村案内
助けた村娘を背負い、村までの道を案内される。そこまで距離は離れていなかったから、魔法を使わず勿論歩きで。道中この世界のことを彼女はいろいろ教えてくれた。
「私が住んでいるところはロコンの村だよ。ロコンっていう果物が名産品で、そういう名前が付いたみたい。安直だよね」
「うーん。南の方角はとにかく魔獣の巣窟らしいんだよね。だから絶対に立ち入らないように言われているよ。魔獣?とにかく危ない動物のこと」
「うん。確かにここも危ない地域だけど、危険すぎる魔獣はドラゴンたちが間引いてくれるらしくて、のこっている弱い魔物たちは結界で防げるレベルのやつしかいないらしいよ」
色々ためになることを教えてくれた。まだまだ気になることはたくさんあるが、いつの間にか村についていたらしい。
巨大な岩が四方に置かれていて、簡素な木造住宅がたくさん並んでいた。家畜を飼っている家が多く、牛舎、豚小屋、鶏舎が乱立している。見た感じ過疎地って感じの村ではないらしい。
村娘が入り口を見張っている村人に話をつけてくれて、自分も村に入ることができた。
「助かったよ。身分を証明する手段がないから入れなかったかもしれない」
「別にいいよ、命の恩人なんだもん。そういえばお名前は?私はリアって名前だよ」
名前か・・・。前の世界での名前を使ってもいいが、なぜかそれは無性にいやだ。ここに来たのも結構前のはずなのに、まだ引きずっている。新しい名前にするか。
そういえばあのドラゴンが自分の姿を見て毛無さるとか言ってたな。いっそさるって名前もありか?
「どうしたの?」
リアが自分の顔を心配そうにのぞき込む。そろそろ答えないと不審に思われそうだな。そうだな・・・
「あぁー、まぁ適当にサールとでも呼んでくれ」
本当に適当だ。いろんな意味で。
「娘を助けてくれて本当にありがとうございました!」
「いやいや、気にしないでください」
俺に頭を下げるのはリアの母親である。娘が知らない男を連れてきたのに対し、驚き、警戒したかのような表情を見せたが、事情をきくとすぐに頭を下げ、感謝の言葉を述べてきた。
「良ければご一緒にお食事しませんか?もちろん、ご迷惑でなければの話ですけど・・・」
「それはうれしい申し出ですが、遠慮させていただきます。その代わり、いろいろお話を聞きたいんです」
「え、えぇもちろん大歓迎です。何でもお聞きください」
その代わり、といったらあちらが一瞬身構えた気がしたが、気のせいだろう。今はそんなことより情報の収集が最優先だ。10歳前後の子供から聞いた情報を当てにし過ぎてもいかんし、自分のあちらでの常識がここの世界に通じるわけがない。少しでもこの世界のことを理解しないと。
「すいません。自分はかなり無知なもので、当たり前の質問をしてしまうかもしれないですが、気分を害さないでください」
「ふふっ、そんなこと気にしないですよ。事情を詮索する気もありません」
きれいに微笑みながらそう言ってのけた。大分、勘がいい女性だし、気を使ってくれるいい人だ。
そして椅子に座り、お茶を用意され、話をする準備が整った。
「違う言語の相手でも意思が伝わる理由はなんですか?」
「魔力に意思が乗っているからです。言葉を発すると同時に、無意識に伝えたい意思をのせた魔力を届けるそうです。イメージの共有みたいなものでしょう」
「魔法について知っていることは?」
「無学なものであまり詳しくは知りませんし、私は全く使えません。ただ魔力を放出して、何らかの現象を起こすとしか・・・」
「なるほど。魔法について何か書かれている文献はありますか?」
「おそらくないと思います。あったとして文字が読めないと思います」
「魔獣とは何ですか?」
「魔力を有している強力な獣のことです。それ以上の知識はありません」
そのほかにもいろんな質問を繰り返した。様々なことが聞けたし、ためになったと思うが、あくまで一般常識を知れたぐらいにとどまった気がする。詳しいことは知らないことが多かったし、結構主観が入った話もあった。
だけどこの存在が知れただけでも十分だ。
魔法大国マドリオン。ここにすべての魔法の知識が集約している




