置き手紙
不規則な動きをする無数の蝶を雷魔法【電光石火】をつかい対処していく。
本来なら火魔法【青炎花】で周囲を焼きつきたいところなのだが、これを発動すると余計なものまで灰にしてしまう恐れがあるため使うわけにはいかない
このまま蝶を切り伏せていても意味はない。この状況を打破するためにはウェイドと魔銃を切り離す必要がある
俺が考えられる方法は3つ。一つは力づくで魔銃をウェイドの手から奪い取る方法。2つ目は魔銃本体を破壊する方法。そして最後はウェイドの腕を切り飛ばす方法だ
頭が良いやつはもっとまともな方法を導きだすんだろうけど、生憎俺にはこれしか選択肢を生み出すことはできない
その内の最後の方法が最も簡単な方法だと考える。どうせ切り離した腕は回復魔法で元にもどせるだろうし、魔銃よりは切りやすいだろう...けど気乗りはしない
元にもどせるからといって人の腕を切り飛ばすという行為は少し抵抗があった。それでもやるしかないと自分に言い聞かせ魔法を発動する
「転移!!」
ウェイドの背後に転移した瞬間に剣を振るう。影をまとった剣は何の抵抗も感じさせずウェイドの腕を切り裂いた
「グゥゥゥアアアアアアア!!!」
意識が朦朧としていたウェイドが悲痛な叫び声をあげる。バタンと腕とともに落ちた魔銃は魔力の供給が断ち輝きを失っていく
「これでいま残っている蝶を片付ければ終わりだな」
ヒラヒラと周囲に飛んでいる蝶をみながら呟く。殺意をぶつけているせいか警戒して近づいてくる気配はない...こいつらには個々の意思があるのだろうか
いや、そんなこのはどうでもいいことだ。いまやることは残りのやつらを片付けることのみ!!
さっきみたいに相手から近づいてこないため、空中に転移して順次切り裂いていく。魔剣からは喜びの感情が伝わってきた。俺の「仲間を傷つけずに済む喜び」に対し、こいつは「同士に勝利する喜び」だろうか
戦っていた数分という間にどのくらい剣を振るったのだろう。あの魔物の進行程ではなかったにしろ全てが終わった頃には欠伸がでる程の疲れを感じていた
「タクマさーん!!」
急いでこちらに向かう可愛いテイラの姿...の後ろには筋骨隆々の男共の姿もあった。何も知らない人が見れば男共が一人の少女を追いかけていると誤解するにちがいない
辺りは酷い有様だった。地面には幾つものクレーターができており、周囲の壁にはひび割れが発生していた。上階の観戦席はここからでは確認できないが影響はそれ程ないだろう
その後の処理は冒険者ギルドに全て丸投げ。目立つ前に「よし帰ろう!」と出口へと歩けばポンと肩を掴む男が一人。この時思った。いや確信してしまった。また面倒なことになると...
肩を掴んだ男に案内されたのは冒険者ギルド最上階にある部屋。入り口からみて手前には机とそれを挟むようにして置かれたソファーが2台。奥には高級感が漂うデスクが一台。あとはびっしりと本が並んである本棚が置かれているくらいで特に変わった所はない......一部を除いては
「立っているのもなんだ。座るといい」
小学校の校長室ってこんな感じだったなと懐かしさに浸っていると男から声がかかり、一番近いソファーに腰を降ろした。因みに仲間達はここにはいない。みんなは別途で事情を聞かれているのだろう
「早速だがここに連れてこられた意味は分かるな」
「なんとなく分かりますがあなたが何者でここが何処なのかは分かりかねます」
「俺はここのギルマスをしているゲルディだ。そしてここは俺の部屋だ」
分かってはいたがさすがギルマス。こんなことじゃ気にもしない様子だ。気性の荒い冒険者を相手にしてるんだ。当然といえば当然か
「分かったんなら話を進めるぞ。まずはウェイドと決闘するきっかけからだ」
それからは質問攻めが始まった。ウェイドとの決闘になったきっかけから始まりテイラが冒険者を連れてくるまでの間の出来事すべて
俺はこの世界にきて何度も質問攻めにあっている気がする。正直もうこりごりなんだよね。一刻もはやく穏やかな生活にもどりたい
解放されたのは日が沈んだ頃だった。肩をまわせばポキポキッと音がなる。下に降りると仲間が待ってくれていた。子供達は孤児院の職員マミルナと一緒に帰ったようだ。
子供達には大変な目に合わせてしまった。職員さん達にも心配させてしまっただろうし、後日謝りにいかないとな
タクマが部屋を退出した後、ゲルディはため息を吐いた。ピンと張ってた線を緩めたように警戒心を一気に解いた。それと同時に姿を現した女性が一人
「驚きましたね。あの子、私の気配に気づいていたようです」
「ああ。あの気配探知も見事だが実力も確かなようだな」
デスクから引き出したのは一枚の紙。そこにはタクマが冒険者登録した際に読み取ったステータスを記録したものだ
名前 タクマ・スズキ 18歳
レベル 12
種族 人族(男)
HP 600/600
MP 720/720
筋力 80
防御力76
素早さ64
魔力 114
魔法防御 134
〈ユニークスキル〉
アイテムボックス
〈スキル〉
・火魔法level2・雷魔法level2 ・回復魔法level1・解呪level2
〈称号〉
「なぁお前さん。このステータスでウェイドのやつに勝てると思うか。」
「思いませんね。それに私の気配に気づいたのです。気配探知スキルは少なくても持っているはずです」
「それに隠蔽スキルを持っている可能性もある。連れが所持してる可能性もあるがな。アイテムボックスを隠さないあたり、全てが偽りってことではなさそうだ」
「恐らく隠蔽していないものはレベルだけを変えているのでしょう」
なにもステータスを隠蔽している奴は一人ではない。冒険者やってる奴の中には幾らでもいる。隠蔽スキルを商売道具にしてる奴もいるほどだ
それでも読み取れる情報はある。それを的確に拾える能力もギルマスには必要だ。つっても長年ギルマスやってれば自然に身につくんだがな
「魔剣を所持していたのは報告により聞いてはいた。しかし最も驚くべき所は身体能力だろう」
「話しによると魔弾を全て見切っていたようですからね」
「一応他のギルドにも報告をいれておけ。それとやつの情報をできるだけ集めてくれ」
「わかりました」
部屋から女性の気配が消える。
「タクマ・スズキ。こいつは一体何者なんだ」
帰り道、お互いにどういった質問をされたのかを話し合った。どうやらみんな同じ質問をされたようで、肩がポキポキッとなったのも同じなようで歩きながらもつい笑ってしまった
部屋に入ったらすぐにベッドに飛び込もうと扉を開けるとベッドの上に一枚の紙が置かれた。それから少し経つと通路を走る音が聞こえた。
「タクマさん!ヒュオラちゃんが!」
「ああ分かってる。いなくなったんだろ」
置かれていた紙は俺宛に書かれていた。誰がかいたのかは想像がつくだろう。その紙にはこう書かれていた。
みんなへ
いやー迷惑掛けちゃってゴメンね。もう大丈夫だがら帰ることにするよ。みんなとお話したいんだけどいま忙しくてね。機会があったらまた会おうね!それじゃまたね!
ヒュオラより
「大丈夫連れ去られたって訳じゃないみたいだよ」
みんなにヒュオラが書いた紙を見せる。それを確認するとみんなは一安心したようだが、俺は気になる点が1つあった。この「忙しくて」という言葉。ヒュオラはああ見えて神だ。この世界に訪れてる神が忙しいってことはこの世界で何か起こったってことだ
いや、もう既に起きているかもしれない。あの魔物進行も何か関係しているはずだ。近いうちにもう一度魔族の領域にいく必要があるかもしれないな
「ヒュオラちゃん...」
「大丈夫だから今日はもう寝よう。色々あって疲れただろう」
それにもし何かあっても心配はいらない。もう手は打ってあるしな...




