やるべきこと
不定期です
二人の少年シュウとクナンが覚えたいと頼んできた魔法。光魔法と氷魔法。片方は以前に見たことがあるがもう片方はない。それでも習得させてやると言った以上必ずこの課題をクリアさせてみせる。子供達が試験をクリアしたように俺も頑張らなければ
「取り敢えずお前らには回復魔法を覚えてもらう」
子供達に会って早々俺はそう宣言した。これは「子供達」ではなく「俺自身」が習得してほしいと思っていた魔法だ。これには理由が3つある。一つ目は安全に習得できるという点。火魔法や雷魔法ように攻撃性がある魔法ではなく傷を癒やす魔法であることから、もしもの事があっても子供達に危害が及ばない。二つ目は傷を癒やせるという利便性。怪我をしても自分で治すことができるというのは子供達にとっても安心だろう。ちょっとした小遣い稼ぎにも重宝するだろうし。そして最後の点としてフレシアさんやマミルナさんが教えられる点だ。ここは孤児院であり、当然回復魔法を習得している...と言いつつも念のためマミルナさんを鑑定したのは内緒だ
「これらの点から回復魔法を覚えてもらおうと思うんだが何か異議がある奴はいないか?」
一応反対意見があるか聞いてみたのだがどうやら愚問だったようだ。近くに落ちている枝を拾い、ナイフで切り傷をつけた後に回復魔法をかける
「ヒール」
すると切り傷が瞬く間になくなっていく。これは実際に俺が回復魔法を覚える際にやった習得方法。方法はこれで間違いはないはず。近くで見守っているマミルナさんに視線を向けるとコクリと頷いた
「今見せたことをやってもらう。苦戦はするかもしれないがお前達なら必ず習得できるだろう。いいか大切なのは...」
「「「イメージ!!」」」
「お、おう。忘れてはいないようだな。なら訓練開始!!」
ついでにテイラ、リコ、イリナにも訓練を行わせる。アイリスは種族上の問題で魔法の習得はしないが、やる事がない訳ではない
「私がこの子達に剣術を?」
「それと格闘術も頼む。アイリスはそっちの方が得意なんだろう?」
「得意といいますか...私の戦闘は武器を用いる際に格闘術も用いているので得手不得手などはありません」
アイリスにやってもらいたいこと...それはシュウ、クナンの剣術の指南だ。こいつらは魔法を用いながら近接戦闘するスタイルを目指している。しかし俺には剣術や格闘術など【技術】が必要とされる事は教えることができない
俺の力はステータス、スキルに依存している。スキル習得に関しては苦労したことがない。相手の攻撃を躱せるのだって技術があるからではなく、ステータスが高い(多分)お陰だ
対してアイリスは俺の習得方法とは異なり努力してスキルを習得したのだろう。戦闘経験も俺...というよりここにいる誰よりも豊富なはずだ。これほどまで指導者に相応しい人はいない
「タクマさんが言うなら間違いない。俺は強くなりたいんです」
「俺ももっと強くなりたい」
「「お願いします!!」」
シュウとクナン。二人がアイリスに頭を下げる。こいつらは普通の奴よりもプライドが高いのは今までのつきあいから分っている。ずっと一緒に暮らしている子供達はもっとだろう。そんな奴らが人に頭を下げる。周囲の人達に二人の【本気】が伝わってくる。それはアイリスも例外ではない
「分りました。できる限りの事はします。それでも強くなれるかはあなた達次第です」
「「はい!!」」
こうして二人は魔法の他に近接戦の修行も行うことになった。2つの修行を両立させるのは困難だろうが、ぜひそれを耐え抜いて俺ともう一度手合わせをしてもらいたいものだ
この子達の修行が終わればこの街にいる必要がなくなる。その時はすぐに訪れることだろう。今の内に目的地を決めておくのも悪くない
午後はテイラと共に冒険者ギルドにきていた。イリナとリコは友達と魔法の訓練を続けるらしく、アイリスは二人に修行をつけている。俺は頑張っている子供達の影響を受け何かやることはないかと考えた際、冒険者の依頼を受けていなかったことを思い出した。本当は一人で行く予定だったのだがテイラが一緒についてきた
別に魔法の練習をサボった訳ではない。テイラがついてきている理由...それは回復魔法を習得したからだ
「しかし驚いたな。まさか半日で魔法を習得するなんて」
「回復魔法は何度も見たことがありますし実際に感じたこともありましたし。これもタクマさんのお陰です!」
俺がテイラと会った時は身体に障害があった。そこで俺が回復魔法を覚えて完治させたのだが、実際に感じたというのはその時の事だろう。そのお陰で早く習得できたのだとしたら他の子達の体に傷をつけて...いやこれだとマミルナさん達が黙ってはいないだろうし断念せざるおえない
「なんにせよ早く覚えられたのは俺としても嬉しいよ」
「あ、有り難うございます...」
顔を赤く染めながらブツブツ何か言っているが上手く聞き取れなかった。耳を傾けながらも視線は掲示板に貼られてある依頼書に向ける。依頼書には大まかな内容、難易度、依頼主などが書かれている。難易度は必要ランクによって表記されている。つまり、この依頼を受けるのに必要なランクが書かれているということだ
別に依頼を受けずとも勝手に魔物を狩ってきて売ってもいい。時々、夜に宿を抜け出してアイテムボックスに溜まっている素材を少しずつ売っているのでギルドには何度も赴いていた。顔を隠していたから気づかれてはいないだろうが
ランクはA~Fまであって、現在の俺達はFランク。一度も働いてないから当然だけど。AとBは上級、CとDは中級、EとFは下級冒険者と言われている
「うーん。やっぱいい依頼はねーな」
Fランクで受けられる依頼のほとんどは街中での依頼。おつかいや下水掃除などの雑用ばかり。とても冒険者がやる仕事とは思えない。テイラも俺と同じ依頼書に目を向けた
「冒険者ってこんな事までするんですね」
「どこが冒険者なんだろうな」
「でも街のために働くなんて素敵じゃないですか!」
俺には何が素敵なのか分らない。でもテイラの笑顔が素敵なのは分かる...守りたいこの笑顔
「けっ!そんなもんは魔物も殺せねぇ弱者がやるもんだ!」
そんな事を思っていると後ろから声を掛けられた。振り返ってみると3人の男の姿があった。どちらも髭面のおっさんだ。同じ皮鎧を着てはいるが獲物は弓に片手剣に大剣。見るからに冒険者といった感じで状況からして俺達に絡んできたのは容易に想像できる。しかし、こういうのはもっと序盤に起こるイベントではないのだろうか
「テンプレであってテンプレじゃないってか」
「久しぶりに聞きましたその言葉」
「なにをブツブツ言ってやがる」
大剣をもった男が俺の前に出てくる。その際一瞬テイラに視線を移したのを俺は見逃さない
「なぁお前ら見たところ新人だろ。俺達が冒険者ってものを教えてやるよ」
「なんせ俺らは最近C級に上がった冒険者なんだぜ」
「その代わりといっちゃなんだがそこの嬢ちゃんを貸してもらうぜ。嫌とは言わねーよな?」
この男達は女に飢えているのだろうか。テイラはまだ13歳だぞ。そんな子を狙うなんて同じ男として恥ずかしい。まぁそんなことよりもだ。俺の仲間に手を出そうとは...良い度胸をしている
「嫌だね」
「...何だと?」
「嫌だって言ったんだ。お前らなんかに教えてもらう事なんてない。それより俺の仲間に手をだそうだなんて思うな。今回は見逃してやるがもう一度絡んできてみろ。容赦はしない」
誰だってミスはする。だから今回だけは見逃してやることとした。隣にいるテイラは焦る様子もなく平然としている。俺を信じている部分も少しはあるだろう。それでも概ねの部分は自分に自信というか勇気をもったからに見える
「(強くなったな)」
仲間の成長を喜ぶのもまずはこの状況を打破しなければならない。最悪は三人を殺してしまえばいいのだろうがこれは本当に最後の手段だ。冒険者ギルド内ってのもあるが一番の理由としてはテイラに人を殺す所を見られたくないからだ
さて、どう攻略しますかね




