なしくずし
「あなたが精霊であって、人間でなくても関係ありません」
「私の家、専属のハンターになりませんか?」
ハンター?初めて聞く単語だ。あのおっちゃんからは教えてもらえなかった。
「ハンターってなんですか?」
「魔獣退治を生業とする者たちの総称です。知らなくてもしょうがないです、この国ではあまり一般的な職業ではないでしょうから」
この国に来てからまだ全然日がたっていないから、この国での一般が何なのかはわからない。だけどそれを伝える必要性はないだろう。自分が別の世界から来たとかも。
「なんで自分なんですか?こんな素性も知れない不審者なんかをスカウトしていいんですか?」
「上位精霊の力がそれほどまでに強力だからです。多少のリスクを払っても手に入れる価値はあると思っています」
なるほど。多少のリスクというのは、自分が暴れる可能性ということかな。自分が危険な人間でもその戦力が手に入るなら、許容してもいいと思っているのか。それはいい話だと思っているけど、
「理解しました。それで、アイスさんは何者なんですか?自分を雇いたいとか、あいらかに一般人の方ではないですよね」
そういうと、彼女はすごい驚いた顔をしていた。たぶんだが、だいぶ気が急いて話を進めていたことにきづいたんだろう。それこそ、自己紹介を忘れるほどに。
「すいません!私はコトハ商会でスカウト役をやっているものです。コトハ商会の代表の一人娘でスカウト役なんて言ってますが、ほとんど名ばかりの役職です」
社長さんの娘さんだったのか。身なりよさそうな人だからこれは納得だ。名ばかりの役職といっても、まだ若いのに任されている時点で立派な人なのはまちがいない。
「それで、この話受けてくれますか?返事は直ぐでなくても結構です。詳しい内容は追って伝えます。いいお返事をお待ちして・・・」
「あ、受けます。」
「え?」
「その話喜んで受けさせていただきます」
「本当ですか!ありがとうございます!」
うおっ、身を乗り出してきた。すごいうれしそうな顔をしている。
正直今の自分の状況でこれを受けない理由はない。身分証も金もない。知識も全くない。この話には利益しかない気がする。
これも楽観的かな?・・・まぁ別にいいか。
「すいません。部下のほうを呼ぶので、少しお待ちください」
そう言って退出していった。そこからの動きは迅速だった。契約する上での条件を色々決めて、それらを書いた契約書を作られて、それに署名したらすぐに敷地内に案内され、待合室らしき場所に今いる。
契約の内容は口頭で読み上げられたが、決して自分に不利な内容ではなかったと思う。ここでの金銭の価値などは全く分からないが、食事等などの金がかからない自分は最低限のお金だけあればいいと、割り切っている。こちらから要求したことは全くない。
コンコンコン ドアがノックされる。
「どうぞ」
ガチャ 入ってきたのは恰幅の良い男性だった。立派な髭を蓄え、鋭い眼光はこちらを強くにらみつけていた。
「私がコトハ商会の代表であるフロズです。どうかお見知りおきを、サール様」
手を差し出してきた。握手を求めている。それにこたえ、こちらも返答する。
「よろしくお願いします」
その後、軽い雑談を交わし広い運動場に通された。部屋の中ではほんとにたわいもない会話しかしていない。その間フロズさんはずっとこちらを値踏みするような、警戒するような視線を向けてきていた。
そりゃあ、そうだ。子供が連れてきた精霊と自称する怪しい男性なんて、警戒するに決まっている。というかよく会おうとおもったな。素性がはっきりしていない不審者なのに。それほどアイスさんを信用しているのだろうか?
「娘が連れてきたので、あなたのことは疑っていません。しかし、あなたのことはしっかり把億しておきたい」
親ばかなのか?疑ってないとか絶対嘘だろ。
「30メートル先の的をどんな魔法でもいいので、破壊してください。ただし、大規模な魔法を使って周囲の破壊は避けてください」
なるほどシンプルな試験だ。これで失敗したとしても契約はもう結んでいるし、一方的に破棄とかはないだろう。
だけど、しょうもない魔法を披露するのは違うだろう。
手に魔力を集中させる。使う魔法は炎だ。
手のひらに半径50センチ大の炎の玉ができる。
30メートル先ならコントロール重視のほうがいいか。
爆発に回す魔力を減らして、初速と操作に使う魔力を増やす。
「いきます」
手の炎を的に向けて放つ。2,3秒後に的に着弾し、木製の的は燃えきった。上出来だろう。
さて、反応はどうだろう?
「ほ、本当に上位精霊だったのか・・・」
え、なんでこれで確信を持ったんだ?気づく要素なんかあったか?
フロズさんが深く頭を下げる。
「サール様・・・コトハ商会一同、あなた様を歓迎します」




