もう一回死ぬ?
ムカデの顔が変形する。牙と触覚がついている普通のムカデの顔から、筒のような顔になる。その姿はあれだ、あの寄生虫みたいなやつの・・・なんだっけ・・・
バクッ
「おはよう。この世界に来てから初めての睡眠はどうだった?」
まぶしい光と長い金髪が目に飛び込む。言葉を失う。目の前にいる人物の美しさに圧倒されたからだ。思考が止まる。
「おや、どうしたんだい?もっと眠りたいのかい?」
「あ、いや、そういうわけでなく、えっと・・・」
やばい、うまく言葉を紡げない。黒いドレスに身を包み、この何もない部屋の中でたたずんでいる彼女の異質さを指摘するより先に出てくる感想は、
「とてもお奇麗ですね・・・」
「ありがと。意識がはっきりしたようだから説明するよ」
あっさり流されてしまった。それより説明だと?
「君のことはこの世界に来てからずっと見ていたよ。君みたいな異質な存在をほっとくわけにはいかなかったからね。ずっと『黒い森』にいられるのも迷惑だったけど、まぁ生態系を乱すぐらいだったら別にいいかなって放置していた。だけど急に動き出すからね、この世界に混乱をもたらしかねない存在の君を無視できないと思って、ここに君を呼んだ。あの辺鄙な村からここに君を飛ばしたのは私の片割れだ。一応、君が暴れても被害がないような場所で話したかったからね」
「え、自分と話をしたいだけですか?」
「そうだよ」
なんだか拍子抜けだ。明かされた情報量が多すぎて、うまく処理しきれていないが、つまりは危険人物である自分と話がしたいだけか・・・
「質問よろしいですか?」
どうぞご勝手に、と言わんばかりにうなずく
「自分が異質な存在とは、どういったことですか?まだ自分ではうまく自覚できていません。それとあなたたちは何者ですか」
「まずその答えにこたえるより先に、精霊について教えるね。人間は魔力を自分では扱えない。精霊を介してでしか使えないの。だから人間は精霊と契約して、魔法を使う。そして君は君一人で魔力が使える。これがどういうことかわかるでしょ?」
「自分が人間じゃなくて精霊だってことですか・・・」
「そう。しかも世界を掌握できるポテンシャルがあるほど強力な精霊。しかもどこから現れたか誰も知らない、しゅっじ不明なやつ。これを野放しにできるほど仕事放棄できないなーって」
軽く伸びをしながら答える彼女。そのポーズもとても魅力的で、目が離せない。
「じゃあ、あなたたちも精霊なんですか?」
「似たようなものだね」
なるほど。この世界に来てから抱えていた謎がいろいろほどけていく。確かに身元が知れない世界を壊すような奴なんて、放置できるわけないな。変にたてつくのもよくないし、手荒な真似された件に対しては黙っていよう。
「よし、君も納得できたようだね。それじゃあ、精霊界にいこっか」
「え、精霊界ですか?」
「そうだよ。いいとこだよー、この人間界に比べて特に何もないけど、消滅することもないし、魔法にたけている精霊もいっぱい。まぁ、一回行っちゃうと自分の意思じゃここにこれなくなるけどね」
「じゃあ嫌です。まだ人間界にいていいですか?」
せっかくこんないい世界にこれたんだから色々見て回りたい。好奇心が強くなってから探検欲が強くなった。この世界に満足したら精霊界に行くのもありかもな。
「それはダメだよ」
ゾワッ
急に雰囲気が変わった。苦しい、圧迫するような空気になる。
「わがまま言ってないで戻りましょ。あなたはここにいてはいけないの」




