困ってしまう
ガラン、ガラン
喫茶店の扉があき、ベルが鳴る。入ってきたのは二人組の男女。女性のほうはこの場にふさわしい装い、立ち振る舞いをしていることが一目見て伝わる。男のほうは見慣れない服を着ていて、落ち着きがない。先ほどから周りの目線を気にしている様子だ。
「個室に行きましょう」
「はい・・」
店員さんからの案内を断って、勝手に歩く女性。どうやらこの店は行きつけのようだな。
お互い席に座ったタイミングで、対面に座る女性が話し始める。
「私の名前はアイスです。あなたの名前は?」
「サールと申します」
適当につけた名前だが、あちらには本当の名前かどうか判断できないしこれでいいだろう。
「サールさんですね。まずは急にお誘いして申し訳ありません。それと、同行してくださったことに感謝します」
頭を下げながら謝罪と感謝を述べてきた。そんな気にすることではないと思うが、義理堅い性格だ。
「いやいや別に、頭上げてください。それで、なんで私に声かけたんですか?」
「あなたから・・・上位の精霊の気配がしたので、お話がしたかったからです」
マジでか。俺の正体ばれかけてるじゃん。これまで人間相手にばれたことなかったのに、なんて鋭い人なんだ。
自分が精霊ってばらしてもいいんだろうか?不利益が生じることがあるのか?わかっていることは自分がどんな選択肢を取ろうが、自分が害されることはおそらくない。ゼロは、自分が数少ない自立している精霊といっていた。そして人間は精霊と契約して魔法を使っていると。このことから察するに、人間の大半は自分より位が低い、意思がない精霊と契約していることが分かる。
精霊を介して魔法を使っているなら、精霊の立ち位置はそのまま人間同士の実力の立ち位置になるだろう。
「それで、何か心当たりは?」
うーん、ばらすか。下手に隠しても隠し通せるわけないし。流石に悪いようには扱われないだろう。
・・・あー、やっぱり、だいぶ楽観的になっているな。慎重とか万全を期してって言葉が自分の辞書に入ってない感覚。意味わからんか。
「自分が精霊だからです」
「え?」
「え?」
アイスさんは鳩が豆鉄砲を食らったような顔になっている。本当に想定外の答えだったらしい。嘘だろ。てっきり自分が精霊だって確信を持って話しかけてきたと思っていた。もしかして、自分が上位精霊と契約してると思っていたとかか?その線を考えるのを忘れていた。さて、どうしよう。
それと同時にアイスさんが注文していたものが届いた。
コーヒーだ。ミルクがついてる。
こっちの世界でも変わらずあるんだな。少し意外だった。魔獣とか魔力とかある世界だし生態系とかいろいろ変わって、あっちの世界のものはないと思っていた。
話がそれた。
「ちょ、ちょっと待ってください。疑って申し訳ないですけど、その発言は本気ですか?」
「マジです」
口元に手を当てて、考え込むようなしぐさを見せる。真剣なまなざしだ。
さて、信用してくれるだろうか?
「いったん信用します。嘘をつく理由がないですもんね・・・てっきり上位精霊と契約した方と思っていました」
「そのうえで頼みます。私に力を貸してください」
「えぇぇぇ・・・」
急展開すぎないか




