃんと育っている。彼女は目を瞑りながらクルクルと楽しそうに踊りを楽しんでいた


「ここって自主練していい場所なのかい。一応神聖な場所なのだろうここは。実際女神像のところは立ち入り禁止になっているしな」


突然呼び掛けられて驚いたのか、目を大きく開けて此方に向き直った。


「なんでこの場所が。観客席からは見えないはずなのに」


彼女の様子からして、やはりここは勝手に入ってはいけないようだ。けれど、そんなことは俺には全く関係のないことなので、誰かに言いふらすようなことはしない


「別に誰にも言う気はないけど、ここじゃなくても練習する場所はいくらでもあると思うけどな」


俺の言葉をきいて、彼女は明らかにほっとしていた。そこまで誰かにバレると不味いことなのだろうか。むしろそっちの方が気になってしまう


「私この場所が好きなんだ。町中を見渡せるし風が気持ちいいし。あっ私はミズナはじめまして」


突然の自己紹介でも慌てることなく「タクマだ」と軽く挨拶を済ませた。彼女なら吸血鬼について何か知っているかもしれない。俺は、現在冒険者の仕事としてこの町の事件について調べていていることを説明しつつ、犯人である吸血鬼について話をきいた


「吸血鬼?そんな人会ったことないよ。もし会ってたら今もこんな場所にいるはずないじゃん」


結局彼女は何も知らなかった。確かに彼女が吸血鬼と遭遇していたら、いまもこうして踊ってはいなかっただろう。愚問だったと思いつつ「じゃあな」と彼女に挨拶してから去ろうとすると、「そういえば」とミズナが何かを思い出したかのように手をポンっと叩いた


「前に誰かの視線を感じたの。気のせいかもしれないけど。あの時も見つかった!っと思ってヒヤヒヤしたのよね」


なら、なんでまたここで踊ってるんだと疑問に思いながらも、ミズナの話を詳しく知るため質問をぶつけてみた


「それってどこからか分かるか。」

「うーん。よく分からないけど街の方からかな。祭壇からじゃ見えないようにしてるし。」

「その時は日が沈んでいたか」

「あの時もこの時間帯だったよ。私夜は街の宿で働いてるし」


祭壇側からじゃなく街から向けられた視線......もしかしたら、ミズナは吸血鬼に標的にされたのではないか。でもその時は日が沈んではおらず、拐うことは困難で難を逃れた。 辻褄はあうが確証はない。周囲に残っている吸血鬼の魔力の痕跡からして可能性がゼロではないとな思うが...後でテイラ達にも相談した方がいいだろう


「情報提供感謝する。それとミズナだったか。ここで練習するのは暫くやめておけ。これは冒険者としての忠告だ」


吸血鬼の名前はださない。出した方がここに来る可能性は上がるだろうが、自分が標的にされた可能性があると知れば恐怖の他に余計な感情が沸き上がるかもしれない。憶測の考えで余計な感情をもたせるのはよくないだろう


「そうするよ。最近は街も物騒になってきたしね。」

「お前が素直で助かったよ」

「お前じゃなくてミズナだよ。もう忘れたの」


「はいはい。ミズナね」と軽く手を振りながら今度こそ、その場を後にした。その後も痕跡を探ってみたが、吸血鬼らしき魔力を感じることはなかった


宿へと戻る道中でミズナについて仲間に話をした。


「そのミズナさんという方。危なかったですね」

「テイラがいうならそうなんだろうな。ならもっと強めに言っておくべきだったかな」

「タクマが女の子相手に強く言えるのかしらねーアイタ!」

「誰に会いたいんだリコよ」

「大人気...いえ、男気(おとこげ)ないですね」


加減はもちろんしている。本気をだせばリコの頭を通り越して町を真っ二つにする自信すらある。する気は毛頭ないけど


仲間の痕跡の方も聞いてみると、アイリスから僅かに人の血の匂いがしたそうだ。でもそれが吸血鬼に襲われたときの痕跡かどうかは分からないそうだ。それでも所々に同じ血の匂いが漂っていたらしい。まるでマーキングをしているようだと


その言葉をキーワードに以前吸血鬼と戦った際に使われた血渡りという技。魔法なのかスキルなのか分からないが、俺のもつ転移魔法のようなもので、転移先が自らの血でマーキングした場所だとしたら...可能性は高いだろう


それとみんなには言っていないが気になった点がひとつだけあった。魔力の性質は種族間によって異なり、さらに同じ種族であっても個々によっても性質が異なる。今回、観客席に残っていたものと、街に漂っていた魔力は僅かに異なっていた。つまり、吸血鬼は一人ではなく...もう一人いるということだ



投稿が不定期のため、後日「活動報告」にて投稿した際は呟こうと考えています。また、作品に関係ないことも呟やいていこうと考えていますので、その際は自由気ままにコメントを返して頂けたらと思います。勿論作品以外のことでも構いません。それと...報告することを忘れていた場合は教えて頂けると嬉しいです(笑)

ではまた

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