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魔法収集家  作者: トライ


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19/21

本心

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下位精霊や中位精霊には意思が存在しない。ただそこにあるだけであり、魔法を発動するための触媒でしかない、というのが一般常識であった。しかしある娘の発言によりその常識は消え去った。


「精霊の意思が流れこんでくるんです。言葉ではなくてただの感情が頭に入ってきます」


フロズは最初、娘を疑っていた。それは仕方ないだろう。教科書で語られている内容と異なるのだから、信じろというほうが難しいに決まっている。


数か月後フロズはその考えを改め、娘に謝罪した。疑って済まなかった、と。彼がその考えに至ったのは必然のようなものだった。


まず、娘は嘘を見破ることができる。それも100%の確率で。両親の小さい嘘、使用人の後ろめたいことなどがすべて筒抜けであった。それに異常に人の感情の機微を読むことが上手な娘でもあった。精霊とその契約主の人間の感情がリンクしやすいから、だそうだ。そのほかにも、単なる偶然と片付けるには難しい出来事が多く、彼女の言葉を信じるに至った。



「(上位精霊か・・・。契約しているものは学園で見たことあるが、本体を見るのは初めてだ。しかもだいぶ人間のような精霊か・・・)」


フロズは一抹の不安を覚えていた。それは得体のしれぬものへの恐怖というより、かの精霊をどう扱ったらいいかが悩みの種であった。


「(精霊であることを秘匿させ続ければ、彼から得られる利益は独占できる。今のところ彼が精霊だと気づけたのは娘一人だけであろう。このまま隠し通せるかもしれない)」


精霊が単独で行動しているなんて、前代未聞の出来事である。とフロズは思っているが実はそうでもない。認知されていないだけで勝手に行動しているものは決してゼロではない。それでも珍しいことには変わりないが。


「(精霊と人間は共生関係となっている。主従関係ではない。たとえ、国に上位精霊がここにいると伝えたところで、強引な手は使えないだろう。なら情報を徹底的に隠し、ここにとどまってもらったほうがいい。上位精霊の力、なんて魅力的なものを手に入れたことだろう・・・)」


「(いや、まてよ。なんならアイスと精霊契約をしてもらうのはどうだろう。あいつのことをきにいっている様子だし、打診するだけしてみるのもありだな。そうすれば合法的にコトハ商会に取り込める)」



コトハ商会の会長であるフロズは非常に野心的な性格であった。100年以上の歴史を持つコトハ商会を全くの別物にし、この大国の商業地域で大きな権力を持つに至った彼の手腕は見事でしかない。



外部との関わりの規制が非常に厳しいこの国では、下手に輸入や輸出をするよりも、自国で完結する産業が栄えやすい傾向があった。逆に言えば外との連携が必須な産業は基本的には誰も手を付けようとしなかった。


彼が目を付けたのはそこだった。外から魔獣討伐のスペシャリストであるハンターを大量に呼び寄せ、魔獣から得られる資源で商売を始めた。まだそれが目立っていなかった段階で、魔獣の解体、処理、材料の加工などのノウハウを蓄積し、他が真似をする前に自分たちだけの長所を作ろうと画策した。それが成功し、小さな一商会から大商会へと変貌を遂げた。


今は次の段階へと移っている。長期遠征によりさらに強力な魔獣を倒し、さらに貴重な素材を手に入れる。量より質を優先した事業を行おうとしていた。そのためにはさらに戦力が必要で、既存のハンターたちの育成は必須であった。


だが、その計画を大幅に短縮できる存在であるサールが現れたことで、彼はまさに有頂天であった・・・







馬車で片道3日。そこが目的地である黒熊の生息地なのだそう。生息地に無断で入って、殺すだなんて、残酷なことだと思うかもしれない。だけど黒熊は基本的に害獣であり繁殖能力が強いうえに、残虐性が強い。食べもしない動物を遊びでいたぶることがあるらしく、ほとんどの国で討伐が推奨されているらしい。


しかし、そんなことはどうでもいい。移動手段が馬車なのが一番驚きだ。てっきり魔法技術をふんだんに使用した乗り物があるのでは?と、期待していた自分がバカみたいだ。


「おい、今日はここでキャンプするぞ」


馬車がとまり、ひとがぞろぞろと降りてくる。




パチパチ


焚火の音が静かな夜に小さく響く。


今回の遠征はかなり大規模なものらしく、人も多い。ざっと見た感じ15人は超えそうだ。だが、馬車の数は3台とかなり少ない。荷物はすべてマジックバックの中だ。マジックバックは簡単に言うと容量がすごいバックである。実際の重さや大きさを無視して入れることができるバックを使っている。ちなみに超高級品だ。


給料は基本給+ボーナスで、貢献度が高いほどボーナスが増える。この世界の通貨は銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨があり、ひとつ位が上がるごとに価値が10倍になる。ちなみに、銅貨一枚で小学生の一日分のおやつぐらいだ。



食事を終えた後からどんどん人が眠り始めた。見張りが交代制だから眠れるときに眠ろうってことか。自分は睡眠が必要ないから、とても暇になるな。


すると、あるやつが話しかけてきた。


「おう、俺はベイル。お前の名前は?」








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