闘系
不定期です
一方その頃、獣人の国へと向かっている4人はタクマがいない不安を紛らわそうと会話をはずませていた
「獣人の国にはどれくらいかかるんですか?」
テイラが馬車を操縦しているアイリスに声をかけた。馬車の操縦はテイラとアイリスしかできないため交代で操縦している
「最低でも5日以上はかかると思います」
「結構かかるんだねー」
外を眺めながらリコは話に入ってきた。イリナは今ある食料を確認し何を作るか楽しいそうに考えていた
「村に帰るのは久しぶりなのでとても楽しみです」
「ねぇねぇ狐族の村ってどういうところなの?」
突然リコが操縦席にいるテイラとアイリスの顔の間から自分の顔を突き出し聞いた。テイラは少し驚いた表情を見せた
「私の村だけではないですが緑が多くとても綺麗なところです。とくに雲がない日の夜景がお勧めです」
「へー楽しみ~」
「絶対5人で見ましょうね」
5人で綺麗な夜景を眺めている光景を想像しながら会話を進めていると前方から太い声が聞こえてきた
「よー可愛いお嬢ちゃんたち何処に向かってるのかな?」
「俺達と一緒についてこないか?」
「イヤって言っても無理矢理にでも連れて行くけどな」
誰がみても盗賊だと分かる男5人が馬車の歩みを止めた
「どどどどうしましょう!!」
慌てているイリナを落ち着かせるリコだが心の中では 「これって不味くない?」と不安を抱えている
「落ち着いて下さい。ここは私にお任せください」
アイリスはそう言うと操縦席から降りた。
「なんだ?」
「こいつ獣人だ気をつけろ!」
アイリスが獣人と分かると盗賊は警戒心を強めた
「私も戦います」
テイラがそう言ったがアイリスに手で止められた
「すみませんが1人の方が戦いやすいのでそこで待っていて下さい」
盗賊5人と獣人1人の戦いが始まる
「見せてあげましょう私の闘系を!」
闘系
闘系とは五感と言われる視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚を魔力を使いその性能をあげる技である。しかし、性能の上昇は他者によって異なり、あげられる感覚も異なる
視覚…視覚範囲に限るが魔力を見ることが可能になる。また相手の癖や力量を素早く察知することができ、視覚に入った微かな動きを捉えることができる
聴覚…人族でも鍛えることによって獣人のように遠くの音を察知することができる。主に偵察する者が鍛える感覚である
嗅覚…あらゆる匂いをかぎ分け魔物の位置や戦闘中に相手が所持しているアイテム(回復薬、解毒薬など)を把握することができる。また料理人で鍛えている者も多い
触覚…魔力操作の性能を向上することができ魔法職の者が鍛えることが多い。他にも自分の足音を消すことや迷宮にあるトラップを見抜く擬似的な「トラップ探知」スキルの能力も得られる
味覚…口に入れた物の品質や成分を把握できる。主に研究者や料理人などが鍛える感覚で戦闘職で鍛えている者は少ない
そして、闘系を習得した者の中には異なる能力を得た者もいる。それが何故かは未だに分かっていない
という説明を戦闘中、簡潔にまとめて話した。この余裕を見て盗賊達は苛立ちを覚えているがテイラ達は授業を受けているかのように静かに聞いていた。まるで心配などしていない。それだけ盗賊とアイリスの実力に差があるのだ。盗賊達が何度も剣をふるうが当たらない
「私の闘系は視覚、嗅覚、聴覚の3つです。そして今使っているのは視覚で相手の攻撃を見切っています。なのでこのように簡単に避けることができます」
「舐めやがってー!これでもくらえ!」
腹がたった盗賊は何か取り出そうと懐に手をいれる。その行動をみたアイリスは足元にあった小石を右足で相手の懐に向かって蹴り飛ばした。その小石は見事に命中すると爆発が起こった。近くにいた他の盗賊も巻き込まれ燃えつきた
「ありゃりゃーこれは盗賊の方が可哀想になるわね」
「今のは嗅覚で匂いをかぎ火薬だと分かったので爆発するアイテムと予測しました。そして、視覚で足元にあった石を正確に当てたのです」
何やら解説が始まった。そこまで一気に説明されても分かるはずもなく途中で三人は聞くのを辞めた
「あの...アイリスさん!!」
「なんですか?」
アイリスが盗賊が持っていた武器・アイテムを回収していると、突然テイラが何かを決心した目をしながら話しかけた
「私に戦い方を教えて下さい!!」
これを聞いた3人は驚きを隠せなかった。しかし、理由はなんとなく分かっている。テイラはいつもタクマの役に立てるように何かできないのか考えていたのを知っていたからだ。アイリスは覚悟を決め無言で首を縦にふった
「ありがとうございます!」
「ねぇ私にも教えてくれない?私もタクマの役に立ちたいのお願い」
「リコさんもですか?」
珍しくリコが真剣な目をしながらお願いしてきた。イリナも何かを言おうとしたが、リコがそれを止めた。テイラもアイリスもそれを見て察しがついた。リコはイリナに危険なことをさせたくないのだと
ニーナとの戦闘は想像よりも長く続いておりどちらも一つの傷も負っていない。しかし、長時間続いているからか戦闘中の音が大きかったのか警備をしていた聖騎士が次々と集まってきた。まあ原因は両方だろうが気にしない
「よく持ちこたえるねー。いやー関心関心」
「まだ一撃も与えられていないのによくそんな余裕を見せられるわね」
周りを見ると聖騎士に囲まれ壁や床、天井は凹凸が出来ている。よく持っているものだ。いつ崩れてもおかしくはない。これはそろそろ決着をつけなきゃな
「じゃあそろそろ終わらせるか...電光石火」
電光石火を発動し体に雷を纏う。傭兵達が驚きをあらわにしているがお前たちの声なんて聞いても誰も嬉しくない
「ではこちらも...雷光ツミツキよ我に力を!」
そう言うとニーナの槍が光と雷に包まれそれが段々とニーナの体に纏っていく。電光石火に光魔法が付与された状態なようなものだろうか。とりあえずあれは槍の力で間違いないだろう。互いに構えをとり一瞬で間合いを詰め、顔に向けて攻撃しようとした時、誰かの声が響いた
「そこまで!!」
その声を聞き、当たる寸前に動きを止めた。そして、声がした方向から2人の男が歩いてきた
「腕をおろして下さいませんかタクマさん。ニーナ様は武器を」
「ったく面倒くさいことになってんな。お、いたな規格外」
1人は冒険者ギルドのギルド長、そしてもう1人は商業ギルドのギルド長であり第2班騎士団団長アラン・アルテミラだ。てか規格外って言うな...認めるけど
「どういうつもりだアラン!ジーク!」
ニーナが2人の名前を叫ぶ。あいつジークって言うんだな
「お許し下さいニーナ様。このままでは王の身に危険がおよぶ可能性がありましたので」
確かにさっきの攻撃が衝突してたらここは崩れてただろうな。俺はバリアあるから問題ないけどね。そういえば戦闘を行ってから王の声がしていないことに気づいた。見てみると王は姿勢を正したままピクリとも動いていない。アランはニーナとの話を済ますとこっちに歩いてきた
「さて会ってそうそう悪いけどどういうつもりかな?こんな問題を起こして」
俺はアランに手配書を剥奪してもらおうとしたことと、なぜ指名手配された経緯をはなした。アランの部下から話を聞いていると思うが自ら伝えるべきだと思った。俺の話を聞くとアランは「なるほど」と小さく呟いた
「君がなんでこんなことをしたか大体理解できたよ。でもこれが正しい方法だと思ったのかい?」
「残念ながらその通りだ。あいにく頭はいい方ではないんでな」
それに遠回しに提案したのはそこのジークなんだが。視線を送るとジークは目をそらした
「ならますます状況が悪くなることはか・・」
「その時はこの城ごと王を殺すまでだ」
言い終わるまでに返事をかえした。おまけに魔力を多めに放出してみた。すると数名の聖騎士達は意識を失い、下半身が大変なことになってしまった。まったく大人なのにだらしない。下半身はまだ成長しきれていないようだな...プププ
「分かったから魔力を抑えてくれ頼む」
「やっぱり規格外だな」
「規格外いうな」
放出を止め再び聖騎士達を見る。うんうんいい光景だ。ここにカメラがあったら撮って悪戯に使えるのに少し残念だ。悪い顔になっていた俺の顔を見てアランの「やれやれ」、ジークの「ひでーやつだな」、ニーナの「悪趣味ですね」という声が聞こえたが嫌な気分にはならず、むしろ褒め言葉として受け取っておこう
「すみませんがタクマさんここは一旦、退いてくれませんか?正直、あなたとはやって勝てる気がしません」
「右に同じく」
「私は負けていませんが...」
アランは辺りの状況を確認し俺に退いてくれるように頼んできた
「俺は手配書を剥奪するまで帰る気はないぞ」
「そこは私が王と話し合ってどうにかいたします」
王ならそこに座っているのだが...気絶してるのか?。だったらここにいても仕方ないか。後はアランに任せよう。俺が了解するとアランに手を出すように言われた。そして、手を前に手をだすと手の甲に何かされた
「おい何をしたんだ?」
「知らないのですか?これは手紙を送るための魔法です。商業ギルドを経営していると何かと便利ですので覚えたのですよ」
どうやら手紙を送りたい人に自分の魔力を与え、その魔力を目印として手紙を送れるとのこと。そして、俺の判決が決まったら手紙で報告してくれると約束し俺は城を後にした
「あれ?何か忘れているような...まあいいか」
帰り道何か忘れているような気がしたが結局思い出せないまま歩き続けた
「みえましたかタクマさんの間合いが」
タクマが城を後にした後、アランはニーナにそう尋ねた。ジークは王を寝室まで連れて行っているため、ここには俺とニーナの2人しか立っていない
「ああ、この屋敷...いやこの街の半分以上が彼の間合いになっていたよ」
ニーナは視覚、触覚、聴覚の3つの闘系をもち、視覚は次の相手の攻撃範囲を視覚的に見ることができる能力がある。タクマの攻撃を全てかわせたのはこの能力があったおかげである
「あれでも力の半分も出していないのですから驚きですよね」
「彼は一体何者なのだ?」
「分かりません。しかし、彼を敵にまわすのは危険だということだけは確かです」
1人で国を相手にできる程のタクマの実力を考え、これからは監視を行いながら対策をねる必要があるかもしれないと考えるアランであった




