しゃあなし
「その様子だとやっぱり持っていなそうだね」
「その通りです・・・。すいませんが、手っ取り早くお金を稼ぐ手段なんか知りませんか?」
さすがに無償で情報教えてくれってことは、避けるべきだ。それは常識知らずにもほどがある。
「イーや、お金なんか渡さなくても、あることをすればなんでも一つだけ教えてあげるよ」
腕を広げて、役者っぽくわざとらしい動きをする。あることをすれば?なんとも怪しい響きだ。闇バイトとかやらされそうな口上でしかない。この世界にも闇バイトとかあるんだろうか?
「あることとは?衛兵につかまりそうな仕事はやりませんよ」
「初対面の人間に犯罪をやらせるとか、そんなことさせるわけないじゃないか。あたしがそんな奴に見えるのかい?」
「あぁ。いやそんなつもりで言ったわけでなく、」
「いいよ、いちいち訂正しなくて。あることっていうのはね・・・」
「君がここからいなくなることだよ」
女店主がそうつぶやいた瞬間、地面の下に穴が出現した。穴の先には見慣れない景色が広がっている。
自分はこの攻撃?に対応することができなかった。ただ、穴に落下してゆく。
自分の全身が、元居た部屋とは別空間に来たと理解してから穴に戻ろうとしたがとっくに穴は閉じられていた。
「まじか、なんでこんなことされたんだ」
なぜ、別の空間に移動させられたのかはもちろん気になる。だがそれより気になることは、
「どういう魔法を使ったんだ・・・」
あの女店主がどうやって自分を別空間に送ったかだ。大分前に何回か瞬快移動ができないか試したが、結局うまくいかなかった。いくら魔力でも空間を捻じ曲げることはできないのか、と落胆したが、どうやら違ったようだ。おそらくカギは、
ドゴォォォンン!ドゴォォォンン!
何やら歩く音が聞こえる。その音で我に返って、あたりの観察をやっと始める。あたり一面岩しかない。森林の次は岩石地帯かよ。
その岩石地帯の中に、ひときわ目立つ異質な建造物があるのを発見する。
超巨大な、真っ黒なピラミッドだ。
それに目を奪われていた自分は、後ろから走ってくる岩石の塊に思いっきり殴られてしまった。
「うおっ、なんだ急に」
幸い魔力障壁を体に張り巡らせていたため、吹っ飛ばされただけでけがはない。相手は全長5メートルほどの二足歩行の岩のような奴。これを獣と呼ぶのかはわからないため、魔獣と呼称していいのか悩むな。全身にごつごつした石を、いくつも張り付けている感じだ。頭も普通のごつごつした石で、目玉もない。これはいわゆるゴーレムというやつか。
ゴーレムが自分に向かって大きく振りかぶる。
さっきの攻撃を食らって、こいつは魔力障壁をつらなけないと分かった。こいつのパンチを恐れず懐に潜り込め!
ゴーレムの予備動作を無視して、ゴーレムの腹あたりまでダッシュする。ゴーレムはそれに対応できず大きく空振りして体制を崩す。そのすきを狙ってゴーレムに触れて、魔力を流し込む。
その瞬間、ゴーレムは元の人型から大きく形を変える。全身を丸めて、まるで体育座りをしているかのような姿勢になる。そして、だんだん岩同士の境目がなくなり一つの大きな真ん丸な岩になってしまった。
「こういう自立しているやつでも、物質操作の対象に入るんだな」
一つ知見が深まった。森にいたときはまったく、襲ってくる奴なんかいなかったのに、逃げないやつが増えたな。多分自分が自分に貼った魔力障壁のおかげかもな。こんなに効果あるとは思わなかったよ。
「さて、ここからどうすっかなー」




