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魔物進行 終

不定期です

 火焔の狼の勢いはとどまることを知らず、相手を灰へと変える。魔族達が創造している魔物の数も減りこの戦いももうすぐに終わりを迎えられるだろう


 気配探知と魔力探知のスキルを使っているが骸骨王は未だ見つからない。それどころか究極巨人を倒した頃から、他の幹部2体も姿を消してしまった。全くスキルに反応がない


 「逃げたか...でもまだ奴の存在は確認できるし油断はできねえ」


 幹部全ての気配が消えても、この軍の親玉であろう奴の気配は感じとっている。魔力も凄まじい


 「戦況も変わったことだしそろそろ会いに行くとしますかね」


 転移が出来る距離まで一気に走り出した。腕の震えもおさまり再びアイテムボックスから魔剣も取り出した。道を塞ぐものは剣で切り伏せ火焔の狼で灰へと変えていく


 そして見えてきたのは...一人の少女の姿だった


 「なんで...なんでお前がここにいるんだよ...ヒュオラ!!」


 それは膨大な魔力で作られた巨大なクリスタルに閉じ込められたヒュオラの姿だった。鑑定をした時、そのクリスタルは浮遊しておりゆっくりと前へと進んでいる


 声を掛けても返事はなく表情も一切変わらない。諦めず何度も何度も声を掛け続けるが変化はない。俺の声につられ周囲の魔物が襲ってくるが全て狼達が対処している


 「魔力探知で感じていた魔力はこのクリスタルの魔力だったのか。道理で気づかなかったはずだ。そんなことより早くこいつをぶっ壊してやる!」


 魔剣で勢いよく切りつけるが罅一つ入ることはない。魔力を纏わせもう一度切りつけてみるが変化はない


 「こうなったらもう一度あの技を...でも中にはヒュオラがいるし」


 あの巨人を倒した技を使えばクリスタルは割れるとは思うがヒュオラに当たる可能性があるため使うわけにはいかない


 魔剣に意見を訪ねてみると、火焔の狼を使ってクリスタルを少しずつ溶かすという意見がでた。魔剣は喋らないからあくまで頭に流れてきたイメージを読み取っただけだ。詳しい事は分からない


 取り敢えず、やってみなければ始まらない。新たに狼を創造しクリスタルを攻撃しろと命令を下し実行させる。命令された狼達は勢いよく噛みついた。鋭い牙を使ってもクリスタルに傷がつかないが熱で徐々に溶けていく


 「それでもこれじゃ時間が掛かりすぎる...なにか...なにかないのか」


 このままクリスタルの中にいても特に体に悪影響がでることはないだろう。しかし、長時間ヒュオラをこのクリスタルの中に閉じ込められている姿を見たくもないし、早く自由にさせてやりたい。そして俺達と別れた後に一体何があったのかを聞きだして、この状況を作り出した奴の息の根を止めてやる!


 幾ら考えても良い案は浮かんでこない。俺はあまり頭が良い訳じゃない。なんせ単独で王城に乗り込んだ男だからな!


 「...今助けてやるからな」


 肩を回し拳を強く握る。次の作戦は名付けるなら「剣で駄目なら拳でぶっ壊せ大作戦!」だろうか...別に名付ける必要などないのだが


 ステータスがバグっているためどれ程の力があるか分からない。それでも並の人よりも遙かに強いのは分かっている


 雷魔法「電光石火」を発動し全身に雷を纏わせる。そして、その状態を保ったまま雷魔法創造を使いさらに雷を纏う。


 「雷魔法創造...雷鳴サンダーアーマー!」


 纏った雷が全身を覆い鎧と化す...といっても単に今までより魔力を増やしただけなのだが


 「ヒュオラを返しやがれ!この野郎!」


 その叫びとともに勢いよく飛び出した。足が地面から離れ標的との距離を詰めると手を後方にひき勢いよく振るった


 当たった瞬間、拳の衝撃とともにクリスタルに電流が流れる。まるで脈のように流れていくそれはすぐに全体を包みこみ強い光りを発する


 しかしクリスタルには罅ひとつはいることはなかった


 「まだだ!もっとだ!もっと!魔力を!!」


 突きだした腕にさらに魔力をつぎ込む。つぎ込むにつれ腕が悲鳴を上げるがそんなことなど構わず魔力を注いでいく。腕など後で回復魔法でどうとでも治せる。治せなくなってもヒュオラを助けられるなら腕の一本などどうでもいい


 テイラ、アイリス、リコ、イオナの様に一緒に旅をしてきた訳でも長い時間一緒に過ごしてきた訳でもない。それでもこの世界に連れてきてくれたのはヒュオラだし...あの時、死を覚悟した俺の前に聖杯が都合よく置いてあった事...あれってヒュオラが俺のためにしたことなんだろ?...何となく察してはいたんだ


 それでも久しぶりに再会した時に恥ずかしくてお礼の前に聞くことすら出来なくてさ。だから今度会った時はちゃんとお礼を言おうとしてたんだ。「あの時俺を助けてくれてありがとう」ってさ


 それにこれも何となく...本当に何となくだけど小さい頃に死んだ妹に似てるんだよ。見た目とかじゃなくて性格というか雰囲気というか。だから俺にはちゃんとお前を助ける理由がある。腕を犠牲にしてでも助ける理由がちゃんとあるんだ


 「だから...だから戻ってこいよ!ヒュオラ!!」


 瞬間、バキッと何かが割れる音が聞こえた。一瞬俺の骨が折れたのかと思ったが、よく見るとクリスタルに小さな罅が入っていた。それは段々と広がっていき、そこに電流が流れ内側にも深く広がっていく


 そして内側も光りに包まれた時、クリスタルは激しい音と共に砕け散った。砕けた破片は次々と空中で輝きとともに消えていく


 その中心にはヒュオラの姿があり、俺は優しく片手で抱き上げた。突きだした腕は予想通り使い物にならなくなった。もはや痛みさえ感じない程に


 「ほら起きろよ。いつまで寝てるんだ?」


 地面に着地し顔を覗くとヒュオラは目を瞑ったままで、声を掛けても起きる気配はない。念のため鑑定を使って状態異常に掛かっているか確認しようとするが鑑定することは出来なかった


 「念のため回復魔法を掛けてみるか」


 神だからなのか良く分からないが念のため回復魔法を掛けることにした。その後、自分の動かなくなった腕に回復魔法を掛けた。すると、腕は無事に動かせる様になったが思うように力を入れることは出来なかった。これはあの技を使った時と同じ現象だろう。ということは時間が経てば元に戻るはずだ


 「まだ敵はいるな」


 周囲を見渡すと数は増えていないが、未だ骸骨やら巨人などの魔物が残っていた。それでも俺が創造した火焔の狼達が駆逐している。倒し終えるのはもはや時間の問題だろう。こいつらの主人の魔力も感じないしこの戦いは無事に終わりを迎えられるだろう


 「後はヒュオラが目を覚ましてくれればいいんだが...」


 「ふむ...その娘はどうやら魔力欠如によって昏睡状態に陥っている様だニャ」


 「誰だ!」


 ヒュオラを心配していると突如後ろから声が聞こえた。【気配探知】や【魔力探知】を使っていても接近されていることに気づくことが出来なかった


 すぐに体の向きを変え戦闘態勢に入る。声のする方へと体を向けるとそこには一人の獣人がいた。しかしそいつは只の獣人ではない。体が半透明になっており、まるで幽霊かのように透けているのだ。そしてその体は地へは着いておらず空中に浮いていた


 「そう簡単に殺気を放つものではないニャ。普通の人ならそれだけで気を失ってしまうニャ」


 透けた獣人の言葉を聞いた聞いた時、ふと孤児院で働いているフレシアさんが身につけていた首飾りを思い出した。そして次に、その孤児院の庭の木の陰で本を読んでいたリリアという少女が持っていた「初級魔法の基礎」という本の著者の名前も


 「お前...ペルシーか?」


 「おや?何処かで会った事があったかニャ?」


 体の透けた獣人...ペルシーは唇に人差し指をつけ首を傾げた


 「まぁそんな事はどうでもいいニャ。取り敢えず場所を移動するニャ」


 そう言ってペルシーがパチンと指を鳴らすと足下に魔方陣が出現した。そして、その中にいた俺はヒュオラを抱えたままペルシーと共に魔方陣から放出されている光に包まれた


 




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