第一村人
何とか穏便にドラゴンたちと会話ができた。それ自体はよかったのだが、あの会話のせいで疑問がとても増えてしまった。
自分はどういう存在になってしまったのか。
あいつらが言う毛無さるは人間か、それとも別の種族か。
自分はなぜ恐れられていたのか。
おそらく今考えても答えが出る疑問じゃない。もう少し周りの調査をしなければいけない。ただ自分がドラゴンたちから恐れられるほど強い種族かもしれない、というのは朗報だ。周りの脅威に必要以上におびえる必要がないってことだからな。
まぁ、それもドラゴンがこの世界で強者の立ち位置にいる前提の話だが。
結構な距離を移動して、これまで全く見てこなかった異形の獣たちを発見することができた。
全長5メートルはあるトラ。頭部がない、二足歩行の緑の化け物。ボールのようなフォルムから、無数の触手が飛び出しているスライムのようなもの。これを観察するだけで、移動中は退屈にならなかった。
それと、一つ気づいてしまった。自分の周りに全く動物を見かけなかったのは、自分を恐れていたからではないか?あの恐ろしいとされているドラゴンでさえ、ビビっていたんだ。十分その可能性はある。もしかしてこの状態で人間の集落を見つけたとしても門前払い食らうかもな・・・。
仕方ない。これが効果あるかはわからないが、しないよりましだろうと考えて、空中で急停止した。そして自分の周りに魔力の障壁を何重にも張った。これが本当に、自分の存在感を薄めてくれるかはわからないけど、できることは全部しておこう。
そして再び空を飛ぶ。
その時1キロぐらい先のほうからだれかしらの悲鳴が聞こえた。かなり事件性がある悲鳴だ。
これが初村人か?とりあえず助けに向かわないと。
さらに速度を上げ起きている状況を視認する。そこには地べたに座り込んで、絶望したような顔の女の子ひとりと、食虫植物が進化したような見た目のでかい化け物がいた。飛んできたこちらを見て驚いたように目を見開く女の子。化け物が今にも襲おうと、蔓のような見た目の触手を伸ばしているのを見て、説明している余裕はないと思い、とりあえず小さめの炎魔法を一発。
それは速度に重きを置いた魔法だ。構成する魔力の9割を初速の加速に使用し、一直線に化け物の顔らしきところに向かって飛んでいく。着弾したのがわかったら残りの一割の魔力を爆発のエネルギーに回す。
ボンっ!と爆発し、化け物の顔が吹き飛び、動かなくなった。血は出てないから、動物が植物に扮していたんじゃなくて、植物の進化系なのかもしれないな。
その様子を見ていた地べたに座り込んでいた女の子はとてもおびえたような表情で、
「あ、ありがとうございます・・・」
そう言って立ち上がろうとするが、うまくいかないようだ。どうやら腰が抜けたらしい。
この世界の人とかかわれるいいチャンスだ。とりあえずこの子を助けた恩を使って、この子の住んでいるところまで案内してもらおうと思って、できるだけにこやかにしゃべる。
「いえいえ、お気になさらず。よければ家まで送りましょうか」
「そ、そこまで迷惑をかけるわけにはいかないので、大丈夫です・・・」
む、まだ遠慮しているな。ここは大人の包容力を見せて、
「いやー、大丈夫ですよ!人は助け合いで生きていくものですから遠慮なさらず」
女の子は少しひきつったような顔で、
「わかりました。案内しますからそこまで送ってください・・・」
これが今世での、人とのファーストコンタクトだった。




