街へ
魔力で自分に作用する、下向きの力を発動させる。それと自分周りの重力を軽くする。
自分の体を上空に浮き上がる。これで魔力の作用する方向を変えながら移動する。
高く生い茂る木々のさらに上を飛びながら移動する。目的地は何一つ決めていない。ただ一直線に飛んでいくだけだ。
山を越えて、谷を越えて、さらに巨大な川を飛び越えた先にさえ何一つ変わらない景色だった。やっぱり人間社会なんてなかったのかと落胆しかけていたところに、目の前に巨大な赤、青、黄のトカゲが現れた。元の世界ではドラゴンと呼ばれている生き物だ。
全長で20メートルは優に超える巨体に、鮮やかに輝くきれいなうろこに思わず見とれてしまっていた。
赤い個体が自分に向かって何かを語り始めた。
『貴様、何しにこの地へと足を踏み入れた。返答によっては、一族総出で貴様を食い殺そうとするだろう』
日本語ではない。ただの鳴き声であったが、なぜか意味がくみ取れた。多分これも魔法だろう。そして、どうやら俺はこのドラゴンたちから警戒されているらしい。
「そんな警戒しないでくれ、自分は君たちと敵対したくてここに来たわけじゃない」
日本語が通じているかは不明だが、とりあえず身振りも交えて敵意がないことをアピールする。
「ただ少し、あー、俺の同族とあいたくてここら辺を飛んでいただけだ」
その言葉に青いドラゴンが反応する。どうやら日本語は通じているらしい。理屈はわからないが、まぁいいだろう。
『同族?お前と同族なんぞ要るわけないだろう。姿は毛無さると似ているが、その体に保有する魔力量、存在感をみてお前と同格の相手なんざ存在しないだろう』
毛無さる?人間のことか?いや、ぬか喜びするのはよくない、人間だと期待しすぎるのはよくないだろう。それに、この世界のことがよくわかっていないから、俺がどうゆう種族なのか判断できない。
だったら、
「そうなのか?だったらその毛無サルとやらの所に案内してくれると助かる。それがかなわなくても、自分には敵対の意思はない。だから攻撃はしないでくれ」
その言葉に黄色のドラゴンが答える
『・・・・俺たちの敵ではない、か。てめぇの言葉をすべて信用するのはできない。たとえてめぇが本当のことを言ってたとしても、お前のことはそう簡単に無視できない。だから早くここから去れ。案内などせん』
黄色ドラゴンが冷たく突き放す。やはり案内はしてくれないか。だがそれはそれで別にいい。このドラゴンたちの敵にならなかっただけでも万々歳だ。
それに、自分がドラゴンたちから恐れられる存在になっていることを知れただけでも大きな収穫だ。
「わかった。攻撃をしないでくれて感謝する」
そう言ってすぐ飛び去った。なるべく早く。後ろから攻撃されないように。
その姿を見て3匹のドラゴンたちはようやく安堵できた。
『くそ・・・ついに動き出したか。』
『なんで今更行動を始めたんだ。やつが現れてから今日までずっと監視してきたが、動き出そうな気配はなかったというのに』
『そのことを考えてもしょうがない。とりあえず今は奴とはコミュニケーションがとれることが分かっただけどもいい。それに、われらと敵対する気がないことが判明しただけでもいい成果だ』
ドラゴンたちは考え続ける、かの災厄の行動原理を、干渉してきた場合の解決策を・・・当の本人にはそのことは知る由もなかった。




