シシリ防衛隊
不定期です
ヒュリスは何もない所から神々しい光を放つ一本の剣、神剣を出現させ右手に掴む。その剣を見たドラゴンは纏っている魔力を強めた。こうして、光が差し込んだ薄暗い空間のなかで神と邪神竜の戦いが始まるのだった
現在、テイラ達4人は開発都市「テクノギス」に辿り付いた。タクマがいない今とにかく先に進み次の都市に着いてしまった。その後の事を考えていなかった4人は身につけているマントのフードを深く被り宿を探すことにした
この都市は様々な技術発展が進んでいる都市である。その理由としてこの都市の周辺には迷宮が多く存在することが大きい。難易度が低い迷宮から高いものまであるためここは冒険者の他にも技術者や研究者などが多く集まっている。中には冒険者と技術者が直接契約を交わす者達がいる。冒険者ギルドを介さないため報酬は高いが何か問題が起きても冒険者ギルドは責任を負わない。つまり全て自己責任というわけだ。技術者や研究者は基本商業ギルドに入る。しかし国から認められた者は、国から開発場所と資金が提供される。そのため多くの技術者は今日も開発に打ち込んでいる
いつものように依頼を達成した俺達は行きつけの宿「紅の鶯亭」で食事をしている。この宿は2階が宿泊用の部屋があり1階は食堂になっている。食事は泊まらなくても食べられるため食事時にはここの看板娘シシリちゃんが額に汗をかきながら働いている。長い薄青の髪を後ろでまとめ両手に皿を持ち運んでいる。一生懸命働いているシシリちゃんを見て男達は今日の疲れをいやす
「可愛いよなーシシリちゃん」
「手を出すなよ」
厨房ではシシリちゃんの父が料理を作りながらも目を光らせている。もしシシリちゃんに手を出しようものなら二度とここに足を踏み入れることはできなくなるだろう。そして密かに結集された「シシリ防衛隊」のメンバーから制裁を下されるだろう。もちろんこのことは本人は知らない
「分かってるよ。まだ死にたくねーし」
「お付き合いしてる人はいるんでしょうか」
「お前は本気で惚れてるもんな」
パーティメンバーであるトウマは顔を赤くする。トウマはすぐに感情が顔にでるためとても分かりやすい。今もシシリちゃんを見ているクレイブはいつもそんなトウマをいじっては俺に注意されている
「でもライバルはきっと多いだろうな。いいかシシリちゃんを本気で好きなら漢を見せるしかない。そのためにはまず俺みたいに強くならなきゃな」
「今日、森に行って足挫いてトウマに回復魔法をかけてもらってた奴が何だって?」
「うるせーぞライズ。そんな話掘り起こすなよな」
「はいはいそれは悪かったな」
その後もクレイブの話しをBGMにしながら食事を続けているとフードを被った4人が入ってきた。顔は見えないが一人がキョロキョロと辺りを見渡していることからここには初めて来たことが分かった
「うわー人がいっぱいだねー!」
「いい臭いです~」
「ちょっとリコさん静かにしてください」
声からして女性で間違いはないだろう。クレイブも気づいたのか話しをやめその4人に視線をむける
「あいつら冒険者か?」
「さあな」
「珍しいですね。女性の方がくるなんて」
「ここに食べに来る大半の奴はシシリちゃん目当てだしな」
「それにこんなむさ苦しい所に好んで来る女なんていねーからな」
4人はシシリちゃんに机に案内され腰を下ろした。少しすると食事が運ばれ食べ始めた
「食事を始めてもフードをとらないとはありゃお尋ね者かね」
「だとしたら絡むなよ面倒事になるのはゴメンだ」
そう言ったそばから他の冒険者が4人に近づいた。こりゃマズい。そう思っている俺の傍でクレイブが興味を持った目で見ている。
「おいねーちゃん達この街に初めてきたのか?よかったらこっちで俺達と飲まねーか」
「俺達が色々と教えてやるぜ」
一人の男が一人のフードの中を覗き込んだ
「なんだお前奴隷じゃねーか」
「奴隷がなんで椅子に座ってんだよ」
奴隷は床の上に座るのが普通だ。てか常識だ。それを知ってなお奴隷を椅子に座らせている主人がとても気になり俺も視線を向けた
「そ、そうでした奴隷は床に座るんでした!」
「タクマといるとつい忘れちゃうよね」
「そうですね。私も忘れてました」
3人が会話を交わす中、1人は男達に鋭い視線を向けていた。その視線に男達は後ずさりをするがすぐに足を止めた
「なんだその目は俺と野郎ってのか!このDランク冒険者ベンデルク様と」
Dランク冒険者ってことはこの都市付近の魔物相手なら軽く屠ることができるぐらいの実力はある。この都市付近の魔物は他の都市と比べてもレベルが高い。実力は本物だろう。だがあいつ
「あいつ相当強いな」
「クレイブが言うなら相当なんだろうな」
クレイブには珍しいユニークスキルを所持している。そのスキルは〈体感〉というスキルだ。このスキルは視認した相手の強さを肌で感じることが出来るスキルだ。地味なスキルだと思うが、相手の実力をすぐに察知できるのは危険な戦闘を避けることや他のパーティと組むときなんかには相当使える。奴隷を雇う時なんかにも役立つだろう...そんな金ないけど
「け、喧嘩は止めて下さい!」
騒動になるのを察したのかシシリちゃんが止めに入った。それでも男は気にも止めずに叫び続け、どうやら頭に血が昇っているらしい。その後も何度もシシリちゃんが呼びかけるが気にしていない
「いい加減に止めて下さい!」
「うるせー!!」
シシリちゃんが無理矢理抑えようと男の腰にしがみつくがそれを簡単に振り払った。振り払われたシシリちゃんは床に尻餅をついた。その姿を見て今まで黙っていた男達が立ち上がった。厨房にいた親父さんまででてきた。誰もが止められないとそう思った時、それは急に起こった。さっきまで暴れていた男が宙に浮き上がりそのまま頭から床に叩きつけられたのだ。そして男に鋭い視線を送ったフードの奴が立っていた。恐らくそいつが男をやったのだろう。しかしその行動をここにいる人達は誰も反応できなかった。クレイブとトウマは口を開けながら驚いている。そしてここが静かな空間に包まれる
「もうその辺でいいでしょう。この先はここにいる人達にも迷惑がかかると思うので」
今まで黙っていた奴が初めて口を開いた。そして、もう一人の男に視線を向けた
「この男を連れてはやくこの場から退くことをお薦めします」
その一言で立ったまま動かなかった仲間が現状を理解し慌てて倒れた男を連れて去っていった。その後も口を開く者はいなかった。暫くしてようやく一人が口を開いた
「あ、あの有り難うございました」
「いえ気にしないで下さい。こちらこそすみませんもっと早くに動くべきでした」
二人に会話で他の人達も正気にもどり歓声を上げた。静かな空間から一変し賑やかな空間へと変わった。シシリの親父さんも胸をなで下ろしている。それから親父さんはフードを被った4人と話しはじめ、どうやらここに無料で泊めてやるそうだ。なんと羨ましい
「さてと俺達は帰るとしますか」
「そうですね」
「だな。今日はなんか疲れた」
俺達は腹を満たした所で帰ることにした。これは後で知った話しだがシシリちゃんを尻餅をつかせた男は帰り道に「シシリ防衛隊」のメンバーの制裁が下ったとさ...めでたしめでたしってな




